リアクション
第十六章 魔王の正体
大広間を抜けた呪詛子と英彦はその奥の通路を通り過ぎ、行き止まりに隠し通路を見つけた。
そして、そこを進むと小さな部屋があった。
「……とうとう来ましたか、ここに魔王がいるのですね」
英彦は感慨深げそうに扉に手をかける。
だが、呪詛子は何故か戸惑っていた。
「なんか、遺跡に入った時から頭が痛かったの。最初はそんなに気にならなかったんだけど、この通路に来たらジンジンと突き刺されるように」
呪詛子は頭を抱えてその場にへたり込んでしまう。
「呪詛子さま?! 大丈夫ですか」
英彦は呪詛子の肩を持って、石の床に彼女を寝かせる。
「……英彦ごめんね。こんな時でも迷惑かけちゃって、本当に呪詛子ちゃん何で役に立たないんだろう」
普段は強気な呪詛子が珍しく弱音を吐く。
よっぽど酷いのだろうか、と英彦はその様子を見ながら心配になった。
「そんなことありませんよ。私にとってはあなたがいるだけで……いえ、呪詛子さまをお守りできただけで、十分ありがたいです」
英彦は呪詛子の手を取った。
「……ねえ、英彦。ワイバーンの飼い主が言ってたこと覚えてる?」
急に呪詛子はそう口を開く。
「たしか、呪詛子さまに魔王をどこで見たか聞いてましたよね」
「なんかあの質問が妙に気になって、頭の中でぐるぐるしてるのよね……」
「だったら確かめましょう、魔王の正体を」
英彦はそう言って、呪詛子の肩を持って体を支える。
ここで立ち止まってれば、さっき残して行ってしまった二人に申し訳が立たないわね、と呪詛子は後ろの方をチラリと見る。
呪詛子は英彦の支えでなんとかよろよろと立ちあがり、小部屋に扉を押して中に入っていった。
ギギギと鈍い音を立てて、石の扉は開いていく。
中は薄暗く英彦が手に持ったブライトシャムシールの光がだけが、唯一の便りだ。辺りを照らすと部屋の真ん中には大きな棺が置いてあった。
呪詛子と英彦は棺の縁に二人で手をかけ、一瞬視線を交差させた後持ち上げた。
だが、棺の中には何も入っていなかった。
「……魔王の本体はもう既に出ている?」
英彦は思わず辺りを見回す。
そして、呪詛子は空の棺をただ見つめ続けていた。
「英彦、違うの……魔王なんて初めからいなかったのよ!」
呪詛子は何故か笑い出した。
「初めからいなかった?! それはどういうことですか?」
呪詛子は黙って空の棺から古ぼけたフードを取り出した。
英彦はどこか見覚えのあるフードに手に取った。
「これは……呪詛子さまのお父さまのフードではありませんか? 何故、これがこの棺の中に……」
「これ、魔王がつけていたのと同じものよ。ずっと引っかかっていたのは、これだったのね」
「え、それはどういうことですか? 何故お父さまが魔王に? あと、どうしてファイナル・クエストに?」
次々と疑問が湧いてきた英彦は、呪詛子に質問をぶつける。
「……それも完璧に思い出したの。お父さんは心配性だったから、呪詛子ちゃんが何かする時はいつもこっそりどこかで見てたの。だから英彦とこのゲームを始めた時もどこかでお父さんが見てるんじゃないかと思ったの」
呪詛子は全ての記憶を取り戻した。そして、自分たちがスタート地点に戻っていないことを確認して、正解にたどり着いたことを確信した。
そして、呪詛子の話を聞いてから少し遅れて、英彦の方も記憶も取り戻す
「ということは、魔王はこれは呪詛子さまのお父様に対する投影だったのですか?」
「ええ、たぶんね」
呪詛子はふうっと大きく息を漏らした。
「色々と迷惑をかけてごめんなさい、英彦……」
「謝らないでください。私はずっと自分の意志であなたの傍にいたのですから」
呪詛子は震えながら英彦の手を握り締める。
すると、二人の体を虹色の光が包み込んだ。
――コングラッチュレーション! ファイナル・クエストクリアおめでとうございます!
英彦が目を覚ますとパソコンのモニターにはそう文字が浮かんでいた。
そして、隣でまだ眠っている呪詛子を見て微笑んだ。
どうも、「『嘘』を貫き通すRPG」のGMの袋小路愚太郎です。
風邪をひきながらこのシナリオを作成していたので、呪詛子みたいな元気なキャラを書いていると、
どんどん自分の精神力が彼女に奪われていくようで結構疲れました。
あと、内容とは関係ないことなのですがアーバン砂漠での人工呼吸描写はかなり適当にネットで調べて書いたので、
あまり参考にしないでください。(する人もいないと思いますが、いちよ)
まあ、そんなことよりも呪詛子の殴る蹴るの暴力の方が参考してはいけないと思いますが……
ここまで読んでくださった方、大変ありがとうございます。
最後に次のシナリオなのですが、ネタは思いついたのですがちょっと忙しなるので
少し先になりそうです。とても馬鹿な話なので、ちょびっとだけ期待して待っていただけると嬉しいです。