リアクション
混浴ぅ!? 剛太郎が触手言い訳の為に何気なく言った言葉を、更に邪なものへと変換する藤右衛門。 「うおおお!! 俺は料理を食わずに風呂にはいるぞおお!!!」 いきなり、隣にきたラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が大声で叫んだ。 「何かお湯が沸いてるそうじゃねぇか! って事は温泉なのか!? 風呂好きなおっさんにとっては、これは行くっきゃねぇ! なぁ!?」 急に問いかけられて、藤右衛門はあわあわしながら頷いた。 (バレやせん。超孫にはまだこの思い、バレやせん!) 「…温泉……」 剛太郎の呟きに、ラルクが満面の笑みを浮かべた。 「そうさ! 全身、お湯に浸かれっかなぁー。浸かってみてぇなー…全裸ではいってよぉー」 ぼんやりと湯船に浸かる自分を想像する。 「本当は日本酒もってくればよかったんだがー、まぁ、今回はゆっくりお湯だけを楽しむことにするぜ! しかし……」 ラルクは曇った表情をする。 「女が入ってきたら……全裸だとセクハラになるよなぁ。まぁもしもの時のために褌は用意してきたが」 「…女が……温泉に…」 「『極楽極楽!!』なんて言いながら、ゆっくり浸かりてぇもんだー!」 豪快に笑うラルクの横で、剛太郎は目に怪しい光が灯り始めていた…… 「あんな怪しい物を食べたらダメです。お腹壊しますよ!」 温室に入りながら、秋月 葵(あきづき・あおい)に向かってエレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)は再三に渡り訴えていた。 「もう分かったよ〜。あ〜ぁ……でも南国風味、食べる予定だったんだけどなぁ……」 「ケルベロスさんですら拒否したんですよ? そのような物を葵ちゃんに食べさせる訳には行きません」 「そっかぁ……」 (あんな虫が栄養素になって、葵ちゃんの体の一部になるなんて絶対許せないです!) もう何度同じ言葉を繰り返しただろう。 絶対に食べさせたくない思いが、ひしひし伝わってくる。 「えー食べないの〜もったいないにゃー」 イングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)が、温室の窓から名残惜しそうに佃煮の山を振り返る。 「イングリット、村に居た時に食べていたから全然大丈夫なんだけどにゃ」 「………」 「ひぅっ!?」 エレンディラから凄まじい殺気を感じて、イングリットは小さくなった。 機嫌を損ねるとお菓子を作って貰えなくなってしまう。 仕方なく口を噤むが、ポケットに忍ばせた佃煮を感じてこっそり微笑んだ。 (後で食べるにゃー♪) イングリットの突っ込みに便乗して、やっぱり食べに戻ろうと提案した葵の耳に、エレンディラ小さな囁きが届いた。 『……食べたらもうキスもしてあげませんから……』 葵の目が大きく見開かれ、そして頬が見る見る染まっていく。 「ざ、残念だけど仕方ないか〜! エレンが反対してるんじゃね〜」 「そうですよ。巨大ムカデの巣穴からお湯が湧き出ているようですから、そちらを調べに行きましょう。途中、例の場所にも寄って」 「うん!」 葵は大きく頷いた。 「──ふんふふんふふ〜ん♪」 鼻歌を歌いながら、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が花に水を撒いていた。 「温室をパトロールです。元気がないお花にお水をあげて、温水せいびするです! おんしつのへいわはボクがまもるです!」 一心不乱に花に水をあげていると。 「あ、虹……」 じょうろから出るシャワーが、小さな虹を作った。 「…虹の花……。確かこの近くに……!」 はっとして、ヴァーナーは辺りをきょろきょろと眺めた。 「あっ、あったです!!」 鉢が五つ綺麗に並べられている。 懐かしく……切ない思い出の場所。 「一号ちゃんたちのお花、どこかでそだったりしないかな〜…」 その時。 「あれ? ヴァーナーちゃん?」 「わぁ、葵ちゃん達もここに来たんですか?」 お互い考えていることが分かって、目を見交わして微笑んだ。 「……ハロウィンっぽく、カボチャクッキーを持ってきたんだ」 「きっと喜ぶと思います、一号ちゃんたち」 葵の持ってきたクッキーを見て、にこにことヴァーナーが笑う。 「だといいな……。何か変化あった?」 「ボクも今さっき来たばかりで、まだ何…も……」 ヴァーナーが固まる。 「?」 視線を追いかけると。 緑の、小指の先程の小さな芽が一つ、鉢の前から顔を出していた。 「わーわーわーわー!」 「きゃーきゃーきゃーきゃー!!」 「……にゃ…にゃーにゃーにゃー!!!」 イングリットが負けじと声を張り上げる。意味は分かっていないらしい。 「すごいです! 芽が出てます!」 「復活した? 生まれ変わったの!?」 驚いているヴァーナーと葵を落ち着かせるように、エレンディラが優しい声で言った。 「また会えますね…きっと」 「うん!」 「はいです!」 感動的な光景を目にして、喜びではちきれんばかりのヴァーナー達だった。 |
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