校長室
夏休みを取り戻せ!全2回/第2回
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第6章 夏に戻るルクオールと、「冬の女王」イルミンスール講師になるのこと 優菜の優勝を誰もが確信する中、ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)とパートナーのドラゴニュート、ガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)、そして、狭山 珠樹(さやま・たまき)が会場に走りこんできた。 「アーデルハイト様! 実は、エリザベート校長と「冬の女王」がアーデルハイト様のために作ってくださったアイスがあるんです!」 「我らも多少は手伝ったが、エリザベート校長が自ら作ったものだ。食べてはもらえないだろうか」 「エリザ様自作のアイスクリームでアーデル様をぎゃふんといわせよう、ホントは仲直り作戦ですわよ!」 ジーナとガイアスが口々にいい、かわいいモヒカンシスターの珠樹も付け加える。 「なんじゃと、エリザベート、いつのまにそんなことをしておったのじゃ?」 「大ババ様を驚かそうと思って、「冬の女王」に冷やすのを手伝ってもらっていたのですぅ」 驚くアーデルハイトに、エリザベートは照れくさそうに言う。 「エリザベート様が頑張って作ったアイスですよ。「冬の女王」の力も借りて、これで本当に仲直りできるといいですね」 「エリザベート校長は、アイス作りにおいては……普通の子どものようであったな」 ジーナが、アイスの容器をエリザベートに渡し、ガイアスが苦笑する。 「ありがとうですぅ!」 エリザベートはアイスの容器を受け取ると、アーデルハイトに差し出した。 「わたしも、アイス大会に参加しますぅ。大ババ様、食べてみてくださぁい」 「エリザベート……」 アーデルハイトは感極まった様子でアイスを受け取ると、スプーンで口に運び、そして、叫んだ。 「ぎゃふんっ!!」 地面にひざまずくアーデルハイトに、エリザベートや珠樹が駆け寄る。 「ど、どうしたんですか、大ババ様ぁ!?」 「まさか、本当に『ぎゃふん』と言わせることになるとは、予想外でしたわ……」 咳き込みながらも、アーデルハイトはエリザベートのアイスを食べ続ける。 「ちょ、ちょっと予想の斜め上を行く味だっただけじゃ! 私は……私は、エリザベートのアイスに投票するぞ!」 アーデルハイトの宣言に、会場は一瞬静まり返り、その直後、割れるような拍手に包まれた。 「やりましたわ! 作戦成功ですわよ!」 珠樹はエリザベートの手を取って、アーデルハイトの手に重ねる。 ジーナとガイアスも、「冬の女王」と視線を交わして喜んでいた。 「では、「アイスバトル2019inルクオール」の優勝者は日奈森 優菜さん、アーデルハイト様特別賞はエリザベート校長に決定です!」 大会運営委員長の羽瀬川 セトが締めくくり、優菜にはトロフィーが授与される。 「いいところはエリザベートさんに持っていかれましたね」 優菜は笑顔を浮かべて、エリザベートとアーデルハイトを見つめた。 「優菜さんのアイスは、『ルクオールの夏』と名付け、新しいルクオールの名物にしたいと思います」 セトの宣言で、ルクオールに新たな名物ができたのであった。 「あなたたちのお話ですが、考えてあげてもいいですぅ」 沢渡 真言とミツバ・グリーンヒルに、エリザベートが言う。 「え、じゃあ、「冬の女王」をイルミンスールの講師にしてくださるんですね」 真言に、エリザベートがうなずいてみせる。 エリザベートは、ジーナの提案で、「冬の女王」にアーデルハイトのためのアイス作りを手伝ってもらったのを、感謝しているのだった。 三笠 のぞみが、改めて、「冬の女王」を勧誘する。 「学校はとってもにぎやかで、いつも大勢の仲間と一緒にすごせるし、図書館にはたくさん本があるから知識の探求もできるんだよ。社会貢献も貴族のたしなみだよね」 以前、「冬の女王」が、「かわいい子をナンパするのは貴族のたしなみ」と言っていたのにあわせて、のぞみはにっこり笑ってみせる。 「この催し……雪合戦も、アイス大会も、とても楽しかったぞよ! だから、そなたたちと一緒にこれからも遊びたいと、わらわも考えていたところだぞよ。喜んで、一緒に行かせてもらうぞよ」 「冬の女王」は、のぞみの提案を快諾した。 「わー! やったああ!」 のぞみは、「冬の女王」の手を取って、にぎやかに歓声を上げた。 「冬の女王」が、ルクオールにかけた魔法を解くと、まるで夜明けのように、町中の雪が輝き、消えていった。 楽しい夏の始まりと、仲直りを象徴するかのような、光景であった。 御宮 万宗の打ち上げた魔法の花火が、会場を彩り、エリザベート、アーデルハイト、「冬の女王」の顔を象った花火が空に咲く。 エリザベートは、アーデルハイトとしっかり手を繋ぐと、大きな声で宣言した。 「イルミンスールの夏休みのはじまりですぅ!」
▼担当マスター
森水鷲葉
▼マスターコメント
夏休みを取り戻せ!全2回、無事に最終回を迎えることができました。 継続してご参加いただいた方も、今回からご参加いただいた方も、どうもありがとうございました。 プレイヤーの皆様が積極的に物語を動かしてくださったおかげで、大変楽しく執筆できました。 また、次の機会にも、どうぞよろしくお願いいたします。