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【海を支配する水竜王】侵入者に向ける刃

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【海を支配する水竜王】侵入者に向ける刃
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第1章 捕らわれた友の元へ

 十天君に捕らわれてしまったリヴァイアサンを助けようと、パラミタ内海に存在する孤島の施設へ向かった。
 しかし、そこに侵入しようとした生徒、手引きをしていた者も牢獄に捕まってしまった。
 何らかの目的で施設内のどこかに捕らわれている水竜、牢獄で簀巻きにされている生徒たちを助けようと、潜入の手引きをしてくれる仲間をじっと待ち施設の近くから様子を窺っている。
「やっぱこちの方が、暖かくって便利だよなー」
 久途 侘助(くず・わびすけ)はコタツの中に入り、ゆっくりと施設がある孤島へ向かっている。
「どうしてあんたはそうのん気なんですか・・・」
 薙刀で木を斬って作ったイカダに乗っている香住 火藍(かすみ・からん)は、のほほん気分な彼に対して深いため息をついた。
「コタツもイカダも、そんなにスピード変わらないだろ。それなら快適な方法を俺は選ぶ!」
「そんなこと言って・・・銃撃されたらどうするんですか」
 危機感のない侘助に、火藍は眉を吊り上げる。
「この速度だと4kmでもかなり遠く感じるな・・・。なんだか眠くなってきた・・・」
 うとうとと瞼を閉じようとしている侘助は今にも眠りそうだ。
「眠っ・・・・・・」
 コタツの台に頭を乗せ、眠ってしまった。
「はぁー・・・、よくこんなところで眠れますね」
 怪しげなやつらとして発見されたら狙い撃ちされてしまうと思い、火藍はうたた寝どころではない。
「空から侵入できたら楽なんでしょうけどね。そんなことすると、間違いなく的になってしまいますけど」
 火藍は空を見上げ、鳥のような黒い塊を見つめる。
「何でしょうか、あれは・・・。だんだんサイズが大きくなるような・・・。て・・・こっちに落ちてきますよ!?」
 ドボォオオンッ。
 彼ら目掛けて巨大な砲弾が海に落ちてきた。
 イカダとコタツが波に揺られてしまう。
 海へ落ちそうになった火藍は、必死にイカダにしがみつく。
「気づかれてしまったようですね、急がないとやばそうですよ・・・。ていうかあんたはこの状況でよく眠っていられますね!」
 暖かいコタツの中でスヤスヤと眠っている侘助に向かって怒鳴が、まったく起きる気配はない。
「しょうがないですね」
 火藍は薙刀の柄をコタツの柄にひっかけ、もう片方の手に持っているオールを握り締める。
「あぁ、何だってこんなことにっ」
 海に沈められてたまるかと必死な形相で漕ぐ。
「ふぅ・・・なんとか島につきましたね」
 孤島の岸に到着した火藍はイカダから降り、携帯電話の時刻を確認する。
「だいぶ時間がかかってしまいました・・・」
 1時間以上かけてようやく到着した。
「まだ寝ているんですか!?」
 侘助の方を振り返ると彼はまだコタツの中で眠っている。
「ちょっと起きてくださいよ、置いて行っちゃいますよ!」
 肩に手をかけ、ゆさゆさと揺すり起こそうとする。
「ん・・・ふぁあ〜。やっとついたのか」
 目を覚ました侘助は大きな欠伸をして、ようやくコタツの中から出た。
「うぅっ、寒い・・・」
 ぶるぶると震えながらも侘助は火藍と共に施設へ向かった。



「3人用のボートを作ってみたが、こんなもんか?」
 孤島へ向かうためにグレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)は、森の大木でボートとオールを作った。
「一緒に漕ぎます?」
 ボートの中に置いてあるもう1つのオールをソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)が手に取る。
