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【空京万博】美しくも強くあれ! コンパニオン研修!

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【空京万博】美しくも強くあれ! コンパニオン研修!

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AM10:27

「見つけちゃったもん♪」子供っぽい口調で建物の陰から、こっそりと通りの様子をうかがっている小柄な影があった。
 彼女の名前は騎沙良 詩穂(きさら・しほ)。セシルと並ぶなななの電波仲間である。
「なななさんをさらったのはパラ実生で、なななさんは箱みたいなモノの中に入れられているっと。さすがにさらった人をそのまま連れ歩くほど、パラ実生も馬鹿じゃないよね」 先ほど送られてきた情報を確認する彼女の視線の先には、大きな箱を台車で運ぶ二人組のパラ実生がいた。
 堂々と制服のままでいる彼らは、この万博会場内でも探しやすかった。「ティーカップパンダを身に着けていればすぐに見つかると思った私は、大正解だね。さすがはなななさん、上手くアイツらを誘導してくれたみたい」詩穂は上機嫌で監視を続行する。そんな彼女の肩をポンとたたく人間がいた。
「きゃあ!」
「うわ!」
 悲鳴を上げて振り返った彼女が見たのは、見覚えのある男子生徒。
「驚かせてごめんなさい。騎沙良詩穂さんですよね。僕の名前は月崎 秀(つきざき・しゅう)。あなたと同じようになななさんを捜してたんです」
「ああ。そういえば樹月さんの近くにいたねぇ。でもなんで私の所に来たの?」
「一人で行動するのは無謀ですし、誰か近くにいないかなと思って探してみたら、未来パビリオンの衣装を着た騎沙良さんが見えたんです」
「なるほどねぇ」
 確かに今の自分は未来パビリオンの衣装なので、私服よりは分かりやすい。
「それで騎沙良さんは何をしてたんですか?」
「あいつらを写真に撮って、樹月ちゃんに連絡しようとしてたの。彼女を助けるのはそれからだね」
 携帯のカメラ機能を起動した詩穂は、ベストアングルを求めて建物の陰から陰へと移動しながら彼らの前方に回りこんだ。ひとまず後ろ姿を撮ってあるが、顔が分かるかどうかの差は大きいというもの。
 万が一彼らを見失ったり、救出に失敗した場合に備えておくに越したことはない。
「確かにいきなり捕まえようとするよりも、その方が確実ですね。僕はしびれ粉を用意してますから、上手く人気の少ない所に誘導できれば簡単に捕まえられると思います」
「それは名案だね。上手くいけば詩穂ちゃんたちだけで捕まえられちゃうよね」
 しびれ粉が入った袋を見せる秀と小声で会話しながら、詩穂たちはパラ実生たちの前方にまわりこんだ。途中でチャンスがあったので、その横顔もしっかり撮っておいた。後は彼らが目の前に来るのを待てばいい。
「あれ?」
 一時的に彼らの姿を人ごみで見失ったが、パラ実生たちは目立つし、ななながいるのだからすぐに姿を見せると思っていた。
 実は詩穂の考えは間違っていた。なななにはティーカップパンダを見つけやすいという特徴があるが、今のなななは自分で喋ることができない状態だ。つまり、ななな自身がティーカップパンダを見つけることはできても、そのことをパラ実生たちに伝えることはできないのだ。
「来ないですね?」
 しばらく待ってもパラ実生たちはやってこない。これはどう考えても、自分たちがまわりこむ間に別の道を通ったとしか考えられない。
「あ〜〜〜〜! 逃げられたーーーーー!!」
「ちょっ、落ち着いてください。」
 地団駄を踏んで悔しがる彼女を慌てて、月崎が宥める。なななを運んでいたパラ実生たちは、人ごみの中に姿を消してしまっていた。

AM10:40

(なるほど。それでは中尉のテレパシーが通じなかったのは、周波数が違っていたからとでも言えばいいですかな)
(私にも理解しがたいのだが、それしか言いようがない。今も私からのテレパシーに彼女からの応答はない)
(了解しました。我々は準備が整うまで引き続き連中を追跡します)
(すまないがそうしてくれ。当初の予定とはずれてしまうが、そこは作戦を修正してカバーする)
 その言葉を最後にジーベック中尉とのテレパシーは終了した。
「フリンガー少尉。テレパシーが通じないなんて話、聞いたことある?」
「ないよ、ブランド。今までのことを振り返ってみてもね」
「フリンガー少尉、我もそのような話は聞いたことが無い」
「ファウスト少尉、あたしもです。こんなことが本当にあるなんて」
 テレパシーは面識のある相手なら距離に関係なく成立する。多少の制限はあるものの今はそれに引っかかるようなこともない。
「まあ深く考えこともなかろう。テレパシーがなくとも我々には通信機械がある。あくまで数多くある手段の一つが使えなくなっただけのこと。任務中のトラブルはつきものなのだから割り切っておくのだよ」
「そうですね。ひょっとしたら相性の問題かもしれないですしね(彼女は電波キャラって聞いてるから、案外中尉とテレパシーの周波数が合わないってありそうだなあ)」
 現在、【プリエンツ】Bチームのゴットリープ・フリンガー、レナ・ブランド、ケーニッヒ・ファウスト、神矢美悠の四名は、犯人であるパラ実生を追跡中だ。
 最初はCチームの天津亜衣が犯人であるパラ実生を見つけた為、自分たちが追跡を交代して、彼女はヴェーゼル少尉とともに他の生徒との連絡に動いている。
 状況的には良いニュースと悪いニュースが一つずつ。
 悪いニュースは、ジーベック中尉のテレパシーが金元少尉とつながらなかったこと。これによって中尉達は作戦の見直しに迫られた。
 良いニュースは、ヴェーゼル中尉たちによって連絡がついたグループから、犯人の素性と目的が判明したことだ。
 少尉をさらったのは、ティーカップパンダを捕まえようとしているパラ実生らしい。
 おそらく金儲けにでも利用しようと考えているのだろう。
 となると、やっぱり他にも仲間がいると考えるべきだよな。
「ファウスト少尉。連中の仲間はあとどれくらいいると思われますか?」
「ふむ、情報が少ないから判断しづらいが、少なくとも十人以上はいるだろう。連中の目的がティーカップパンダを使った金儲けと考えられる以上、あそこの数人だけで目的を達成するのは不可能だからな」
「私もファウスト少尉の意見に賛成です。聞けば彼女にはティーカップパンダを見つける力があるとか。それを使ったとしても数人で探すのは非効率的です。」
「以前に彼女の能力を使って探した時も数十人規模で動いています。実際に探す人間が十名強、その他にバックアップする人間や計画を考える人間も含めれば、少なくても二十名はいると考えるべきかと」
「そうだな。神矢の言う通りそのくらいはいるだろう。だが先ほども言ったようにまだ情報が少なすぎる。予測するのはいいが、これからそれを確かめるのが今の我々の任務だ。敵の情報を知らないままに作戦を遂行するのは、可能な限り避けるべきだからな」
「「「了解です」」」
 チームリーダーとなっているファウストの言葉に、他の三名は揃って返事をした。