First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
Next Last
リアクション
星座たちの遁走曲(フーガ)
「ディナミス・スプラギスマ」
強大な念力が、場を支配する。フリューネ一行の動きと能力が重圧によって封じられたのだった。
「よくやった、アール」
エスフロスはアールを賞賛すると、余裕の笑みを浮かべながら一撃を繰り出した。
「ライトニング・チャージ!!!」
黄金位のエスフロスが繰り出す無数の拳。それは下位のリッターたちを圧倒する。
「くっ……このままじゃまずい。トメさん、アレをやって……」
そう呟いたのは一角獣座の高崎 朋美(たかさき・ともみ)で、それにだまって頷いたのは龍座の高崎 トメ(たかさき・とめ)だった。
トメの闘気が高まっていく。それを感じた六分儀座のウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)は
「やばい! 目を閉じろ!」
と叫んだ。
訳も分からず目を閉じるフリューネ陣営。
そしてトメの闘気がさらに高まりアールの束縛を抜けだす。そして、必殺技を繰り出した。
「富士山山開き!」
その途端トメの闘衣がパージされた。すなわち68歳の老婆の全裸……それを直視したるミーナ陣営は闘気は衰え戦闘意欲どころかやる気さえ失った。
そしてさらに高まるトメの闘気。龍座は、闘衣を着ない状態が一番強い。そしてその闘気の量は、黄金位さえ軽く上回っていた。
「富士山二鷹三なすび」
繰り出される拳は、敵の全てを吹き上げ、地面に落とす。
そしてトメは闘衣を装着すると、「もういいどすぇ」と京言葉で言った。
恐る恐る目を開けるフリューネ達。
そこには、累々と倒れるルミーナ陣営。
「な、何があったの?」
フリューネが叫ぶが、トメ達一行は多くを語らない。
「ところでさ、フリューネさん。このまま射手座の闘衣の箱を持って逃げるのって一苦労だと思うんだ。だからさ、パーツごとに分割して運んで、落ち合う場所を決めて合流しない?」
朋美の言葉にフリューネはしばらく考えてから頷き、闘衣の箱に手をかける。
すると、闘衣の箱が自然に開いて、射手座の闘衣がそこに現れた。
「闘衣が受け入れ始めた……」
ルミーナはそうつぶやくと意識を失った。
そして、一行が持っていくパーツと落ち合う場所を決め、バラバラに飛び出してから小一時間後、ルミーナ陣営はやっと回復したようだった。
ルミーナは女神に祈りリッターたちの体力を回復させると、首を振った。
「ひどいものを見ましたわ……」
「全くの同意だ」
ルミーナの言葉に、傭兵の三郎が同意する。
「とりあえず、連中は8つにわかれたようだ。頭、胴、左右の手足と脛のパーツ……こっちも別れて追う必要がありそうだぜ」
そう言ったのはわし座でルミーナの恋人の風祭 隼人(かざまつり・はやと)だ。
「そうですわね……でも、どう分けましょう?」
「ま、俺はルミーネの側から離れないのは決定だけどな」
「ふふ……お気持ちだけいただきますわ」
甘い空間を演出しているルミーナと隼人。そこに牡牛座の吹雪が、両腕を組んで直立したままこう言った。
「とりあえず黄金は分割して動く。山羊座と、双子座と、自分と、乙女座のでこぼこコンビはそれぞれ別れたほうがいいと思うのであります」
「それも、そうですわね」
ルミーナが同意する。そして、ダリルが班分けをした。
「カメレオンとかじきは一緒に動け、レチクルの一行もそのままグループで行動だ。獅子座の一行は、連携したほうがよさそうだからそのまま動け。狼座とケンタウルス座は、猫座と猟犬座の一行と動くんだな。ルミーナは、恋人とフリューネを追うがいい。奴は闘衣は持っていないはずだ。異議はあるか?」
特にない。
「では、行こう。遅れを取り戻さねばな……」
吹雪はそう言って悠然と歩き出した。
「追いついたのであります……」
朋美のところに、吹雪が追いついた。
「さて、闘衣を渡してもらうであります」
「この右腕がほしいのかい?」
吹雪の言葉にウルスラーが闘衣を見せつつ挑発する。
「それであります! 愚霊屠穂雲!!!」
吹雪は、両腕を組んだまま何かを繰り出す。
実は、そこにあるのは二丁の銃。だがそれはウルスラーには見えなかった。
ダメージを受け、倒れるウルスラー。
「やれ、しかたありまへんなぁ。ここはこの婆がもう一肌脱ぎますかぇ」
そう言ってトメが前に出る。
「無駄です。リッターに一度見た技は二度と通用しないであります」
「それもそうだねえ。女の人相手には一角獣座の技はほとんど通用しないし……ウルスラー、頼んだよ!」
その言葉を受け、ウルスラーは血反吐を吐きながら立ち上がる。
「ちっ……黄金位相手じゃちょっとばかり厄介だが、生憎とこれを渡すわけにはいかないんでな。喰らえ! スターダスト・ミラージュ」
その技が発動した途端、幾人ものウルスラーが現れる。
「こ、これは……」
そしてそのまま一斉に無数の蹴りが炸裂する。
「まだまだぁ! 緯度捕捉」
敵の弱点を見ぬいて繰り出されるその必殺の一撃は、さきほどの幻覚で衰弱した吹雪の闘衣の兜の、角をへし折る。
「むう……この私の角を折るとは見事……であります。実力は認めたのであります。先に行くといいであります」
「いいの?」
朋美の問に吹雪は頷く。私も裏になにか感じていないわけではない、と吹雪は言う。
「その手で星座の導きを掴むといいのであります」
吹雪は、ニヤリと笑った。
「じゃ、行くよ!」
「まっとくれやす〜」
「ちっ! じゃあな!」
こうして朋美一行は無事に右腕を持って逃げ切ることに成功した。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
Next Last