「俺だけで大丈夫だ」
 余計な体力を消耗させまいと、グレンはソニアからオールを受け取った。
 オールを両手に持ったグレンは孤島に向かって漕ぎ始める。
「―・・・おい・・・・・・」
 怪植物のツタと銀の飾り鎖で簀巻きにされている李 ナタ(り・なた)が眉を吊り上げて言う。
「どうした?」
 ムッとした表情で睨みつけてくるナタクにグレンは首を傾げた。
「いくら作戦だからって、何で俺が・・・。ていうかボートから降りた後でもいいじゃないか!」
「ナタクの他に誰がやるんだ」
「―・・・うぅっ・・・」
 さらりと言い放つグレンに対して、ナタクは小な声音で呻き黙り込んでしまった。
「(作戦でもやっぱり罪悪感がありますね・・・)」
 簀巻きにされているナタクを哀れみの目で見つめる。
「施設に近づいてからでもいいんじゃないんですか?」
 可哀想に思ったソニアが拘束を解いてあげようとする。
「どこで監視されているか分からないからな。牢に連れて行く相手が、縛られていない状態で大人しく船に乗っているのは不自然だろ」
「それもそうですね」
 こくりと頷いたソニアはツタと鎖から手を放した。
「(いざとなったら自分で解けるけど、島に着くまでキツイなこりゃ)」
 ナタクは心中で呟き、ボートの上で島に着くのを待った。



「そろそろ施設に侵入する生徒たちがやってくる時間ですね」
 サンタの服を着たメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)はトナカイに乗り、侵入を手引きしようと東門の方へ向かった。
 ソリの上に乗せている袋中には引火しやすいガソリンなどの液体を入れたビン、手製のモトロフカクテルの入っている。
「めりー苦しみますぅ。季節外れのサンタからのプレゼントですよ〜」
 モトロフカクテルを袋から取り出してニッコリと笑う。
 南側にいるゴースト兵たちに向かって投げた。
 地面へ投げつけられた火炎瓶はバリィンッと割れ、兵の足元を燃やす。
「ちくしょう、なんだこれ。なかなか消えないぞ!」
 靴に燃え移った炎を仲間の兵に土をかけてもらい消そうとする。
「もう1本欲しいですかぁ〜?欲張りですねー」
「そんなもんいるか!」
 なんとか炎を消した兵はメイベルに向かって怒鳴り、機関銃の銃口を向けた。
「えーっ、何ですか?よく聞こえないんですけど」
「いらんって言っているだろうがぁあっ」
 聞こえないふりをしている少女にキレた兵が銃弾を放つ。
「遠慮しなくてもいいのに♪」
 メイベルに迫る銃弾に向かってセシリア・ライト(せしりあ・らいと)が火術を放ちガードする。
「―・・・それで、さっきの銃弾ってメイベルちゃんへのお返しプレゼント?だったら今度は僕がお返しをあげる!」
 トミーガンのトリガーを引き、スプレーショットによる銃弾の雨を降らせる。
「気に入っていただけたようですわよ」
 トナカイに乗っているフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)はクスッと笑い、襲撃者を排除できない苛立つ者たちを見下ろす。
「あの小娘どもを撃ち落とせぇえっ」
 メイベルたちの挑発に怒りを爆発させた兵が彼女たちに向かって、破壊工作で予め作った手榴弾を投げつけた。
「そこからじゃ届かないですよ?」
 手綱を握りメイベルは爆弾を避けた。
「メ・・・メイベルちゃん、そこから離れて!」
「―・・・・・・?」
 叫ぶように大声を上げるセシリアの方を振り返ると、兵が投げた爆弾が地面に転がり落ちている。
 不運なことにそれは空にいるメイベルの近くに転がっている。
 ドガァアンッ。
 手榴弾の爆風にメイベルはトナカイから落ちそうになってしまう。
「油断したら即、捕まってしまいますわよ!」
「あぁっ、手がもう・・・」
 フィリッパのディフェンスシフトのおかげで衝撃が和らぎ、なんとか落下はまぬがれたが、手綱を掴む手が滑り今にも落ちそうな状態だ。
