リアクション
二十六章 戦隊の結末
これは、きっとそう遠くない未来の話――。
シャンバラ大荒野の一角にある遺跡は、ちょっとした観光名所になっていた。
理由はとある戦隊の墓場として。この戦隊が有名になった要因は数ある。
ひとつは、佐野 和輝を中心とした活動によりこの戦隊が正史に名を連ねたことにより。
ひとつは、リカイン・フェルマータが彼らの顛末を蒼空歌劇団として題材にしたことにより。
ひとつは、ライターとして名高い曹丕 子桓が書いた伝記が売れたことにより。
ひとつは、山葉 涼司が蒼空学園の生徒にここに訪れることを推奨したことにより。
ひとつは、最後の戦いを参戦した者達が語り継いだことにより。
そして、今日も花束を携え一組の男女の冒険者がこの墓標を訪れていた。
その二人とは、アキュートとクリビア。かつての戦いにも参加した二人組だった。
二人は八つの赤い墓標に花束を捧げる。
そして、クリビアは慰霊碑に目をやり、そこに書かれた文を声に出し読み始めた。
「王国を守り抜いた英雄達 ここに眠る。
幾多の敵と 渡り合い。
血濡れた武具は 騎士の誉れ。
その功績を称え ここにその名を記す」
最後に刻まれた文字を読む前にアキュートが、クリビアの言葉を遮った。
「……どうしたのですか?」
「いやまぁ、その戦隊の名付けた身としては、何かこう……こそばゆいっつーか、なぁ?」
「なぁ、じゃありませんよ。この誇り高き戦隊に名前を考えたのはあなたなんですから。胸を張りましょう」
「……いや、まぁ。そうなんだけどよ」
「それにいい名前じゃありませんか。血に染まる前の武具の色を聞き、この名前にしたのですよね。私は好きですよ」
にっこりと笑うクリビアに対し、アキュートは少し恥ずかしそうに頬を掻いた。
そのアキュートの姿を見てから、クリビアは慰霊碑にもう一度目をやり最後の一文を口にした。
「『王国の白き盾』」
最後まで読んで頂きありがとうございます。マスターの小川大流と申します。
この度は「忘れられた英雄たち」にご参加頂きありがとうございました。
今回の物語は如何でしたでしたでしょうか。
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
それでは、また皆様にお会いできる時を楽しみにしております。