リアクション
エリュシオン帝国だよ 小ババ様は、ついにエリュシオン帝国の首都にやってきました。そこには、巨大な世界樹ユグドラシルがそびえ立っています。太さも高さもイルミンスールの十倍はありそうです。見あげてみても、てっぺんがどこにあるのか分かりません。 「でっかいよね。さて、どこで修行できるんだろう……」 「誰かに聞いた方が早いのではないか?」 呆然と上を見あげて首が痛くなったらしいカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)さんに、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)さんが言いました。二人とも、なんでこんな所にいるのでしょう。 「ああ、そこの人……、人? 機晶姫? ロボット?」 ちょっとジュレール・リーヴェンディさんと小ババ様専用イコンを見比べてから、カレン・クレスティアさんが言いました。一緒にするでないと、ジュレール・リーヴェンディが軽くカレン・クレスティアさんを睨みつけます。 「凄いなあ、案内ロボットがいるなんて、さすがはエリュシオン帝国」 『こばあー!』 「えっ、えっ、小ババ様!?」 小ババ様専用イコンを、世界樹の案内ロボットと勘違いしていたカレン・クレスティアさんが、中に乗っている小ババ様に遅ればせに気づいて目をぱちくりさせました。 どうやら二人はここに魔法修行に来たみたいなのですが、さすがはお上りさんです。着いた早々に迷子になってしまったようなのでした。かといって、小ババ様だってユグドラシルは初めてです。おんなじお上りさんですから、とても案内などできません。 相談して、小ババ様たちはとにかく世界樹の中に入ってみることにしました。 世界樹ユグドラシルの巨大な扉をくぐると、なんだか変な感じがしました。急に身体が斜めになったような感じです。 視界が開けます。そこは円筒形の巨大な空間で、あちこちでキラキラと目映い光が輝いていて、世界樹の中の空洞だというのに外と同じように明るい場所でした。 「あれれ、ここって世界樹の中だよね。いつの間に世界樹が倒れちゃったの?」 まっすぐのびる町並みに、カレン・クレスティアさんがちょっと驚きました。よく見ると、天井にも町があるのに、家が落っこちてきません。 「重力の方向が変わっているようだな」 冷静に状況を分析してジュレール・リーヴェンディさんが言いました。 成熟した世界樹のユグドラシルさんは、中に巨大な空洞が広がっていたのです。そして、その壁に様々な建物が建っているのでした。それらを有効に使うために、ユグドラシルさんの力で重力が中心から幹の外側にむかっています。まるで、密閉型コロニーそのものの構造でした。 「こばー」 「うん、凄いね」 しばし見とれた後、修練場を見つけた小ババ様たちは、そこへと入っていきました。 ティル・ナ・ノーグだよ エリュシオン帝国でちょっと修行をした小ババ様は、心身共にさらに屈強になってその先の土地、ティル・ナ・ノーグにまでやってきました。 ここは、花々が咲き乱れる、とても美しい地です。 ポカポカふわふわ進んで行くと、騎狼を連れた旅の人を見かけました。イルミンスールの水橋 エリス(みずばし・えりす)さんです。ずいぶんと遠くにまで来ているものです。小ババ様と同じように旅行でしょうか。 「話には聞いていましたが、ずいぶんシャンバラとは植生が違うんですね。さすがは、花妖精の故郷と言ったところでしょうか」 ここハイ・ブラゼル地方には、花妖精さんの村があります。水橋エリスさんが以前来たときとは咲いている花も違っていて、また別の趣があるようです。 「えっ、小ババ様?」 思いもかけない場所で見知った顔を見て、水橋エリスさんが驚きの声をあげました。 「まさか、小ババ様も、今後のことを考えて一人旅ですか?」 水橋エリスさんが聞きました。 小ババ様としてはただの好奇心の旅なのですが、水橋エリスさんの方は、これからの進路のことについて一人静かに考えたいがための旅のようです。 確かに、花妖精さんの村は、のんびりと考え事をするのには最適かもしれません。最適すぎて、何もかも忘れてしまいそうですが……。 このままだと、自分も花になって花壇の中で眠ってしまいそうだったので、ひとしきり狼さんのもふもふで遊ばせてもらった小ババ様は、お礼を言って先を急ぎました。 |
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