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ぼくらの実験記録。

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ぼくらの実験記録。

リアクション

「本来は私は『受け』のみなのですけどね…他の皆様に楽しんでいただくために頑張ってみましょうか」
 秋葉 つかさ(あきば・つかさ)がタネ子エキスの佃煮を一つまみ、口の中に入れた。
「ミルディ、ミルディ! こっちも遅れずに食べなきゃ!」
「え……」
 つかさの様子を見ていたイシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)は、急かすようにミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)に食べるよう薦めた。
「これ、ゲテモノだよね……? あんまり口に入れたくないなぁ……まぁ、足の生えたチーズとかに比べたらマシだけど…」
「はーい☆ それじゃ、お口あけてー♪」
「ちょちょちょ、なんであたしがっ! いしゅたんも一緒に!」
「え? あたいは食べないよ? 食べるのはミルディ♪」
「ひどいー! 一緒に食べようよ」
「あたいも食べろって? 仕方ないなぁ……ミルディが食べ終わってからねっ」
 言い終わらないうちに無理やり口の中に突っ込んまれた。
「ぐふっ、ぐ……う…うん? 味は悪くないかな。結構美味しいよ」
「そうでございますね、中々美味で」
 先に食べていたつかさが口をもごもご動かしながら言った。
「……タネ子さんのエキス、やはりここは触手の生えたものに変わってしまうのかしら。ふふっ」
 心底楽しそうに、つかさは笑う。
「やるとなれば遠慮はいたしません。皆様楽しんでいただけるように猛威を振るいましょう! 服を破ったり肌を這い回ったり、好き勝手やりますよ」
「え? これ変身するかもなの!? ちょちょちょちょっと待って!」
 ミルディアがパニックを起こす。
「先に言ってよ〜! ……あれ? 何か身体が変化してる? あわわわ…何これ…これ…どうなってんの? どうしたらいいのこれ!?たすけて〜!」
「きたきたきたでございますわ〜!!」
 ふいに。
 大騒ぎしていた、つかさとミルディアの動きが止まった。
「?」
 イシュタンが不思議そうに様子を見守っていると。
 いきなり二人は回れ右をして行進を開始した。
 まるでロボットのようなカクカクとした動きで。
 そして温室の中へと消えてく……
「…ひゃ、ひゃあぁぁあ!」
 呆然としていたイシュタンは、マズイ状況に気付いて慌てて後を追いかけた。

「私は付き添いで来ただけなんですが……」
 中々噛み砕けない佃煮を口の中で行ったり来たりさせながらラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)涙混じりに呟いた。
 はっきり言ってマズイ。
 少しずつ、鼻をつまんで飲み下していたが。
「……吐き出すんじゃ…」
「え?」
「あやつらを見ていなかったのか!? 早く吐き出すんじゃよ!」
 一緒に食べていたはずのシュリュズベリィ著 『手記』(しゅりゅずべりぃちょ・しゅき)が、自分の口に指を突っ込んで、げーげーやり始めた。
 ラムズは呆れながら告げる。
「『ゲテ物が喰いたい』と言い出したのは手記ですよ?」

