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リアクション
第2章
抜ける様な空と柔らかな日差し、行楽日和な当日となった。
ホイップ一行は午前中にはジャタの森南側へと到着。
「わぁ〜! 見事な紅葉!!」
ホイップが赤や黄に染まった葉を前に歓声を上げた。
枯葉が敷き詰められた土を踏みしめると、柔らかな弾力があり心地よい。
土と枯葉の優しい匂いが鼻孔をくすぐった。
森から近い、開けた場所で一度解散となり、各々が自由に行動をとる事となった。
■□■□■□■
「今日来て正解だね! 風も気持ち良いよ! あっ! 目当てのイチョウ発見!」
クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)が隣にいるジィーン・ギルワルド(じぃーん・ぎるわるど)の注意を自分が見つけたイチョウの木へと向ける。
「では、さっそく銀杏を採りに行くか」
「そうだね……って、ゴム手袋持って来たよ!? 使わないの?」
クライスは近くへと向かう前に手袋をしたのだが、ジィーンはすたすたと歩いて行ってしまったのだ。
後ろからついていきながら、マスクも装着する。
「匂いなんざ気にする必要もないだろう。これから女を口説きに行くのなら別だが」
「うっ……」
“女を口説きに”の文句に反応し、胸を押さえた。
失恋中の身としては痛い言葉になったのだろう。
「で、でも、匂いだけじゃなくてかぶれるみたいだけど?」
「そうなったらキュアポイゾンでもしておけば良い」
問答が終わったところで、イチョウの木の下に到着した。
下には落ちた銀杏、そして枝にはまだ沢山の銀杏がなっている。
「うわぁ〜! ……流石に匂いは凄いね」
「さっ、匂いが云々言ってないで拾うぞ」
「うん」
クライスは1つ1つ確認しながらネット状の袋へと入れていく。
ジィーンの方はと言うと、なんとも豪快に銀杏を5、6個掴んで袋の中へと入れているのだが、一緒に落葉や土も入れてしまっている。
ネットの中が一杯になると、少し袋をゆすって土や枯葉を出し余裕が出来るとまた豪快に入れていった。
「ふぅ……こんなものかな。ジィーンさんの方はどう?」
声を掛けると嬉しそうにパンパンになった袋を持ちあげた。
「ざっとこんなもんだ」
「うわぁ! 僕の2倍くらい入ってそうだよ!」
「当たり前だ」
クライスはジィーンに拍手を送った。
続いて、果肉を取る為に川へと移動をした。
その途中、フットサルを楽しそうにプレイしている人達に出会い、クライスは挨拶した。
匂いでどん引きになるかと思ったのだが、意外とそうでもなかったらしい。
「くっさいけど、これが銀杏やもんなぁ! 今度、お好み焼きにも入れてみようかな。茶わん蒸しもええけどなぁ〜」
日下部 社(くさかべ・やしろ)はむしろ楽しそうに会話をした。
「日下部そんなの作れるの!? 出来たら俺も食べたいな」
「おお! んじゃ、作ったら誘ったるわ」
愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)も会話に加わる。
「凄い量だね! 何作るの?」
気になったホイップも声を掛けた。
「ジィーンさんがこれでお菓子を作るみたい」
(ホイップさん、どうしてブルマ?)
