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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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「敵が来たよー!! 港の方角、数は龍騎士が1、飛龍騎士およそ200!」
 伝令に飛んだ曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)からの知らせを受けて、クレセントベースは騒然となった。
「マティエは、司令部に連絡して来て。オレは、作業中のながねこさんたちの退避を手伝うから!」
「……りゅーき……なんか今日はすごくきびきびして格好良く見えたんですが……理由はそれですかっ」
 瑠樹の言葉に、マティエはがっくりと肩を落とした。
「だって、もともとオレたちがながねこさんたちの所に間借りしてるんだから、まずながねこさんたちを守らなきゃ!」
 はいはい行って行って、と瑠樹はマティエに向かって手を振ると、自分は塹壕を掘っていた長猫兵たちの元へ行く。
「やれやれ……」
 マティエは箒に乗って地下へ向かう。それと入れ違うように、湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)高嶋 梓(たかしま・あずさ)のアンズー『シーパンツァー』と、葦原明倫館のユーナ・キャンベル(ゆーな・きゃんべる)シンシア・ハーレック(しんしあ・はーれっく)が乗るクェイル『Thunderbird』が地上へ姿を現した。それに続いて、歩兵として随伴するハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)と、湊川のパートナーのシャンバラ人アルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)と機晶姫ソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)、ユーナのパートナーの英霊山田 朝右衛門(やまだ・あさえもん)らも地上に上がって来た。
「敵の数は龍騎士が1、飛龍騎士が200だな!?」
 空飛ぶ箒に乗ったヴェーゼルが、すれ違いざまにマティエに向かって怒鳴る。
「はい、そうです。現在、港周辺で警戒していた部隊と交戦中です!」
 マティエはうなずいて怒鳴り返す。2機のイコンとそれに従う生徒たちは、港の方へ向かった。その間に、
「ついて来られなかったっていうことは、まだ敵は海岸で足止めされてるんだろうけど、いつここへ来るかわからないからねー。戦闘に加わらないながねこさんたちは洞窟の中へ! 応戦する生徒は配置について!」
 瑠樹は箒で塹壕の上を飛び回って声をかけながら、逃げ遅れた長猫が居ないかどうかチェックする。
 
 
 クレセントベースを出撃した二機のイコンは、ほどなく戦場になっている海岸に到着した。
「あの兵力では、ミカヅキジマ全島の制圧は困難だろう。となると、ヤツらの目的は、ミカヅキジマ駐留部隊を牽制し、他の方面に移動しないように足止めしておく、といったところか? にしても、飛龍騎士の数が報告より少ないような気がするが……」
 薄暗くなって来た中、目を細めて敵の姿を見上げ、ヴェーゼルが呟いた。その時、小型飛空艇オイレで哨戒飛行をしていたパートナーの天津 亜衣(あまつ・あい)から通信が入った。
『あっ、来た来た! あのねー対空砲火で飛龍が結構撃墜されてるんだけど、不時着してる兵士が居るかも知れないから気をつけてねっ!』
 その通信が終わるより早く、生徒たちの目の前に一人、また一人と帝国兵の姿が現れた。
「これは……浸透されてる可能性があるな。亜衣! 基地に警告に飛んでくれるか!」
『了解ー!』
 亜衣の飛空艇が飛び去る。
「ここは、自分がお相手しましょう。イコンの皆さんは龍騎士を!」
 朝右衛門が舌切り鋏を構えた。
『アルバート、ソフィア、突っ切るぞ!』
 湊川は『シーパンツァー』を走らせた。その後に、ソフィアと、ソフィアが装着した六連ミサイルポッドの予備弾薬を担いだアルバート、ヴェーゼル、そしてユーナの『Thunderbird』が続く。さすがにイコンを相手には出来ない帝国兵たちは、ヴェーゼル、ソフィア、アルバートを狙うが、
「貴殿らの相手は、この山田朝右衛門です!」
 朝右衛門の舌切り鋏が、敵兵の首を刈って行く。その間に、二機のイコンはクゥサァと対峙した。
「周囲の警戒や回避はお任せください!」
『わたくしはサポートに回るわ! あなたが龍騎士を!』
 後席の梓と、ユーナに声をかけられて、湊川はうなずき、スナイパーライフルを構えた。
 二機のイコンにクゥサァと、まだ残っている飛龍騎士が殺到する。
「ソフィアさん!」
 梓の合図で、少し離れた場所に伏せていたソフィアが、『シーパンツァー』の後方に回り込んだ飛龍騎士に向かってミサイルを放つ。それを掻い潜って接近しようとする飛龍騎士の前に、『Thunderbird』が立ちふさがり、アサルトライフルで撃墜した。
「邪魔はさせないわよっ!」
「外様(とざま)には外様なりの戦いようがあるんだよっ!」
 素早く次の標的に銃口を向けるユーナの後ろで、シンシアも吼える。
「皆がこれだけ助けてくれてるんだ、絶対に当てなくちゃな!」
 湊川は慎重にスナイパーライフルの狙いをつけた。無論大人しく狙われているわけもなく、クゥサァも攻撃を仕掛けて来る。龍のブレスをシールドで受け、そのままシールド越しに、湊川はライフルを発射した。一発目、二発目はすれすれでかわされたが、三発目、戦車からの砲撃を避けた時にできたわずかな隙を狙った攻撃は、龍の背からクゥサァを吹き飛ばした。
「うぉぉぉぉぉぉ……っ」
 叫び声を上げながら、クゥサァは地上目掛けて落ちて行く。その姿を、湊川はライフルを構えたまま凝視していたが、地面に叩き付けられたクゥサァがそれきり動かないのを確認すると、顔を上げ、周囲を囲む飛龍騎士たちを見回した。
「指揮官は倒した。まだ戦闘を続けるか!?」
 
 
 一方、ヴェーゼルが心配した通り、クレセントベースの前面にも、地上に降りた帝国兵が到達していた。
「まさか地上から来るとは思わなかったよ!」
 サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は、塹壕の中でニャオリ族たちを率いて戦っていた。塹壕から顔を出して銃撃や魔法を浴びせ、すぐに引っ込んで移動する。上から見るともぐら叩きのような状況だが、地上を進んで来る敵に対しては非常に有効な戦法となった。あたりが暗くなる頃には、基地前面にまともに戦える帝国兵の姿はなくなっていた。時を同じくして、港で戦っていた生徒たちからも、敵をほぼ殲滅したという連絡が入る。
「何とか、しのぎ切りましたわね……」
 沙鈴参謀長は、ほっと胸を撫で下ろした。