リアクション
ツァンダだよ 「来ましたね……。小ババ様ですよね。待ってましたー」 「こばっ?」 ツァンダに着くなり、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)さんという人に声をかけられて、小ババ様がちょっと戸惑いました。なんでも、六本木通信社の記者として密着取材をさせてほしいのだそうです。イルミンスールからの広報を見て、ずっとツァンダで待ち構えていたらしいです。 「こ、こば……」 普通なら、なんでもないのでしょうが、ちょっと最近いろいろ追いかけまわされてしまった後です。せっかくお祓いもしたというのに……。 「こばあ!」 小ババ様は、思わず逃げだしてしまいました。 「ああっ、待ってくださあい!」 あわてて六本木優希さんが追いかけます。ところが、偶然道を歩いていた平 武(たいら・たける)さんという人にぶつかって転んでしまいました。 「っ……気をつけてください」 なんとか立ちあがると、六本木優希さんは小ババ様を追いかけていきました。 「いったい、今のはなんだったのかなぁ」 ちょっと驚いて、平武さんがつぶやきました。 「こ、こばー!」 「待ってくださーい!」 追いかけっこは続きます。 「まだまだイコンプラントだって現役だよ」 「そうですね。完成品のクェイルの生産は終了しましたが、まだまだ保守部品の需要はありますから」 道を歩きながら、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)さんという人とベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)さんという人が何やら相談をしています。 「プラヴァーの生産もしっかりとしなくちゃいけないよね。最近は、各校で第二世代をどんどん作ってるみたいだけれど、プラヴァーにはまだ可能性があるんだよ。新しい追加装備を作れば、まだまだ……。あれっ、あれはなんなんだもん?」 「こばー」 六本木優希さんに追われた小ババ様専用イコンが、小鳥遊美羽さんのそばを猛スピードで通りすぎていきました。 「あれよ、あれを新しくプラヴァーに装備すれば……」 「ランドセルをですか!?」 思わず、ベアトリーチェ・アイブリンガーさんが聞き返しました。 ★ ★ ★ 「こばー」 「待ってくださーい」 さらに小ババ様が逃げ回っていると、なんだか近くの倉庫で爆発音が響きました。 「こいっ! ネクロ・ホーミガ!!」 鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)さんという人が、光につつまれたカードを投げました。大きくなったカードが作った光の壁に、鬼龍 白羽(きりゅう・しらは)さんという人が飛び込んでいきます。その姿が、一瞬にして漆黒の鎧に変わりました。次の瞬間、体当たりするかのように鬼龍貴仁さんにぶつかると、その身体を鎧の内部に取り込んでしまいました。 「こばあ♪」 思わず、小ババ様が拍手します。 「これが……俺の必殺技だ! El colmillo de la hormiga inagotable!」 なんだか暴れているおっきな機晶姫さんに鬼龍貴仁さんが鉄拳を叩き込みました。その一撃で機晶姫さんにでっかい穴が開いて止まりました。 『こ、これは、直せないんじゃ……。どうするんですか、修理代請求されたら』 「えっ? ははははは……」 鬼龍白羽さんに突っ込まれて、鬼龍貴仁さんがごまかしました。 ★ ★ ★ 「待ってー」 「こばばばばば……」 「えっ、戻ってきた!?」 六本木優希さんに追いかけられている小ババ様が、歩いていた平武さんを押しのけて逃げて行きました。 「ひゃああぁぁぁ」 「きゃあ!?」 クルクルとバレリーナよろしく回転した平武さんが、また後ろから来た六本木優希さんとぶつかってもんどり打って倒れます。 なんとか六本木優希さんを引き離した小ババ様は、手近な家に逃げ込みました。木造二階建のアパートのようです。表通りから、アパートの裏庭に回り込んで身を隠します。ところが……。 「ふふ……、可愛い寝顔。えっ!?」 庭におかれたベンチで新風 燕馬(にいかぜ・えんま)さんという人を膝枕していたサツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)さんという人が、小ババ様に気づきました。 「見ました?」 「こば」 サツキ・シャルフリヒターさんに聞かれて、小ババ様がうなずきました。 「は、恥ずかし……」 「ううん、何かあったのか……。なんで、俺は膝枕されいてる!?」 サツキ・シャルフリヒターさんが軽く身を捻ったので、新風燕馬さんが目を覚ましてしまったようです。どうやったかは知りませんが、寝ている新風燕馬さんを、サツキ・シャルフリヒターさんが膝枕に持っていったようです。 「こばあ」 これ以上邪魔してはまずいと思って、小ババ様はぺこりと頭を下げると、あわててその場を後にしました。 ★ ★ ★ 「こばあ」 今度は大丈夫かと、別の家の庭に小ババ様は隠れました。 「小ババ様ー、どこですかー」 六本木優希さんの声が聞こえます。ピーンチです。 「誰かいるんですか? 小ババ様!?」 寝間着代わりのジャージ姿の杜守 柚(ともり・ゆず)さんという人が、小ババ様を見つけました。 「ええっと、上がっていきます?」 「こばこば!」 なんか変だなと思った杜守柚さんに誘われて、小ババ様は二つ返事でお家に入れてもらいました。これでしばらくは大丈夫そうです。 部屋には、何やらたくさんの服が床の上に広げられていました。ファッションショーでもするのでしょうか。 「気になります? 小ババ様は、どの服が一番いいと思います?」 どうやら、着ていく服を選んでいたようです。 「こばー……。こばこば」 魔女の短衣のような物はなかったので、若草色のワンピースを選ぶことにしました。 「それがいいですか。じゃ、着てみますね」 杜守柚さんが、小ババ様が選んだ服に着替えていきました。うん、なかなかに似合います。 「誰か来たのかい?」 何やら杜守柚さんの部屋から声が聞こえてくるので、杜守 三月(ともり・みつき)さんという人が様子を見に来ました。 「小ババ様? 噂には聞いたことがあるけど、ほんとにちっちゃいなあ。ジュース飲む?」 「こばあ!」 もちろん、断る必要はありません。 「メールは出しておいたよ。うーん、そのワンピース、ちょっとスカートが長すぎないか? 動きにくそうだけど」 「少し、お端折りした方がいいかしら……」 杜守三月さんに言われて、杜守柚さんが鏡の前でちょっとスカートを部分を持ちあげてみました。 「こばばーばばばばば」 忙しそうだったので、ごちそうさまを言って小ババ様は杜守柚さんの家を後にしました。 |
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