「いいから吐くんじゃ〜〜〜〜!!」


 今度はラムズの口の中に拳をねじ込んで吐かせようとする。
「はがが、はががががが」
(顎が外れます〜〜〜)
「……ありゃ? 抜けなくなった」
「はがががががが!」
「何をやっているんですかぁ」
 朱宮 満夜(あけみや・まよ)が、口から拳が抜けなくなくてジタバタしているラムズの身体を引っ張る。
「はがーががががが」
「抜けませんよー」
 ラムズと手記を助けながらも、内心焦りを隠せない満夜だった。
 同じ毒見なら最も危険なものに手を出すのが冒険というもの! ……と思って試食に挑戦した満夜。
 既に何口かお腹に入れているので、食べたことが手記にバレてしまったら、同じように拳を突っ込まれてしまう。
 冗談じゃない!
 タネ子エキス……普通は頭のハマグリを想像しますが、根はマンドラゴラで触手は味のないもやし……どこと絡んでるんでしょう?
(いずれにせよ嫌な悪寒しかしません……)
 すぽんっ!と、拳が抜けた。
 反動で、手記の唾液だらけの腕が満夜の前に現れ、飛び離れる。
「…一体どうしたんですか、吐き…だ……せ、な…ん…」
 あれ?
 おかしい。
 身体がおかしい。
 満夜は必死に抵抗するが、自由が奪われていく。
「身体がお…かしく……ない、で…」
「満夜も食べ……たのか、では、我が……拳…吐き……」
 言い終わらぬうちに。
 三人揃ってザ・行進。温室へ向かってレッツゴー!

「そんなぁ〜…」
 佐倉 留美(さくら・るみ)はがくりと肩を落とした。
 タネ子エキス入りのものをタネ子自身に食べさせたら一体どうなるだろう? と思いやって来たのだが……
 噂通り、頭は既に無かった。
 ケルベロスのお腹の中に入ったらしい。
 仕方がないので、当初の目的である触手の森に飛び込もうとした。
 しかし──
「え? え? ええ??」
 生気の無い目をした生徒達が留美に向かって行進してくる。
 一体何事!?
「まさか、わたくしを責めに来たのですかっ? いいでしょう、受けてたちますわ! 私を嬲ってください!!!
 固く目を閉じ、大きく腕を広げて待ち構える。
「……?」
 いつまで経っても何も起こらない。
 不審に思い、ゆっくりと目を開けてみた。
 視界の端には頭の無いタネ子の巨木が、そして反対端には皆が。
 留美から少しだけ離れた場所で、立ち止まっている。
「あ……うぅ…」
「?」
 小さくうめき声をあげたかと思うと。
 指の先からいきなり触手を放出!
 留美に向かって伸ばしてきた!

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


 声にならない声で叫ぶ。
 これからどうなってしまうのだろう!?



つかささんとミルディアさん、タネ子さん風味にチャレンジしたんだ。

散々躊躇ってたけど、思い切ってパクっていっちゃった。

タネ子さんの頭は、そのままだとおいしいんだけど、

虫とミックスしちゃったから、いったいどうなるんだろう?

ちょっとドキドキ、ちょっとワクワクがまじりあった感じになったんだ。


で、たぶん触手が生えて来るんだろうな、と思ったら、

予想通り、ウネウネと触手が生えてきたよ。

タネ子さんといえば、やっぱり『これ』じゃなくっちゃ。

最終的につかささんやミルディアさん達、小さなタネ子さんみたいになっちゃった。

それと、皆してタネ子さんの側に集まってるの。なんでかな? 親子?


「ふぅ……」
 ネージュはため息をついた。
 今、目の前で繰り広げられている事に、中々頭がついてこない。
「皆の手から触手が生えてる〜〜〜〜。髪の毛もうにょうにょして、ゴーゴンヘッドになってるし、キモイよ〜〜〜〜! あっ…」
 留美が触手に襲われている。
 助けたいけど足が前に出ない!
「ごめんなさい! ……あれ? だけど」
 心なしか喜んでいるようにも見える。
「──あん……っ、いいっ…イヤ……! いい……っ!!」
「助けなくて正解? なのかもしれない」
 ネージュは小首を傾げて苦笑した。

「透乃…ちゃ……ん?」
 生気の抜けた目をした透乃に、陽子は小さく声をかける。
「…透……、っ!?」
 透乃の指先から伸びた触手が陽子の身体に絡まり、食い込んで、身悶えながら必死に抵抗する。
「やめてっ、透乃ちゃん!」
「………」
「んっ、あぁっ……!」
 生気の抜けた透乃の目には、何も映っていないように見えた。
 しかし。
(行け! 行くのよ、私の触手!! そう、陽子ちゃんの脚! その先を! いい、いい! 最高〜♪)
 声も表情も表に出すことは出来なかったが、外界を感じ見聞きすることはしっかり出来ていた。
 触手も自分の思い通りに動かせる。
「……いやぁ…! 透乃ちゃ、ん……助け、てぇ! だめぇ…」

