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リアクション
AM11:50
「とりあえずアンタ等、ティーカップパンダでオークションを開いて金儲けを企んでたって本当なのね?」
「「「「「う、ういっす」」」」」
「それじゃあ、わたくしのティーカップパンダ館を開くという提案も聞き届けていただけるかしら?」
「「「「「は、はい。もちろんです」」」」」
私の目の前には十人ほどのパラ実生たちが、うめき声を上げながら寝転がっている。
冷たい床で少しばかり頭を冷やしてもらっているところだ。
「私の名前はリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)と申します。あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」
「伏見 明子(ふしみ・めいこ)よ」
「伏見さんのおかげで助かりましたわ。なかなか交渉が上手くいかなくてどうしようかと思っていましたかしら」
「別に大したことじゃないよ。ちょうどここに着いたら、あなたがあたしがしようとしてたことをしてたからさ。様子を見て無理っぽかったから、協力しただけ」
元々、私はこの話を聞いた瞬間にウチの連中の仕業かなって思ったからね。
適当にウチの連中が集まる場所でこんなことがあったけど、なんか知ってるかって聞いたらここに行き当たっただけだからね。
「そうですか。わたくしも同じようにしてここに着きましたから、時間の問題でしたね」
「まあ、身内の不始末はなるべく身内でつけたいからね」
「同感ですわ」
お互いの情報を交換している間に、こいつらもようやく復活したようだった。
「さて」
「「「「「はい!」」」」」
「あなたたちのすることは何かしら?」
「「「「「ティーカップパンダ館を開くことです!」」」」」
「そのためにはまずどうすればいい?」
「「「「「さらった金元さんを解放します!」」」」」
「それから?」
「「「「「主催者の方たちに謝罪します!」」」」」
「その後は?」
「「「「「あらためて金元さんにティーカップパンダ館を開く協力をお願いします!」」」」」
「「よろしい!」」
私とクロウの教育はしっかり行き届いていた。
ここにいるこいつらは、いってみれば予備部隊のようなものだから、こいつらをつぶすだけじゃ足りない。
なななちゃんをさらった犯人たちの方は、多くの人間達が動いているからそのまま彼らに任せる。
私たちはこの後、オークションを開く予定のある場所に話をつけにいく必要がある。
「じゃあ行くか」
「ええ」
私たちは教育を終えた連中を残して、その場を離れた。
AM11:50
「なんでこうなったんだよ」
四谷 大助(しや・だいすけ)は肩を落として雅羅・サンダース三世の隣を歩いていた。
「なななさん捜索の人数は多ければ多いほど良いのは当然です。大輔は何を考えていたんですか?」
大輔と雅羅の二人だけのななな捜索(大輔的にはデート)は、四名の同行者によって御破算になった。
誘拐されたなななを穏便に奪還すべしという雅羅からの命令の後、四谷は雅羅に声をかけた。雅羅のトラブル体質が上手く作用すれば、トラブルが起きた場所にななながいて華麗に救出して雅羅の好感度アップ、上手くいかなくても二人だけのデートが楽しめる完璧な計画のはずだった。
「シャンバラの連中が堅実な救出する作戦を立てるだろうから、オレは運要素が強い救出作戦を立てて、別方向のアプローチをしようとした。雅羅ともっと仲良くなりたいとか、彼女が誘拐されるのを防いで好感度アップとかも考えたさ。お互いに現在パビリオンの衣装を着て雅羅とのコスプレデート兼なななさん捜索のはずだったのに……」
大輔が恨めしげに見ているのは、目下最大のライバルであろう想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)と想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)だ。姉の瑠兎子は大々的に、弟の夢悠は控えめに雅羅に対するアピールを行っている。
雅羅の方は友人として振る舞っているが、それがいつ恋人になるか油断ならないのだ。ちなみに二人とも現在パビリオンの衣装を着て、お揃いを主張する辺り抜け目がない。
残りの御魂 紗姫(みたま・さき)とシェス・リグレッタ(しぇす・りぐれった)は、なななを知る雅羅と一緒の方が良い考えただけらしい。ちなみにこの二人は未来パビリオンの衣装を着ている。
とりあえずは雅羅を撮影した映像は、後であの二人から回してもらおう。せめてそれくらいはしてもらなければ、あの二人は許せん。
「雅羅ちゃん、雅羅ちゃん。こっち向いて〜、ハイ、笑って手を振って〜」
「瑠兎子さん! 真面目に仕事に取り組んでください!」
「えっと、サンダースさん、これも仕事ですから許してください」
「雅羅は少し雰囲気が固くなってるから、とりあえず深呼吸して落ち着こう。ちゃんと仕事しないといけないんだからさ」
プラカードを持った夢悠に言われ、隣を歩く大輔に宥められ、雅羅はなんとか瑠兎子の要求に答える。
シャンバラ教導団の団員から、なるべくいつもどおりに振る舞ってほしいと頼まれた手前、彼女は内心のなるべく抑えなくてはならないという負担がある。
「これじゃああの質問をするなんて到底できないや」
夢悠は姉の隣でそっとひとりごちた。
それはななな奪還と並ぶもう一つの最大目的、雅羅はコンパニオン衣装の下に何も穿いていないのか、ということだ。男としてあのミニスカの下は気になる。この点については、四谷さんも一緒だと思う。後はお姉ちゃんもかな。
「雅羅ちゃん、雅羅ちゃん。今度はそこの案内板をチェックする感じでお願いね! うん、そうだよ、良い感じ! さすが雅羅ちゃん!」
映画撮影中のプラカードを掲げながら、雅羅さんを撮影中のお姉ちゃんを見る。極力隣を歩く四谷さんが映らないようにしながら、色んな角度から撮影している。しかも自分好みにポーズを取ってもらいつつ、僕が掲げているプラカードのおかげで大丈夫だけど、これがなかったらただのストーカーだ。
現に、これは何の撮影?、とかなり怪しげに通行人に聞かれても、万博中のコンパニオンの一日という映画です、と言えば納得してくれている。
「お姉ちゃんの要求に応える雅羅さんはカッコイイな。四谷さんが後で映像を回してくれって言ってたのもよく分かるよ」
本来の目的は、なななさんをさらったパラ実生を捕まえる時に映画の撮影でごまかす為だけど、姉さんの様子では完全に目的と手段が逆転してるね。
お姉ちゃんもさっきから満足げにしているから、かなり良い感じなんだと思う。
本当なら犯人の情報を教えてくれた白竜さんに協力したいけど、雅羅さんのトラブル体質を考えたら、多分無理だろうな。
「きゃあ!」
ほらね。
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