「僕が助けてあげるっ」
 慌ててセシリアが自分のトナカイをメイベルの近くへ寄せ、落ちそうになっている彼女の手を引っ張りトナカイに乗せてやる。
「ガキどもが、落してぶっとばしてやるっ」 
 地上へ落してやろうと、スナイパーライフルでメイベルの腕を狙っている。
「手がなければ、それも出来ませんわね」
 フィリッパはメイベルを狙う兵に向けって銃口の照準を合わせ、ターゲットが銃を持つ手に向けて狙い撃つ。
「入り込むなら今がチャンスです」
 南門へ向かう兵たちの姿を、火藍が木々の陰から確認した。
 手薄になっている東門から侘助と共に施設へと侵入する。
「おっ、なんとか侵入に成功したようだな!」
「外で兵たちの陽動してくれている生徒がいたからなんとか入れましたが、中も陽動してくれる人がいるとは限らないですからね。慎重に進みましょう」
 嬉しそうに言う侘助に火藍が釘を刺す。
「どこからか話し声が聞こえたぞ。侵入者かもしれん、探せーっ」
 2人の話し声を聞いたゴースト兵が施設内にいる彼らを探し始めた。
「やばいですよ、どこかに隠れ・・・」
「どうしたんだ?」
 言葉を途中で途切れさせた火藍に、侘助は首を傾げる。
 火藍は隠れられる場所を探そうと彼の方へ顔を向け、彼の背後にいる遭遇したくない存在と目が合ってしまったからだ。
「見つけたぜ、ガキども」
「入って早々これですか。あんたの運の悪さには完敗ですよ」
「すまないな、油断しちまった・・・」
「これでガキ1匹捕縛だな」
「その手を退けてくれませんか?」
 ニヤリと笑い侘助を捕まえようとする兵の手に火藍が薙刀の刃を向ける。
「あぁ?侵入者を見つけて、はいそうですかって逃がすバカがどこにいる!」
「このやろう、放せぇええーっ」
「うるさいガキだ。しばらく大人しくしてな」
 拘束から逃れようと薙刀を振り回し暴れる侘助の右肩を、服の袖に隠し持っていたダガーで突き刺そうする。
「もう容赦しません!」
「おっと、もう1人いたんだったな」
「―・・・くぅっ」
 目の前でパートナーが傷つけられそうになっている火藍は、薙刀でダガーの刃を止めようとするが、相手の力に負けてしまい壁際に突き飛ばされてしまう。
「先にそっちのうるさいやつを捕まえるとするか」
「やめろぉおおーー!」
 火藍が捕縛されそうなったその時、侘助が兵に怒鳴った。
「捕まえるなら俺の方だけにしろ。だから火藍には手を出すな」
「片方しか持てねぇしな・・・そうしてやるか」
 侘助の薙刀を奪い、ロープと鎖で簀巻きにする。
「じゃあこいつは他のやつに持ってこさせるとするか」
「なっなんだと!?連れて行くなら俺だけにしろって言ったじゃねぇえか!」
「それを聞いたのはオレだけだ。他のやつは聞いちゃいねぇぜ」
「ざけんな卑怯者ーー!!」
 卑劣な亡者の言葉に騙された侘助は身体を締めているロープと鎖から逃れようとする。
「ほぉら、他のやつらがもうすぐここへくるぞ」
「逃げろ・・・早く逃げるんだ火藍!」
「あんたを置いて逃げろというんですか・・・」
「こいつの言うこと聞いてさっさと逃げちまえばぁ?」
「ふざけないでください!!」
 火藍の怒鳴り声に侘助は目を丸くする。
「俺があんたを助けに行きます。そのためには、今ここで捕まるわけにはいきません」
 大切なパートナーを捕縛した相手を火藍は悔しそうに睨んだ。
 ひとまず隠れる場所を見つけようと、1階の廊下を走った。



「騒ぎを起こしている人たちの反対側を狙おうと思ったんですけど・・・。あちこちで兵たちを陽動しているようですね」
 林の中から潜入の機会を窺っている夜霧 朔(よぎり・さく)たちは、どこから入ろうか考え込む。
「東側はやつらの守りが弱いようだな。そこを狙おう」
 朝霧 垂(あさぎり・しづり)は東門側の外壁に向かって、朔に六連ミサイルポッドを発射させる。
「よぉし、突っ込もう!」
