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【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

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【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

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〜戻りまして〜

 そんな経緯があり、現在は参加者全員でオーディション中というわけだ。
「どうするのだ? 武器を捨て平伏すというのなら、生かしてやらんこともないが?」
 時平が演じる、悪の帝王『残虐王ギガス』。冷徹かつ狡猾な笑みを絶やさない。
 そんなギガスを意にも介さず、『人質にされた女王』(役)のクリストバル ヴァリア(くりすとばる・う゛ぁりあ)が冷静に喋る。
「……戦士たちよ。降伏してはなりません。どのみち私は助からない。使命を、まっとうなさい。
 世界に平和を取り戻すという使命を。さあ、私にかまわず、ギガスと戦うのです」
「……しっかりするのよ! 私は女王様に選ばれた戦士。だからこそ私には……ギガス! お前を倒す使命がある! はああ!」

 一番に動いた果敢なる戦士は三田 麗子(みた・れいこ)。例え、女王の命が犠牲になっても世界を守り抜くためにその剣を抜いたのだ。
 だがハデスがその行動を阻止する。
「ぐぅ!?」
「甘い甘い! 動きに余裕がない、隙だらけだぞ! フーハハハハ!」
「クックック、勇み足とはまさにこのことか」
「おのれぇ!」
「やめなさい」
 麗子を止めたのは島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)。その目には深い諦めの色が滲んでいた。
「ほう、心が痛むか? 女王の言葉にその心は疲弊しきっているのか?
 愛とは愚かなもの。さあ、世界を守る戦士よ、どうする? 我が眼前にてその答えを叫んでみせよ!」
 殺気とともに穿たれた言葉。だが既にヴァルナの心は折れていた。
「……ギガス、あなたの言うとおりです。私の心はすでに疲れ、いえ、折れてしまった。……降伏です。女王様を返して下さい」
 諦めの瞳には悔し涙が灯り、握り締めた拳は震え続けていた。
「何を馬鹿な! 私たちには世界を守る使命があるのだぞ!」
「わかっているわ。けれど、私は女王様に生きていてほしいの……」
「一人は抵抗を、もう一人は屈服を選ぶか。……して、お前たちはどうするのだ?」
 目を向けられたのは鶴 陽子(つる・ようこ)松井 麗夢(まつい・れむ)島本 優子(しまもと・ゆうこ)の三人。
 そのうちの一人、陽子が一歩前に出る。
「ほう、やる気か?」
「そうです。私のことは気にせず、戦いなさい! 戦士よ!」
「……女王さまあああああぁぁぁーっ!!」
 悲痛な叫びは空を裂いた。同時に、手にしていた剣をギガスの前に投げ出す。
 その行動は、これ以上攻撃はしないという宣言と同義だった。
「ハッ、耐えられない憎悪はあれど結局は負けを認めるか。そっちも同じようだな、何か言ったらどうだ?」
「……」
 一言も発っしないが、息遣いには殺気を感じさせる麗夢。その表情はこの世のものとは思えない憤怒に満ちていた。
 だが彼女もまた無言のまま剣を投げ出す。
 その横では女王の命と世界の命運を前に必死に葛藤する優子の姿があった。
「……私は、私は……世界を、守る剣士……。数多の世界を守らなければならない。ああ、だけど! 女王さま、あなたは……あなただけは……!」
 剣を握れども迷いしかない彼女に、その剣をギガスの喉元に突き立てることはできないだろう。
「うむ。強きもの、弱きもの。その見せ方にもオリジナルがある。よい、よいぞ」
 クレーメックがうなづきながら審査をしている。
「脆いものよ。たった一人の命に判断を濁らせる。これが戦士とは、泣けてくるな?
 ……もうよいだろう。そんなに大切ならば、いっそここで散らせてくれるわ!」

