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リアクション
第3章
太陽が真上へと来て、お昼の時間となった。
時間とはいえ、皆適当にお昼をとるだけなのだが、屋台や焼き芋を配布する者、そして芋煮まで準備しているようだ。
■□■□■□■
「ホイッちーー! これから焼き芋作るんだけど、一緒に作ろうぜーー!」
「うんーー!」
釣りをしていたホイップを神代 正義(かみしろ・まさよし)が叫んで呼び寄せた。
正義の側では猫花 源次郎(ねこばな・げんじろう)と久多 隆光(くた・たかみつ)が竹箒で近くの落葉を集めているところだ。
ホイップも竹箒で一緒に落葉を掃いていく。
「こんな時の為に転職済み! パラミタ刑事シャンバラン!!」
そう言うと、正義はこの日の為にメイドに転職して習得しておいたハウスキーパーを発動させ凄い勢いで落葉を集めて行く。
「……最近、ヒーローがメイドさんになるのが流行ってる……?」
ホイップの疑問は正義の竹箒を使う音に全てかき消された。
しばらくすると、こんもりとした山のように落葉が集まった。
「うずうずしてきたー!」
そう叫ぶと正義は出来たばかりの落葉の山へとダイブしてしまった。
「うっはぁーーー! 超気持ち良いー! ホイッちとタカミンも一緒にやろうぜ!!」
「そ、そうなの? じゃあ、えいっ!」
ホイップは正義の誘いに乗って落葉に飛び込む。
「あ、落葉の良い匂い」
「だろう?」
「じゃ、俺も」
ちゃっかり女好き隆光もホイップの横へとダイブしておいた。
「まったく、ホイップまで……子供じゃねえんだから、そんなにはしゃぐなっての……」
源次郎に叱られたところで3人は大人しく山を元に戻した。
そして、火を点けるのだが……正義は爆炎波の準備をしていた。
「そんな火のおこし方があるか阿呆!」
源次郎の言葉も空しく、出力控えめの爆炎波は発射されてしまった。
「フフ……凄い点け方だね」
隆光が言うと、勘違いした正義は浮かれていた。
火がしっかりと点いたところで、先に用意していたアルミに包んでおいたサツマイモを投入していく。
少し時間が経つともう良い匂いがしてきた。
「そういえば、源次郎さんってスターニャックスのマスターやってるんだよね?」
ホイップが質問をする。
「おう、そうだぜ?」
「今日は定休日なの?」
「いや、今日は正義に焼き芋の手伝いに呼ばれたから臨時休業日だ」
「へぇ、あのスターニャックスのマスターなんだ。名前だけは聞いたことあるな」
会話に隆光も加わる。
「そうそう、琥珀亭のマスターが良い芋焼酎が手に入ったって、もし源次郎さんに会う事があったら伝えてくれって。一緒に飲みましょう、って」
「そいつは良い事を聞いた、今日の焼き芋を手土産に寄らせてもらうとするかな」
目を輝かせて反応した。
「ホイッちが伝言板になってる!?」
楽しい会話をしていると時間はあっという間に過ぎ、焼き芋が完成した。
隆光が拾っておいた枝で焼き芋を取り出す。
源次郎以外の3人はハフハフ言いながら口へと運ぶ。
「美味しい!」
3人は声を揃えて言う。
こうして、火の始末をした後、正義と源次郎、隆光は焼き芋を配りにいったのだった。
■□■□■□■
「たまにはこういうのんびり歩くだけっていうのも良いもんだな」
紅葉の下を歩きながら欠伸を1つするとウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)はそう言った。
「うん!」
お弁当の入ったカバンをぶらぶら揺らしながらフェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)は元気に返事をした。
「ホイップに誘われて来たのは正解だったな」
「そうだね。こんなに綺麗な紅葉もなかなか見られないよね」
風で揺れる髪をフェリシアはかき上げる仕草をする。
「き、気がつかなくてすまん!」
