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リアクション
PM00:00
「誰かいないのか?」
杜守三月(ともりみつき)は逃げるパラ実生を追いながら、辺りに視線を巡らせた。
何としても柚を助けなくてはならない。
柚をさらった奴を捕まえることに異論はないが、さすがに一人では無理だった。
「誰か僕に手を貸してくれる人がいれば……」
焦燥にかられる三月にさらなる問題が襲いかかる。
「こんな時に!」
三月が追っているパラ実生が、他のななな捜索をしている生徒たちとトラブルを起こしていた。連中は一部を足止めに残して、十人ほどが逃げていく。
「ああ、もう! ホントに何なんだ!」
いら立ち混じりに追いかける三月に、通りすがりのコンパニオンから何かを投げつけられた。
反射的に受け取ったそれは、くしゃくしゃに丸めた紙で小石を包んでいた。
開いて見ればそこにはあることが書かれていた。
赤字で完了の文字が書き加えられている。
驚いて振り返れば、彼女は小さく手を振っていた。
おそらく先を行く連中にもさりげなく同じ情報が渡っているはずだ。
「なら、僕もそこに行けば柚を取り戻せるということだね」
落ち着きを取り戻した美月は、メモに書かれた場所に向かった。
PM00:01
「……ここだよ」
ノートルドが立ち止まったのは、一軒のファンシーショップだった。
看板にはティーカップパンダの絵が描かれている。
「たしかにティーカップパンダが関係したお店みたいだね」
「……早く入ろう」
現在パビリオンの衣装を着たあうらとノートルドは、問題の店に踏みこんだ。
「うわあ、これはまたすごいね」
「……うん」
「ファンシーグッズでいっぱいだね」
店内に入った二人は、あまりのファンシーグッズの種類と量に圧倒されていた。
口数の少ないノートルドも目をしろくろさせている。
この店は万博内で展示を行うのではなく、来場客を目当てにお土産を売る店だ。
万博内のさまざまなキャラクターを模したファンシーグッズを売りだしており、ティーカップパンダもその中の一つらしい。
当然この店でも一番人気になっているらしい。
「あ、見てみて。ティーカップパンダグッズが置いてあるよ」
「……量が少ない」
「大人気だからすぐになくなっちゃうんだね」
あうらが【大人気につき在庫はここにある限りになります】と書かれたPOPは指差した。
「うんうん。でもお店の様子を見ても、パラ実生が関わっているような感じはしないね」
「……確認するよ」
口数の少ないノートルドだったが、店員に万博スタッフであることを告げて、店長を呼び出してもらった。
「何かご用でしょうか?」
出てきたのは三十代くらいの女性だった。
その顔には自分がなにかしてしまったのか、という不安がありありと浮かんでいた。
「すみません。少し確認したいことがあるんです」
「えっと、単刀直入に聞きますけど、このお店ってパラ実生が関わってますか〜」
「どういうことですか?」
「実はパラ実生がティーカップパンダを不正に取引しようとしているという噂がありまして、それで関連商品を扱っているお店を回っているんです」
不安な顔をしていた女性店長は、あうらの話を聞くにつれて徐々に表情がはれやかになっていった。
「ああ、そういうことですか。ウチは知り合いにティーカップパンダを連れている人がいるので、そういうのとは関係ないです」
「……そうでしたか、失礼なことを言って申し訳ありませんでした」
しばらく店長の顔を見つめたあうらは、そう言って謝罪した。
「もし、さっきのような話を聞いたら、こちらに連絡をお願いします」
あうらが凶司の連絡先を渡すと、店長はほっとした顔で店の奥へと戻って行った。
「……連絡は僕がするから、あうらは店内を見てて」
「ありがとう、ノートルド君」
さっきからキラキラと店内を見ていたあうらに気を使ったノートルドは、静かに表に出ると凶司へと調査結果を報告した。
PM00:03
「ああ、もう何でこうなるのよ!」
「セレン、落ち着いて。今は一人でも多くのパラ実生を捕まえることを考えて」
「分かってるわよ!」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、未来パビリオンの衣装を着て逃げるパラ実生二人組を追っていた。
本当なら、ルカルカ・ルーやエース・グランツたちと連携を取って捕まえるはずだったのに、あのコンパニオンが逃げる連中とぶつかって揉め事になったせいで全部パアになった。
「聞いた話だとあの講師はトラブル体質らしいよ」
「つまり、こうして追いかけっこしてるのはあのコンパニオンのせいってことでしょ?」
二人組のパラ実生は、台車に乗せた荷物を押さえながら器用に人ごみをかき分けながら走って行く。
連中は人が隠せそうな箱を乗せた台車を何個も運んでいたから、一つずつ追いかけて確かめるしかない。何個か取りこぼしが出るだろうけど、そのことは今は考えない。
「つ、か、ま、え、た!」
いくら連中が器用に人ごみをすり抜けると言っても、余計な荷物の無いあたし達の方が絶対に速い。
十分に距離を詰めたところで、レーザー銃の銃身で殴りつける。
うめき声をあげて倒れたそいつを一時放置して、台車を止める。
セレアナの方も槍の一撃でパラ実生を気絶させていた。
「セレアナ、ロープ貸して」
「はい」
「ほら、抵抗するな」
捕縛用に持っていたロープを使って、もがくパラ実生を縛り上げる。
もう一人は完全に気絶しているので、すぐに終わった。
「これは映画の撮影ですのでご心配なく」
あたしのすぐ後ろでは、セレアナが集まってきた野次馬をごまかしている。
「じゃあはこの中を確認しようか」
野次馬を解散させたあたし達は、連中が運んでいた箱の蓋を開けた。
「ななな、大丈夫〜」
「……外れね」
箱の中にあったのは適当に詰められたガラクタ。
あたし達は見事にダミーをつかまされたのだった。
「ああ、もう」
「グハッ!」
腹いせに蹴っ飛ばしたパラ実生は、近くの壁にぶつかって気絶した。
「ふん、ざまあみろ!!」
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