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リアクション
PM00:41
「いや、離して!」
乱戦が始まった部屋にか弱く少女の声が響いた。
声の主は桜月舞香。
パラ実生の一人が彼女の腕を乱暴にひねり上げた。
「うるせえ! 俺たちはこんなところで捕まるわけにはいかねぇーんだよ! おとなしくついてこい!」
彼女を乱暴に引きずりながらも、男は部屋の出口へと向かう。
「彼女を離しなさい! 逃げられると思っているの!」
セレンフィリティが逃げようとする男の前に立ちふさがる。
「へっ! こっちには人質がいるんだ! 分かっているのか」
つかんだ手で舞香を抑え込みながら、強引に自分の傍に抱き寄せた男は、彼女の首筋に持っていたナイフを当ててこれみよがしに見せつけながら、セレンを牽制する。
その顔は緊張をはらみながらも、舞香の豊かな胸の感触を楽しんでいた。
人質があるという優位性が、男に油断を生んでいた。
「くっ……」
セレンが道を開けようとした瞬間だった。
「……い」
「あ?」
「もう限界って言ったのよ!」
「ぐわぁ!」
舞香の叫びとともに、男の手からナイフが叩き落とされた。
「せっかくしびれ粉をわざと吸ってか弱い女の子を演出してさらわれたのに! なななちゃんを助けるチャンスをうかがってたのに、全部台無しじゃない!! さらにあたしの胸の感触をタダで楽しもうなんて、百年早いのよ!!!」
思わず手を抑えた男の下から脱出した舞香は、股間に膝蹴りを叩き込み、前かがみになったところを掌底であごをカチ上げ、みぞおちへの後ろ回し蹴りでよろめく男を壁まで吹っ飛ばした。
八つ当たりに乙女の怒りを上乗せされた舞香の連撃は、パラ実生を再起不能にしかねないほど過激だった事を記しておく。
PM00:41
「なななちゃん、大丈夫ですか? 助けに来ましたよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
どこかぼうっとした様子のなななちゃんですが、見た感じ怪我とかはないみたいです。
縛られていた手首と足首にあざが残らなければいいんですが。
「とりあえずなななさんはここでじっとしててねぇ」
傍にいた永井さんが、なななちゃんを禁猟区のスキルでガードしました。
「さて、それじゃあ残りのパラ実生たちをどうにかしようか」
「私もお手伝いします」
「ふざけやがって。てめぇ、いつの間に俺たちの中に入りんでやがった」
蒼髪でモヒカンヘアのリーダーっぽい人が、二人の仲間を連れて私たちの前に立ちふさがりました。
「いつも何も、君たちが最初に襲撃をされて逃げ出した時だよ。万博内の通りを逃げている間に紛れ込んで、あとはずっと一緒だったさ。そこまで入念な変装じゃなかったけど、特にバレたりしなかったから僕の方がビックリしてるよ」
「なめやがって! とりあえずてめぇはぶっつぶす」
「面白い! やってみなよ!」
その言葉を受けてパラ実生たちが突っ込んできます。
「なんだ! スキルが使えねぇ!」
永井さんの一撃が仲間の一人にあたると、彼は狼狽した声をあげました。
「逮捕術のスキルだよ。これは一定確率で攻撃した相手のスキルを封じることができる。運が悪かったね」
そうやって解説しながら、もう一人のみぞおちに拳を叩きつけて気絶させています。
「サンダーブラスト!」
逮捕術でスキルを封じられたパラ実生に、私はサンダーブラストで攻撃しました。
魔法の雷を浴びたその人は、ピクピクとけいれんしながら倒れました。
「これで後はあなただけです」
「うおおーー!」
気合いの声を入れて突っ込んできた彼でしたが、最後はあっけなく終わりました。
「はい、ちょっと落ち着こうか」
横手から突如として現れたルカルカさんによって、彼の突進は止められました。
それどころか、パン、と打った軽いパンチで彼は床にへたりこんでしまいました。
さらに彼女が放った真空波が部屋の中を吹き荒れて、他の戦いをすべて止めてしまったんです。
「さて、リーダー君、君たちの目的はティーカップパンダを利用した金儲けだと聞いたけど、間違いない?」
「そうだ!」
自分を倒した彼女相手にも、強気に出れるのは豪胆というべきかそれとも身の程知らずというべきでしょうか。
「なるほど。君の名前は?」
「グレンだ!」
「グレン。君には選択肢が二つある。私の提案を受け入れるか、否かだ」
今この部屋を支配しているのはルカルカさんです。
半分くらいのパラ実生は捕まっていませんし、シャンバラの人達やその他のなななちゃんを捜索している人達もいます。
でもここにいる人達の中でルカルカさんが一番強い。
だからこの場の決定権は彼女にある。
そんな空気が生まれていました。
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