そういうとウェイルはお弁当のカバンを無理矢理奪い、自分の肩へと掛けた。
「気にしなくていいのに」
くすくす笑い、極上のスマイルを浮かべる。
途中、今日やっていたフットサルの会話をしていた綺人、寺美と挨拶を交わす。
丁度良く開けた場所へと出るとシートとお弁当を広げた。
お弁当はフェリシアが朝早くに起きて作ったものだ。
中には俵型のおにぎりとピーマンの肉詰めに、出汁巻き卵、カレー風味の味付けをしたカリフラワー等、彩が鮮やかだ。
「うまそうだな」
「どうぞ、召し上がれ」
促され、おにぎりを1つ口へと運ぶ。
「うん、うまいよ」
「良かった〜。作ったかいがあるよ」
食べ終わると、タイミングよく隆光がアツアツの焼き芋を持ってきた。
「さ、お一つどうぞ」
「有難う!」
隆光の笑顔に2人は素直に受け取った。
(フヒヒ……火傷して別の意味でアッツアツになるが良い)
隆光の呪いも空しく、普通にふうふうして美味しく食べられてしまった。
「美味しかったよ」
「持ってきてくれて本当に有難う!」
2人からのお礼もそこそこに隆光は真っ白になってふらふらと離れていってしまった。
(燃え尽きたよ……真っ白だ……)
■□■□■□■
お箸で茶わんを軽快に叩く音が辺りに響く。
「芋煮、まだ〜?」
リリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)は待ち切れずに黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)をせっついている。
「って、お前も手伝えよ!」
「え〜、皮むきとかの下ごしらえは昨日しといたでしょ? にゃん丸が」
にゃん丸の叫びも空しく、リリィに返されてしまった。
「ホイップちゃんが最近、借金返済の仕事を頑張ってるみたいだからその慰労に来たっていうのに……誰か俺を慰労してくれ!」
「そこ、なんか五月蠅い!」
「……はい」
ブルーシートの上で顎でにゃん丸を使うのだった。
そのブルーシートには焼き芋を持っていたホイップが呼ばれて、リリィと一緒に座っていた。
手伝おうとしたのだが、大丈夫とにゃん丸に言われてしまったのでリリィとの会話を楽しんでいる。
焼き芋は勿論、2人にも持ってきて渡してあるのだが、リリィは全然足りていないようだ。
「ホイップちゃん、味噌味って大丈夫?」
「うん! 味噌味好き!」
「良かった、良かった」
にゃん丸は安心して味噌を大鍋に投入した。
ブルーシートではリリィ秘蔵のお菓子、パラミタチップスとイルミングミが広げられていた。
「でね、でね、にゃん丸ってば寝ぼけ過ぎててトイレのドア開けっ放しで用足してて、あたし知らないで開けちゃったのよ!」
「ええ!?」
「ええ、って感じでしょ? そこでにゃん丸の奴、なんて言ったと思う?」
「何何?」
「俺の光るちんちんはやらせはせんぞー! だって! それも真顔で!」
「酷い……ばらさなくったって……」
この話し、にゃん丸には剣となってハートに突き刺さったのだった。
次の話題へと移る頃には芋煮が完成に近づいていた。
「むっ、曲者の気配……」
にゃん丸の背後の草むらからお腹を空かした先ほどのフットサルチームの面々(男性限定)が芋煮を狙って飛びかかる。
「させるかーー!!」
お玉と鍋蓋を持って応戦するにゃん丸。
そこで、放たれた無言のリリィの会心の一撃!
クリーンヒットした皆は地面に突っ伏してしまった。
「あれ? なんで俺まで?」
応戦しようとしていたにゃん丸も何故か倒れていたのだった。
「それでねぇ〜、変熊仮面って人が〜」
何事もなかったようにリリィの会話は続いていく。
復活したにゃん丸が芋煮を仕上げると女性も含めたフットサルメンバーに配る。
勿論ホイップも嬉しそうにハフハフさせていたのだった。
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