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リアクション
第四章
宵の口。
空は暗く、光が映える。
喧騒は徐々に鳴りを潜め、新たな旋律を奏で始めた。
三二一は「待ってました!」と用意していた衣装に袖を通す。
赤を基調にしたアラビアンな服。意匠を施した眼鏡。
「さあっ! パレードの時間よ!」
「意欲満々だな」
三鬼も同じような装い。違う点はアラジンパンツとズボン、それと三鬼が着けているマントだろうか。
「だってメインイベントじゃない! これで燃えないはずないじゃん!」
「おまえらしいな」
「二人とも、お待たせ」
「ちゃんと来てあげたわよ」
「黄帝に美々衣!」
こちらは白い猫のコスチュームに、ハロウィンを意識したチョコレートのリボンと、薄茶・薄桃のワンピース。なぜか某テーマパークのキャラクターを連想させられる。
「私たちは三二一たちと一緒に踊っていればいいのね?」
「ああ。振り付けは簡単だから、覚えてるよな?」
「もちろんよ。あなたたちも、間違えないようにしてよね?」
「発案者のあたしが間違える訳無いじゃん」
言い合いも、今は自身を鼓舞する雄叫びと同義。
「でも、何より忘れちゃいけないのは……」
一つの間、目を合わせて以心伝心。
『楽しんでいる笑顔』
ハイタッチを交わし合う。
「よしっ、これで怖いもの無し! やってやろうじゃない!」
徐々に大きくなっていくメロディ、鼓動、期待。
四人は水上に姿を現した。
『わあああぁぁぁぁーーー!!!』
遥かに上回る歓声。
それに乗じて人があちこちから集まってくる。
三二一たちは見回すと、
『ハロウィンパレードの開催よ(だぜ)!』
四人で高らかに宣言した。
――――
「割といい場所が確保できたね」
片手にデジタルビデオカメラを抱えたエースはパレードの様子を録画し始めた。
今、この瞬間を収めておく。
そうすればまた、この時を思い出すことが出来る。
「リリアとメシエも二人でこの光景を眺めているだろうか……おや?」
思いを馳せ、たまたまカメラのレンズを向けた先に、紳士然と誘う怪人の姿が。
「こんばんわ」
顔半分を覆う仮面に黒マント。舞台の怪人をモチーフにした装いに、ルシアはその人が誰だかわからなかった。
「あなたは?」
「神条 和麻(しんじょう・かずま)だよ」
仮面を外して素顔を曝す。
「和麻さんだったのね。その格好はどうしたの?」
「バイトでスタッフをしてるんだ。似合っているか?」
マントを翻し、おどけてみせる。
「ええ、とっても」
クスクスッと笑うルシア。その相貌には影などなく、
「ルシアは楽しんだみたいだな」
「うん、皆で色んなところを回れて楽しかったわ」
和麻もつられて笑顔を見せる。
そこに丁度、開催宣言。
『ハロウィンパレードの開催よ!』
「おっと、こうしちゃいられないな」
和麻は仮面を付け直し、
「どうしたの?」
「お嬢さん、この後のパレードを一緒に見ませんか?」
ルシアへ頭を垂れて一礼。
毅然とした態度は服装と相俟って社交場の紳士と見まがうほどだったが、「なんて、柄じゃないな」と顔を上げると、
「ルシア、パレードを一緒に見ないか? もちろん、夏來や皆も一緒にさ」
普段の調子で再びルシアに誘いの言葉を掛け直す。
やはり、場の空気はこちらだろう。
「パレード?」
「この遊園地のメインイベントさ。踊ったり、お客さんと触れ合ったり、光と音の共演だな」
内容を説明する和麻。
「それに今回はハロウィンだ。仮装もある」
「あなたはパレードに出なくていいの?」
「今は俺、休憩中なんだ。それにパレードはパレードで人を割り振ってる。心配しなくていい」
「そうなんだ。わかった、皆を呼んでくるね」
楽しそうに駆けて行くルシア。
「さてと、俺も他のやつらに声を掛けに行くか」
パレードはもう始まっている。
時間は少ない。
「やばっ、急がないと」
人の間を走る怪人の姿は、後に話題となった。
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