百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

【空京万博】美しくも強くあれ! コンパニオン研修!

リアクション公開中!

【空京万博】美しくも強くあれ! コンパニオン研修!

リアクション


PM00:09

「おいダリル! ルカルカが連中にわざと捕まったってホントかよ!?」
「ああ、そうだ。ルカルカのメモが現場近くにあった」
「マジかよ」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)夏侯 淵(かこう・えん)はそろって天をあおいだ。
 ルカルカの実力からしてあんな程度の連中に後れを取ることはありえない。
 つまり何らかの目的があってわざと捕まったということだ。
「穏便に済むと思うかい?」
「五分五分だな」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)の質問に、ダリルは即答する。
「連中がルカルカの言うことに従えばいいが、そうでなければまず間違いなく派手になる」
「俺もダリルさんの意見に賛成かな。あの人のこれまでの行動を振り返れば、どっちかしかないよ」
 ラグランツのパートナーのクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)も同じ意見だった。
「ふう。それじゃあ可及的速やかに彼女の要望が通るように、僕らもフォローしよう。といってもできることは後始末くらいになりそうだけどね」
「ひとまず二手に分かれよう。今はルカルカとのテレパシーがつながらない。意識を失っているんだろう」
「テレパシーが使えないんじゃそれしかないか」
「まったく事前に俺らに相談しとけってんだよ」
「過ぎたことはしょうがないから、後で好きなだけ彼女に怒ってよ」
「その通りだ。被害が発生する前にルカルカを見つけるのが先だ」
「分ーってるよ、さすがに連中の命がかかってるからな」
 淵の不満も、今は胸の内にとどめさせる。
 こんなことで人死にが出るようなことになったら、万博は即日中止になってしまう。ルカルカにはそれだけの実力がある。
「じゃあ、僕とクマラはこっち側を探す。クマラ、行けるね」
「任してよ。ティーカップパンダをいっぱい持ってるルカルカは、チョコみたいな匂いがしてるからね。それを追って探すよ」
「俺と淵はテレパシーを頼りに探す。見つけたら連絡してくれ」
「OK。彼女の裁きが下る前に見つけ出そう」
「幸運を祈る」
 その言葉は誰に向けたものだったのか。
 二人ずつに分かれた彼らは万博会場内を走りだした。



PM00:22

「なるほど、ここが俺様の晴れ舞台という訳だな」
 現在パビリオンの衣装を着た変熊 仮面(へんくま・かめん)は、用意された展示準備中の建物を見て、意気揚々と中に入って行った。
 ここはななな奪還の最終防衛線。
 なななをさらった犯人たちの目的は、ティーカップパンダをオークションにかけて大金を稼ぐこと。
 しかし、その目論見は紆余曲折を経て、あらかた叩き潰されている。
 なななをさらった実行犯たちこそまだ逃げているが、オークション会場はすでにこちらが押さえた。予備部隊として待機していた連中も制圧した。
 実行犯の一部を捕まえる過程で多少騒ぎになったが、映画の撮影やケンカという形でカタがついている。
 残った連中は、自分を含めたなななの友人たちを中心としたグループと、シャンバラ教導団のグループが協力してここにおびき寄せることになっている
「ならば、後は俺様の華麗な活躍で奴らを引きつければすべては丸くおさまる!」
 しばしの間、高笑いを浮かべていた彼だったが、やがて笑いを収めると準備を始めた。
「さあ、早く来い、犯人たちよ! ハーハッハッハッハッハッハー!」
 無人の部屋に彼の高笑いが響き渡る。


PM00:34

「よくぞ来た、待っていたぞ。パラ実生の諸君!」
「おい、なんだコイツは?」
 状況が理解できないパラ実生たちは固まってしまった。
「おい、確かここはティーカップパンダを五匹ほど保管しているんじゃなかったのか?」
「俺様の名は変熊仮面、そしてこいつは相棒の猫熊仮面だ!」
 彼は部屋の中央にぽつねんと置かれたお立ち台の上にいる。
 四方からライトアップされたそれは、薄暗い部屋の中では存在感抜群だ。
「まさかとは思うが、あいつがティーカップパンダを五匹持っているのか?」
「どうした、パラ実生諸君? 私のアピールが足りないのかね? ならば見たまえ! 私と相棒のスペシャルポーズを!」
 マイペースに衣装のすべてを脱ぎ捨てて自らをアピールする変熊仮面と、他のティーカップパンダを探すパラ実生。 
 まったく話がかみ合わない両者は、それぞれのペースで話を進める。
 こっそり脱出の隙をうかがっていた桜月舞香、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)、杜守柚と、パラ実生にまぎれこんでいた永井 託(ながい・たく)も、すっかりタイミングを失っていた。
「とりあえずあの馬鹿を捕まえろ! そうすればハッキリするはずだ」
「ぬお! 貴様ら、俺様と相棒のスペシャルポーズに何をする!」
「やかましい! だったらそのままにしといてやるよ」
「ぬあああーーー!」
 なぜか全裸でブリッジ体勢を取っていた変熊仮面と、そのうえでポージングしていた猫熊仮面は、リーダーの蒼髪モヒカンの号令でそのままの状態で拘束されてしまった。
 まったくもって見てて不快なオブジェである。
「ふうー、てこずらせやがって」
「ホントだよ」
 その声に蒼髪モヒカンが振り返る。
 そこにはパラ実生の変装を解いた永井が、なななを助け出すところだった。
 さらにはなななに対する人質のはずのルカルカたちも解放されていた。
「さあ、年貢の納め時だよ」
 その言葉を合図に、部屋の外から何人もの人間が飛び込んできた。