 崩れた外壁から侵入しようと、ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)たちは急ぎ駆け込む。
 中に入ったとたん外壁が崩れ落ちる破壊音を聞きつけ、待ち構えている兵どもに遭遇してしまった。
「退きなさい!」
 ライゼにSPタブレットをもらった朔は、機晶姫用レールガンの銃口から十字砲火を放ち、躊躇なく一掃する。
「他のやつらが来ないうちに地下へ進みましょう」
 牢獄に捕縛されている生徒たちの奪われた武器を取り戻そうと朔たちは地下へ向かった。



「さて・・・っと」
 島についた神楽月 九十九(かぐらづき・つくも)は東門から施設内へ入った。
「他の生徒たちにつられて来ちゃったんですけど。どこなんでしょう、ここ・・・」
 周囲を見渡し、どうしてそこにいるのか首を傾げる。
「(ね、ねぇ戻ったほうがよくない?)」
 神楽月 マタタビ(かぐらづき・またたび)は施設の外から聞こえてくる叫び声に、ぶるっと身を震わせて九十九の腕をくいくいっと引っ張る。
「せっかく来たんですから、ちょっと進んでみましょう」
「(あぁっお嬢!)」
 心の中で叫び止めようとマタタビは九十九の腕をぎゅっと掴むが、彼女は廊下を進んでいく。
 1階の廊下を歩く九十九が突然足を止め、マタタビは彼女の背中にぶつかってしまう。
「(どうしたんだろ、突然・・・)」
「お茶にしましょうか」
「(―・・・え、えぇ!こんなところで!?)」
 目を丸くして驚くマタタビを気にせず、お茶を入れた九十九はティータイムを始めた。
「ふぅ、温まりますね」
 ティーカップに入っているお茶に口をつける。
「(あまりここに留まっているとやばくないか?捕まったらどうするんだ)」
「何をそんなに焦った顔をしているんですか。お茶くらいゆっくり飲ませてください」
 敵に見つかりそうだと慌てるマタタビに構わず、九十九はのんびりとお茶を飲む。
「そこの貴様ら、そこで何をしている!」
 マタタビの予感が的中し、九十九たちはゴースト兵に見つかってしまった。
「仕方ありませんねぇ・・・」
 戦うしかないかとため息をついた九十九は、右手に装着している装着型機晶姫 キングドリル(そうちゃくがたきしょうき・きんぐどりる)を向ける。
「どりどりどりどり〜☆」
 機関銃を撃とうとしている兵の腹にキングドリルを突き刺す。
「ぶらぁぁぁぁぁ!!」
 ギュィイーーンッと回転しながら雄雄しい声音で叫ぶ。
「うぉりゃぁああっ」
 襲いかかる兵の腹を貫き大声を上げ続ける。
 胴体の断裂した死体が床にドンッと落ち、断面から真っ赤な血が流れ出る。
「術なんぞ使おうとしてんじゃねぇえぞ!」
 アシッドミストを放つ兵の腹に刺さった。
「(兵が逃げてく・・・。敵わないと思ったのかな?)」
 マタタビは九十九から離れていく兵を見つめる。
 ペタン・・・ペタンッ・・・・・・。
 素足で廊下を歩く音が聞こえ、それはゆっくりとマタタビたちに近づいてくる。
「(なんだこの煙っ)」
 白い煙の匂いを嗅いだマタタビは超感覚で危険なものと判断し、とっさに両手で鼻と口を塞ぐ。
「(これやばい、吸い込まないように気をつけるように教えないと。って・・・ちょっとぉお!?)」
 服の裾を引っ張り注意する彼を無視して、トランス状態の九十九は煙が流れていく方へ突っ込む。
「フフフッ、くらいなさい!どりどりどりどり〜☆」
 男女とも判断出来ないヒューマノイド・ドールに、キングドリルをずぶりと刺した。
「(こいつ・・・さっきの兵たちと違って再生するのか!?ていうか、それ以上に何か危険な感じがする・・・。お嬢、離れたほうが!)」
 マタタビはジェスチャーでなんとか知らせようとするが、彼女はまったく気づかない。
 ゴーストの裂けた心臓から白い煙がシュウゥウウッと噴出す。
 まともに酸の煙をくらった九十九は床の上へドサッと崩れ落ちる。
「あ・・・あれ、何で動けないんでしょう・・・」
 煙を吸い込んでしまった彼女は酸にやられてしまい、動けなくなってしまう。
