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デスティニーパレードinニルヴァーナ!

リアクション公開中!

デスティニーパレードinニルヴァーナ!
デスティニーパレードinニルヴァーナ! デスティニーパレードinニルヴァーナ!

リアクション

「いらっしゃいませー。はい、これですか? これは『まりモン』のぬいぐるみですねぇ。まりモンっていうのは。黒くてふわふわしたまりも似の生き物だそうです。ぬいぐるみもふわふわしてますねぇ……」
「りゅーき、恍惚に浸ってないで、真面目に接客してくださいー」
「ごめんごめん」
 人が少なくなったとはいえ、パレード中でも来客はある。
 そのため、店番に残った瑠樹とマティエは変わらず接客を続けていた。
「でも、りゅーきの気持ちもわかります」
 マティエも店主がパレードに行っているとなると、想像し、ゆる族として憧れを抱く。
「たいむちゃん、きっと可愛くパレードしてますよね」
「メルヴィア少佐も、どうしてるかねぇ」

――――

 パレード出場者待機室。
 ヴォルト・デスティニーは嬉しげにパレードをモニタリングしていた。
「このままパレードが成功すれば……」
 今日を切っ掛けに再建も夢物語ではなくなった。
「ハロウィンパレード……甘いな。空京で大人気の某店舗のドーナツより甘いぜ!」
 そんな心境のデスティニーへ、何を思ったのかエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は詰め寄る。
「なあヴォルトさんよ」
「なんだね?」
 椅子に座ったデスティニーの肩をがっちりと抱くと笑顔で交渉。
「アトラクションと筋肉、どっちがいい?」
「君は何を言って……」
「だから、俺がパレードを盛り上げてやるって言っているんだ。この筋肉で!」
 いつもの筋肉馬鹿だった。
「なっ、三二一ちゃんたちを止めろというのか!? それはできない!」
「別に止めるわけじゃないぜ。筋肉で燃え上がらせる、それだけだ」
 意気揚々とポージングを決めるエヴァルト。それだけでは足りないのか、自前のエキスパンダーやダンベルを持ち出し、筋トレまで始めだす。
 それほどまでに協力してくれる心をデスティニーは無下にはできなかった。
「わかった……許可しよう」
「そうかそうか、筋肉か! よく分かってるな!」
「いたっ、痛い!」
 バシバシッと背中を叩き、
「それじゃ早速行ってくるぜ!」
 颯爽と去る。
「本当に大丈夫か……?」
 やはり、一抹の不安は拭いきれない。

「さあっ、行くぜ! 筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい!」
 これは踊りといっていいのだろうか。
 両手両足を揃えて左右に揺り動かす。
 ただそれだけの行為。
 それでもやっているエヴァルトの表情は恍惚としている。
「わ、わふーっ!? お兄ちゃんが、お兄ちゃんなのです!」
 第一の被害者、ミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)
 意味のわからない叫びだが、とても意味が通じるのが不思議だ。
「ほら、恥ずかしがるなって! やってみりゃわかる、今なら筋肉旋風が巻き起こせそうだろ!?」
「やっぱり、のうみそきんにくなのですーっ!」
「俺は筋肉の申し子だ、その言葉も褒め言葉だぜ! ほれ、ミュリエルも筋肉筋肉ー!」
「うぅ……筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい! なのですーっ!」
 短い葛藤の末、ミュリエルも参加。
「ほえー、エヴァルトがまーた筋肉騒ぎやってるねー」
 第二の被害者、ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)
「おうっ、ロートラウト! おまえも来い!」
「何か知んないけど、とりあえず面白そうだからのっちゃおう!」
「流石ロートラウトだぜ!」
「筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい!」
 自ら旋風へ足を踏み入れる。
 第三の被害者、デーゲンハルト・スペイデル(でーげんはると・すぺいでる)
「な、何だお前ら!?」
「まだまだ行くぜ! 筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい!」
『筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい!』
「ふざけているのか? ならば……」
 杖を取り出し中段に構え、
「メーン! メーン! メーン! マーン!」
 頭を叩く。が、
『筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい!』
 彼らは止まることを知らない。
「く、来るな! う、うわ、うわあああぁぁぁーーー!!!」
 デーゲンハルトも飲み込む筋肉旋風。
『筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい!』
「よっしゃお前ら! 次はあっちだ!」
「え、私?」
 指差した先には香菜たちを呼びに行こうとしていたルシア。そこから事態は暗礁に。
「あ、でも、面白そうだわ」
「一緒に叫ぶぜ、さん、はいっ!」
『筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい!』
「おーい、ルシア。寿子とおやっさんを連れてきた……って、なんだこりゃ?」
「あ、和麻さん。面白そうだから混ざってみたの」
「ルシアちゃん……それ、楽しいの?」
「遠藤さんも一緒にやろうぜ!」
「えっ、私は……」
「おやっさんもどうだい?」
「だから、オレをおやっさんと呼ぶなと何度言ったら……」
「和麻と言ったか、おまえも一緒にどうだ?」
「いや、まあ、皆がやるなら……」
「そこで隠れてる聆珈少佐!」
「き、気付くな、馬鹿が」
「ほれ! 水上の三鬼と三二一も!」
「えっ、あたしも!?」
「こっちにも飛び火かよ」
「着ぐるみ着ているキロス!」
「げっ、気付かれてやがる」
「うさぎの着ぐるみさん!」
(私はウサギさん。夢を壊さないため声は出さない。でも、皆がやるなら……いいかも)
「最後はたいむちゃん!」
「私もいいの?」
「さあ、皆さん、ご一緒に!」
『筋肉いぇいいぇーい! 筋肉いぇいいぇーい!』
「こうしてニルヴァーナは筋肉に包まれ――」
「あなたたち、何馬鹿やってるの?」
 ただ一人、染まらない香菜。
「茶番はこのくらいにしなさい!」
『ごめんなさい……』
「聞こえないわ」
『ごめんなさいでしたー!』
 一連の騒動は、こうして幕を閉じた。