「銀杏ってお菓子にもなるんだ! 初めて知ったよ。ジィーンさんって凄いんだね!」
「まあな。 そうだ、うまく出来たらおまえにもお裾分けしてやろう」
(なんでコイツはブルマなんだ? 似合ってはいるが……)
心なしかジィーンの鼻が高くなっているように見える。
「良いの!? わぁ〜! 楽しみにしてるね!」
こうして、少しの疑問を残し会話は終了し川へと到着した。
ネットの袋をそのまま川の水へと浸け、少しふやかす。
勿論、釣りを楽しんでいる人も居たので、その人達の川下でやっている。
暫くしてから取り出すと良い感じ果肉がふやふやになっていたので、クライスはゴム手袋で一気に果肉を取っていく。
種と果肉が綺麗にはがれ、そんなに苦労することはない……匂い以外は。
「く、臭い……」
「やりたくないのなら、やらなくても良いのだぞ? 半端な仕事は半端な物しか出来ん」
「ううん、パートナーとして協力するって決めたから頑張るよ」
「そうか。なら気合い入れてやれ」
「うん」
一方、ジィーンはこれもまた素手で果肉を取っていっている。
その手はかぶれて、赤くなっているのだが、集中している為か気が付いている様子がない。
無事に果肉取りが終了し、種をネットの中で平らにし、川原で天日に干す。
その間、剣術の稽古をしている2人の姿があった。
■□■□■□■
「ふはははは! ご主人! やっと見つけたぞ!」
ロングのメイド服に特撮ヒーローのテイストを加えた衣装を身につけた【ケンリュウガー・冥土賦王無】になっている武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)にホイップは捕まってしまった。
「うぅ……やっぱり牙竜さんメイドのままなんだね……電話の時は普通だったのに……」
「観念するんだご主人! さあ、着替えをするんだ! 出来ないのならメイドの技で一瞬にして俺が着替えさせてやろう!」
「ええっ!?」
じりじりと迫る牙竜に、おびえるホイップ。
「何してるですーっ!」
そんな牙竜の背後からタックルを決めたのは桐生 ひな(きりゅう・ひな)だ。
「何をする、元ご主人!」
「それはこっちのセリフですーっ! 女性のお着替えを男性であるメイド牙竜がするなんて言語道断ですー!! 変態ですー!」
「何を言っている! メイドとしてご主人の着替えを手伝うのは当然ではないか!」
ひなの言葉に牙竜も負けてはいない。
なので、ヘキサハンマーを食らわせ、問答無用で黙らせたのだった。
「さあ、ホイップさん安心してこっちでお着替えをするですー」
「……牙竜さん大丈夫なの?」
地面で動かなくなっている牙竜を心配して言う。
「大丈夫ですー! これくらいじゃ死なないですー。着替えが完了したらきっと復活してるですよー」
「そ、そっか……」
苦笑いしながら無理矢理、お着替え草むらへと連行されてしまった。
「あ、そっちは翼さん、お願いするですー」
「勿論です」
くるりと振り向き、ひなは月島 悠(つきしま・ゆう)の事を麻上 翼(まがみ・つばさ)に託した。
「ちょ、翼、着れないよ、やめてよ、絶対着ない!」
「悠くん、ボクから逃れられると思ってます?」
「う……でも、無理無理無理!」
「観念して大人しくして下さい!」
「きゃーっ!」
悠の必死の抵抗空しく、翼に無理矢理草むらに連行されてしまった。
「ホイップ様発見ですわーっ!」
草むらの中では着替え途中のホイップがロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)に見つかり、飛びかかったところをひなのヘキサハンマーで撃沈となった。
なんとかお着替え完了。
「ぅう〜、こんな格好、恥ずかしいよぅ〜」
まず出てきたのは顔を真っ赤にした悠だ。
淡いピンクのフェミニンカットソーで、ふんわりしたフリルの水玉シフォン、胸元のベロアリボンがアクセントになっている。
スカートの丈は短く、ヒールのある短いブーツにカラータイツとなっている。
「きゃー、悠ちゃんかわいー!」
「うぅ〜……」
翼の言葉にもっと顔を赤くし、茹でダコのようになってしまった。
「ホイップさんも可愛く出来たですー」
ホイップの方は、トップス部分が裏毛のカットソー、スカート部分がストレッチ性の生地を使用した異なる素材を使ったワンピースだ。
丈は勿論、短い。
それに長めのブーツを合わせている。
「洋服って良いよね〜」
ホイップはすっかり気に入ってしまったようだ。
ひなが言っていた通り、牙竜はもう復活していてカメラを構えていた。
ホイップと悠は恥ずかしがりながらも紅葉の前で写真を何枚も撮られた。
そして、撮影が終わったと思いきや次はアオザイに着替えさせられたのだった。
「いいなー……私も入れてですー!」
こうしてアオザイの撮影からはひなも一緒に撮り、楽しく撮影が終了した。
満更でもなかったホイップにひなはともかく、悠は本当に恥ずかしそうにしていたのだが、返って翼を喜ばせるだけだったのだ。
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