(またまたそんな事言っちゃって♪)


「あぁ……んっ」
(陽子ちゃんの性感帯、この私が極めて見せる!)
 透乃の触手が艶かしく動き回る。
 
「この服、いつになったら完全に乾くかしら?」
「まさか制服のまま温泉に入るとは夢にも思いませんでしたね」
 びしゃびしゃに濡れた服を絞りながら、アリアとロザリンドが密林のジャングルから顔を出した。
「下着まで濡れちゃっ…て…」
「……? どうしたんですか?」
 アリアが一点を見つめたまま硬直している。
 不思議に思い、ロザリンドもその視線の先を追った。
「っ!?」
 指の先からうにょうにょと触手を垂らしている面々に気付き、慌てて逃げ出す。
 が。
「──きゃっ!」
 足に絡みつく触手。
 二人はずりずりと、死んだ魚の目状態の生徒達の前へと引きずられいく。
「何が起こっているんですか!? ──まさかこれは佃煮のせいで!?」
「いや…いやぁ……今日は触手は相手にしないの…しないのに…っ」
 弱々しく首を振るアリア。
 濡れた制服が肌に密着し、引っ張られるごとにスカートがずり上がっていく。
(これじゃ見えちゃうっ!)
 右手はそこら辺に生えている草を掴み、左手はスカートを必死で抑えながら逃れようとするが。
 とうとう腕にまで触手が伸び、押さえつけられてしまった。
「……やああぁっ! んっ……」
「アリア…さん……ロザリンド、さ……ん」
 既に捕まり、よれよれになっていた留美が力を振り絞って声をかける。
「い…一緒に、逃げま、しょぅ…」
 頷いて見せた瞬間。
「ひゃぁ…ん!」
 触手の波が一層大きくなって襲ってきた。
(逃がしはしませんよぉ! ……なんだか…なんだかとっても楽しいです! 髪の毛も触手になっています〜〜動け〜〜)
 満夜が弾けていた。
「これじゃ逃げられないよぉ…!」
「ふぁっ……いやぁああ…んっ」
「……あぁ! っあ、ああぁあああぁあぁ!」
 留美とアリアそしてロザリンドの嬌声が響き渡った。

 温室に入った天津 のどか(あまつ・のどか)は、辺りをきょろきょろと眺めた。
「先ほど何名かこの奥へ向かったようですね。何やら事件の匂いがします。私もこっそりついて行っちゃいますよー。なんだかこの辺の植物、先ほどからうねうねとうごめいている気がするんですが……」
 ほてほて歩いていると。
……聞こえる。
「さっきから艶っぽい嬌声に色っぽい吐息が聞こえます……」
 もう少し奥に進んで確認しちゃいましょう!
 何回か緑のカーテンを押しやりへしやりしていると。
 服がドロドロに溶かされ、触手によってとってもエロい目にあっている生徒達の姿が、眼前に現れた!
「これは素晴らしいシャッターチャンス! あぁ、デジカメ、デジカメ」
 この素敵な光景を記録係としてしっかり残しちゃいますよ!
「あぁ…試食会の記録に添える写真を撮るだけです。記録用ですから! ……きゃっ!?」
 写真に気を取られすぎていたのどかは、自分に向かってくる触手の存在に気付かなかった。
 引きずりこまれ、一緒に捕まってしまう。
「や……嫌です……」
 これから一体どんな事をされてしまうのでしょう!?
「そんなこと考えたら……考えたら……か、体が…体が……疼いて来ちゃいますっ!」
 のどかは激しく身悶えた。