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五精霊と守護龍~溶岩荒れ狂う『煉獄の牢』~

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五精霊と守護龍~溶岩荒れ狂う『煉獄の牢』~

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「……もう、追ってこないかな?」
 人一人やっと入れるような路地を進み、ようやく皆が落ち着ける場所を見つけたリンネ一行は、もれなく床にへたり込む。暑さ、そして戦闘による疲弊は、彼らの身体を相当な疲労状態に追い込んでいた。
「そうだ、博季くん! 怪我、大丈夫!?」
 リンネが博季の元に駆け寄る、応急処置を受けた博季はとりあえず動けるものの、全力を出すことは厳しい様子だった。
「リンネさん……僕のことには構わず、調査を続けてください。
 炎龍と分かり合うために……もうこれ以上、戦わなくて済むように……。今それが出来るのは、リンネさんです。
 分かって……もらえますよね?」
「…………。分かったよ、博季くん。私、博季くんの分まで頑張るからね」
 博季の思いを汲んだリンネが、自らを奮い立たせて頷く。負傷した博季にはモップスが付き、リンネへは幽綺子とコードが付く。
「あの子なら大丈夫。私達は出来る事をしましょ。ここが頑張り所よ、リンネちゃん」
「うん。手がかりを見つけて、炎龍さんに会って、異変を解決する。そのために私達は、ここに来たんだ」
 二人を連れ、リンネが入ってきた道とは別の道、まだ行っていない道の先へと行く。

「むぅ……私が付いていながら、不覚を取った……」
「いいえ、ヴィリーはあの場面での最善を尽くしています。今は休んで、これからに備えてください」
「そうそう! こっからはボクも頑張るよ!」
 人間状態に戻ったグリューエントが、主を完全に守り切れなかったのを悔やむのをルイーザとスクリプトが労う。
「……これで、大丈夫なはずです。後は地上に戻ってから、ですね」
「うん、そうだね。ありがとう、フィル君」
 フィリップに応急処置を受け、とりあえず戦えるようになったフレデリカの目に、探索に向かうリンネたちの姿が映る。
「フィル君、リンネさんに付いていかなくていいの?」
「えっ? ……でも、フリッカさんを置いていくわけには……」
「私のことは気にしないで。フィル君がここに来た目的は何? それを達成するために必要なことを一番に考えて」
 フレデリカに言われ、フィリップはここに来た目的を改めて思い返す。
「……僕は、炎龍という存在に会ってみたい。そして出来れば、今イルミンスールを襲っている異変を解決して、炎龍と交流を結びたい」
 そう口にすれば、フレデリカは微笑んで、「じゃあ、私はそれを応援する。……行ってらっしゃい、フィル君」と答える。
「はい、行ってきます、フリッカさん。……あ、そうだ」
 何かを思い付いたフィリップが、はめていた魔法石の指輪の一つを外すと、フレデリカに持たせる。
「これ、持っていてください」
「えっ? でもこれ、大切な物じゃ」
「ええ、そうです。だから調査が終わったら、また受け取りに来ます。
 ……僕が無事にフリッカさんの所に帰ってくるのを、願っててくれたら……嬉しいです」
 言った後で恥ずかしくなったのか、フィリップが背中を向けると、フレデリカの返事を待たずに駆け出しリンネの後を追う。
「フィル君……」
 渡された指輪、紅い石の嵌められたそれを、フレデリカは大切に握り締める。
 ――お願い。無事に私の所へ、帰ってきて――。

(あはは……もしリンネちゃんとフィリップ君が弱気でいたら、背中を押してあげようと思ったけど……その必要はなかったわね。
 ……さて。私達はここで、二人の“想い人”を守りましょうか)
 一部始終を見届けたウィンディが、自らのやるべきことを定める。自分と公豹、リュートはまだ戦える。花音も思ったほど怪我は浅く、もう歌うこと自体に影響はない。
(……問題は、この状況で歌うことが出来るかどうか、よね。こればっかりは花音次第かしら)
 心に呟き、ウィンディが花音、次いでフレデリカを見る――。