リアクション
ヒラニプラだよ そろそろヒラニプラが近いと思ったときです。魔列車が大きくカーブしました。 「こ、こばあ!?」 イコンが魔列車の屋根の上で大きくずりっと滑りました。遠心力で小ババ様のイコンが川にぽっちゃんと落ちます。そのまま小ババ様専用イコンは川の中を流されていきました。 「おっと、大物だぜ!」 強い引きに、源 鉄心(みなもと・てっしん)さんという人が釣り竿のリールを勢いよく回しました。 「お、重い……」 「大物ですか。焼いて食べましょうね」 ティー・ティー(てぃー・てぃー)さんという人が、獲物がかかったのに気づいてペガサスのレガートさんの所から走ってきました。 「ああ、ティー、待つのですわ。痛、痛たた……」 寝っ転がっていたティー・ティーさんにちょっかいを出そうとしていたイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)さんという人が、レガートさんに髪の毛を囓られて悲鳴をあげていました。 「よし、あげるぞ!」 源鉄心さんが、力を振り絞って釣り竿をあげました。ティー・ティーさんも、源鉄心さんにピッタリとくっついて力を合わせます。 ざばあああ……。 釣り上げた獲物……釣り針に引っ掛かった小ババ様専用イコンが水の中から現れました。 「これは、食べられますか?」 『こ、こばあ!』 ティー・ティーさんの言葉に、小ババ様が悲鳴をあげました。この子、本気で食べそうです。 「あー、冗談だから。食べないから」 あわてて、源鉄心さんが訂正します。 「そうですよね、食べるならイコナちゃんを食べれば……」 ティー・ティーさんがそう言いかけたときです。 「あーん!」 イコナ・ユア・クックブックさんが、レガートさんにたべられそうになって逃げてきました。ちゃんと前を見て走っていません。 「おい、イコナ……うわっ」 どん! ぽっちゃん! イコナ・ユア・クックブックさんの体当たりを受けて、全員が川に落ちてしまいました。 ……。 「まったく、酷い目にあったぜ。今日ぐらいは、ヒラニプラで何も事件が起きないって思って釣りに来ていたというのに……」 「こばー」 「レガートさんがいけないんですわ」 「レガートさんは、悪くありません!」 川から上がって服を木にかけて乾かしながら、一同は今まで釣り上げた魚を焼いて御飯にしました。 ★ ★ ★ お腹がいっぱいになってシャンバラ教導団へとむかった小ババ様ですが、ちょっと道に迷ってしまいました。 イコンは、乾くようにと日なたに干してあります。 「こばあ?」 道を聞こうと、小ババ様は適当な家に入っていきました。鍵は開けっ放しです。少し不用心です。 家の中は人の気配がしません。留守でしょうか。 いいえ、奥の部屋に人の気配がします。 ドアには『刀真の部屋』と、女の子の字で書かれた看板がついています。 小ババ様は、そっと中を覗いてみました。 「むふっ♪ むふっ♪ むふふふふふふふふふふふふふ♪」 なんだか、怪しい声がします。玉藻 前(たまもの・まえ)さんという人のようです。 玉藻前さんは、誰かのベッドの上で、嬉しそうにゴロゴロしています。ちょっと変です。 「こばばばー!」 小ババ様は、思わず変態だーっと叫んでしまいました。 「だ、誰である?」 さすがに、玉藻前さんが気づきました。 「こ、小ババ様!? み、見た?」 「こばっ……」 思わず、小ババ様が小さくうなずきます。 「ふふふふふ、はははは……。こうなれば……。どれ、かわいがってやろう。我が九尾を以て、終焉を招く!」 「こ、こばー!!」 ちゅどーんっと、部屋が吹っ飛びました。滅茶苦茶です。かろうじて、小ババ様は脱出できたようです。 「ははははは、刀真には、ゴキブリを退治したと言っておこう……」 引きつりながら、玉藻前さんがつぶやきました。 ★ ★ ★ 「こばこばー」 酷い目に遭いました。さすがにちょっぴり怪我もしたようです。 痛いので、シャンバラ教導団の保健室にむかうことにしました。 「はい、誰ですかー? 小ババ様? 怪我したのですか」 保健室にいた高峰 結和(たかみね・ゆうわ)さんが、保健室で小ババ様を迎えてくれました。教導団に出向中のようです。 「大丈夫です、今治しますね」 小ババ様のお尻の火傷に薬を塗りながら、高峰結和さんが言いました。 「こばー」 うん、もう痛くないと小ババ様が答えます。 「気をつけてくださいね。また怪我したら、いつでも手当てしますからね」 高峰結和さんに心配されながら、小ババ様は保健室を後にしました。 |
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