 右腕に装着しているキングドリルの方を見ると、ギギギッと無理やり動こうとしているが、酸の影響で回転することが出来なくなってしまい停止する。
 いったん離れていった兵が九十九たちのところへ戻ってきた。
「手間かけさせやがって!」
 ロープと鎖で彼女たちを捕縛しようとする。
「(お嬢たちを守らなきゃっ)」
 パートナーたちを助けようとマタタビが木刀を振り回す。
「(このぉ・・・うぁっ!?は、離ぇええっ)」
 必死に守ろうとするが、ドールの背から伸びた触手に両腕を掴まれてしまう。
「無駄な抵抗しやがって。こいつも牢に連れていけー!」
 簀巻きにされたマタタビは牢獄へ連れていかれてしまった。



「もうすぐ孤島につくかな・・・」
 小型飛空艇に乗り、海面ギリギリを飛行しながら神和 綺人(かんなぎ・あやと)は小声で言い島を睨む。
「えぇ、アヤ・・・。前回、多数の生徒たちに侵入されてますから、相手は相当警戒しているでしょうね」
 クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)は施設がある方から綺人へ視線を移す。
「そうだね、気を引き締めていかないと・・・」
「―・・・アヤ、前から何か来ます!」
 施設へ顔を向けたクリスが突然叫ぶ。
「ほ・・・砲弾!?」
「避けてくださいっ!!」
 綺人たちを撃ち落とそうと砲弾が迫り、それを見上げた彼らは慌ててハンドルを握り斜め20度に飛空艇を傾けて避ける。
「うぁあっ!」
「きゃぁああーー!!」
 ズドォオオンッ。
 砲弾が海に落ちた衝撃で水柱が上がる。
「このままでは墜落させられてしまいますよ」
「仕方ない・・・島の端っこに着陸しようっ」
「あの岩陰へ降りましょう!」
 荒地の上に着陸させた2人はすぐさま飛空艇から降りた。
「―・・・危なかったね・・・」
 やっと土の上に降りた綺人は、ほっと安堵する。
「この場にいるとゴースト兵たちが来てしまいます」
「帰りの手段がなくなっちゃうからね。施設内に侵入しようとしている生徒たちが、もう向かっているかもしれないし」
「アヤ、早く向かいましょう」
 施設へ侵入しようとしている生徒たちのために、クリスたちは急ぎ西門の方へ走っていく。
「特攻あるのみです」
 クリスは高周波ブレードを鞘から抜き、ゴースト兵の群れに突撃する。
「たぁああーー!!」
 バーストダッシュのスピードを利用して飛び上がったクリスは空を舞い、爆炎波で兵を焼き払う。
 炎に焼かれながらも怯まない群れの中に綺人が紛れ、彼女を狙う銃を持つ手を斬り落とす。
「頭を破壊しておいたほうがいいかな?」
 もう片方の手で銃を拾おうとしている兵の頭部を真っ二つにする。
 脳の断面からジュシュァアアッと鮮血が噴出す。
「ゴーストたちの注意を引き付けてくれている間に入ろう!」
 修理されていない東門が手薄になっている隙をつき、瀬島 壮太(せじま・そうた)ミミ・マリー(みみ・まりー)が駆け込む。
「誰か侵入したぞ、追えー!!」
 施設内に入っていく壮太たちの姿を見つけた兵が、侵入者どもを捕まえろと仲間たちを東門へ向かわせようと大声を上げた。
「あなたたちの相手は僕らだよ」
 綺人がゴーストの背を、氷術の冷気を纏った妖刀をズブリと刺す。
「数が多いですね・・・」
 侵入者を追おうとする兵を足止めしているクリスの表情に焦りの色が浮かぶ。
「あぁあ゛ーっ、めちゃくちゃ撃ってきます!」
 赤羽 美央(あかばね・みお)は外壁の銃を破壊したところから小型飛空艇で侵入しようとする。
「中へ入ろうにもこれに乗ったままでは、確実に撃ち落とされてしまいますね」
 地上で待ち構えている兵たちが持つ機関銃の的にされてはたまらないと、美央は施設から離れた位置で降りた。
 美央に気づいたクリスは剣を上下に振って、“早く中へ入ってください”という仕草をする。
 こくりと頷いた彼女は牢に捕まっているジョセフ・テイラー(じょせふ・ていらー)を助けるべく東門から施設へ侵入した。