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デスティニーパレードinニルヴァーナ!

リアクション公開中!

デスティニーパレードinニルヴァーナ!
デスティニーパレードinニルヴァーナ! デスティニーパレードinニルヴァーナ!

リアクション

 軽快な音楽。
 身体に響くリズム。
 アレグロの速さが妙に心地よく、気分も楽しくなっていく。
 皆が中央の湖面に立つ三鬼たちに注目する中、湖を囲う通りを一陣の風が駆け抜ける。
「ようこそ、デスティニー・セレスティアへ!」
 鹿の姿のウィーラン・カフガイツ(うぃーらん・かふがいつ)に跨り、本宇治 華音(もとうじ・かおん)はパレードの先陣を切った。
 ウィーランには蛍光塗料が塗られ、電飾を施し、対岸からでもその存在は文字通り輝いている。
「私たちがニルヴァーナでの楽しいひと時をお手伝いします!」
 意気込みを声に出し、パートナーを叱咤する。
「私たちがトップバッターだよ。ウィーラン、張り切っていくよ!」
「もちろん! 派手にいっちゃうもんね!」
 決意の表れか、前足を上げて嘶く。
 足が着地すると同時、全速力で突進をかます。
「ちょ、ちょっと!? ウィ、ウィーラン、危ない!」
「平気平気! このくらいどうってことないもん!」
 ウィーランはそう言うが、観客は多い。
 その中を自由奔放に動くとなると、華音も気が気でない。
「どんどん進んじゃうよ! ……って、あれは」
 お父さんに肩車された女の子。
 両手を前に出してばたつかせ、湖上へと求めている。
 そのせいか体制が悪くなった。
「危ない! ウィーラン!」
「任せてよね!」
 華音が叫ぶや否や、ウィーランも更に加速。
 前のめりに湖へと傾く親子。
 周りもそれに気付いた瞬間、滑り込むように支えに入った華音たち。
 間一髪、惨事は免れた。
「あ、ありがとうございます!」
 お礼を言う父親の上で何が起こったのかわからない女の子だったが、
「可愛いお嬢さん、合言葉は?」
 華音が優しく語りかけ、そっと掌を掲げると、
「とりっく、おあ、とりーと!」
 パチンッ。
 二人は笑顔でハイタッチを交わした。
「良く出来ました。これ、ご褒美のお菓子です」
 お菓子を手渡し、頭を撫でてあげる。
「わあっ! ありがとう、お姉ちゃん!」
 最初は手元を見つめていた女の子の目が、キラキラと輝きを増して華音を見つめる。
 その輝きを華音は知っていた。
 かつて自分も感じた感情。
 それが元になり、今、この舞台に立っているのだから。
 それは決して下ではなく、見上げる思い。
「パレードはまだまだこれからです! 皆さん、楽しみましょう!」
 配るお菓子を空に投げた。
 ここに居る子供達が、天に手を捧げるように。
 憧れを抱けるように。


 それと共に見上げた夜空。
 上空では機動要塞伊勢が浮遊していた。
 ライトアップしながら空を泳ぐ姿は、宛ら飛行船を思わせる。
 それは、外壁にスポンサーの名前やステッカーが張られ、広告塔としても活動しているからでもある。
「注目も浴び、広告収入もいただける。一石二鳥であります!」
 操縦席では笑いが止まらない葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が左手で団扇を仰ぐ真似をしていた。
 そんな主人に溜息を漏らし、せっせと運行予定を確認していたコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)
「――いえ、何でもありません。はい、問題ないです。このまま進行します。はい、はい、わかりました。次の合図で行います」
 通信機の接続を切ると、吹雪に報告する。
「今の所、順調に進んでいるわ。今後の予定にも変更はないそうよ」
「すべて順調、順調」
 顔がどんどんふやけていく。
「綺麗なものを見上げてても、中身がこれじゃ……」
「世の中、綺麗事だけでは立ち回れないのであります」
 羨望を抱いていた方、ごめんなさい。
 コルセアは心の中で謝った。
「とりあえず、甲板にも連絡を取るわね」
 気を取り直し、艦内通信を繋げる。
「そっちの準備はどう?」
『問題ないのだよ』
 返答をしたのはイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)だ。
『風向きよし、天候もよし、唯一悪いのは、我への待遇であろうな』
 それはそうだろう。
 曲がりなりにも飛行中。その甲板に立たされているのである。
「そこに関しては、自分達はどうでもいいのであります」
「同感だわ」
『くっ、薄情な奴らなのだよ……』
 だが、誰かがこの役割を担わなければならないのも事実。その適任がイングラハムなのだ。主に雑用係として。
「あ、きっかけがきたわ。それじゃ予定通りお願いね」

「まったく、人使いが荒いのだよ」
 甲板でイングラハムはぼやいた。
「この季節に上空がどれだけ寒いか分かっていないのであろうな」
 日も沈み、気温は下がる一方。
 飛行と気流で風は止むこと無く吹きつけ、体感温度は更に下がる。
「こんな状態で満足に仕事がこなせる訳がなかろう」
『また半殺しにされたいのでありますか?』
「いえ、全然、全く、これっぽちも思っていないのだよ。あー、やるきでてきたのだよー」
 感情のこもらない声。
 このままでは任務に支障がでるかもしれない。危惧したコルセアは諭しにかかる。
『順調にいけば、あなたの好きな黄金色のお菓子が手に入るわ。でも、あなたがここで渋るようなら、スポンサーから貰えるのはバッシングと懲罰になるわよ?』
『その通りであります。更に自分からもお仕置きが加わるのであります』
「それはもう脅迫なのだよ……だが仕方ない、心得たのだよ」
 イングラハムは手近の導火線に着火。火はそれを伝って、円柱の筒へ。
 ひゅーーー……、ドンッ!
『たーまやー』
『かーぎやー』
 夜空に大輪の花が咲く。
 鮮やかな光がデスティニーCの客を魅了する。
「ふっふっふ、これで誰も文句を言うまい。しかし、スイッチ式着火装置を買えばもっと楽になるものを」
『あなたの力量を信じてるからだと思うわ』
「そう言われると鼻が高いのだよ」
『余計な予算を割かないだけであります』
 ここは乗せとかないと、と嗜めるコルセアだったがそれは杞憂。さっきの一言だけでイングラハムは気を良くしていた。
「さあっ、我の足技をとくと見るがいい! 黄金色のお菓子よ、待っているのである!」
 長い足を目一杯使い、次々に着火していく。
「おおっ、勇が言っていたのはこの機会ですね!」
 甲板に現れたイングリッド。
「どれ、ワタシも混ざって自爆を――」
『不純な輩が居るのであります! これは【艦載用荷電粒子砲】の試験に――』
『す、ストップよ! それはダメ! ここで発射したら、パレードも何もかも台無しだわ! それに、彼は甲板に居るのよ。どうやって射線を向けるの?』
『ぐぬぬ、打つ手無しでありますか……』
「我に任せるのだよ」
 イングリッドの前に立ちはだかるイングラハム。
「いくらでかい要塞だからって、ここで爆発は困るのだよ。違う場所でやってもらおう」
 そうして自爆寸前のブリジットを抱え、夜空へ飛び出す。
「たーまーやー!」
 ドンッ! ティウンティウンティウン……。
 自爆できて感無量の声は、爆音でかき消された。
『イングラハム……あなたの犠牲は無駄にはしないわ』
『やれやれ、汚い花火であります』
『ロック○ンか!』
 後日、イングラハムとイングリッドはなぜか復活していた。
 科学の力、恐るべし。