「そこまでよ、この卑怯者!! 女王様を離しなさい! 女王様も諦めてはいけません! それこそ、こいつらの思うつぼです!」
「そうです。わたくしどもを導いて下さるのは女王様だけですわ」
「卑怯な悪のあなたにはこのオリュンポスの、じゃない! 女王様の騎士であるアルテミス、参ります!」
 陰鬱とした空気を打ち砕き、希望の光の如く現れた三人の戦士。
 桜月 舞香(さくらづき・まいか)イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)
「ほう……!」
 審査員・クレーメックの目が光る。
「威勢のいいのがまだいたか。だが、これを見てもまだ元気でいられるか? ハデス!」
「仰せのままに、出でよ混沌の発明品よ!」
「イエス マイロード」
 現れたのは常に暴走しっぱなしのハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)。その手に持っている、凶悪そうな武器を女王の首元へ添える。
 それを見た三人の戦士たちは声を荒げる。
「だ、だめです! 危ないですよ!」
「わ、わかったわ! あたしたちも武器を捨てる、だからそれ以上はやめて!」
 アルテミスと舞香、更にイングリットも口惜しそうに武器を捨てる。
「よろしい。ならば触手だ!」
「命令ヲ確認シマシタ」
 何がよろしくどうして触手なのか。答えは一つ。
 お約束というやつだ。
「どどどどうしてこんなことにー!?」
「こ、こら! そこはだ、め……!」
「わたくしにこのような不埒なまねを! こら、およしなさい!」
 てんやわんやで触手とビキニアーマーが戯れ、放送コードとの戦いが始まろうとしている。
 だが、それすらも救ってくれるのがビキニアーマーの戦士たちなのだ。
「……そこよ!」
 舞香のアーマーが取り外されそうになる刹那、辺りを光が包む。
「ビキニアーマーは乙女の聖域を守る聖なる鎧。不浄な手で触れる者には女神の裁きが下るのよ!」
 実際には舞香がタイミングよく『光術』を使用しての演出だ。
 舞香の行動を見逃さなかった戦士たちも同時に動き始める。

「私は負けない! 世界を守るために、私は最後まで戦う!」
「迷いは断ち切るもの……! 今こそ、この迷いを断ち切る!」
 優子と麗子が武器を回収し、ハデスの発明品に斬りかかる。
「命令続行 困難」
 断末魔にも似た機械音を最後にハデスの発明品は撃沈。必然、捕らわれていた三人が地面へと落下する。
 舞香とイングリットは着地に成功するが、アルテミスだけでバランスを崩している。
「あわ、あわわっ!」
「……!」
 しりもちを着く前に麗夢がアルテミスを受け止める。大事はないようだ。
「お、おのれ! なめたまねをしてくれたな! もうよい、女王は貴様等の前で見殺しに……! なに!?」
 ギガスの元に女王はいない。すでに陽子とヴァルナが隙をついて救出していたのだ。
「女王様!! ご無事で!」
「ええ、ありがとう」
「一度は折れてしまいました、申し訳ございません……」
「いいのです。あなたの優しさに、私は救われていたのですから」
「ぐ、ぐぐぐ! ハデス!」

 パーティーメンバーがいません。

「悪運尽きたようね! さあ、合体必殺技でとどめよ! 行くわよイングリット!」
「ちょ、ちょっとまっ」
「フライング・ダブル! ヒップアターック!」
「どうしてわたくしがぁ!」
 天高く舞い、その落下速度分の威力を潤沢に上乗せした強烈なヒップアタック。
「ぐ、はぁ!?」
 このいろんな意味で強烈な攻撃に、遂にギガスが倒れる。
 ついでに半ば強制的にやらされたイングリットも恥ずかしさのあまりその場にへたり込んだ。

「そこまで! オーディションを終了する!」
 勢いよく立ち上がったクレーメックの声の後に、盛大な拍手が巻き起こった。
「最初はどうなることかと思ったが、みな素晴らしい演技であった。では、早速だが審査結果を発表する」
 全てを見ていたクレーメックの眼光が参加者たちを行き来する。
 果たして結果は。続きはWEBで! いや、ここで。
「……最高得点者 三田麗子! 次点で、桜月舞香、松井麗夢、島津ヴァルナ、鶴陽子!
 以上の者でメインキャストである美少女ビキニアーマーの役をやってもらいたい」
「やりましたわ!」
「やりぃ! ってイングリッドは?」
「無口キャラの勝利だね!」
「わ、わ、わたくしでよろしいのですか?」
「脚本書いたのは伊達じゃないのよ」
 それぞれから喜びの声、プラスで疑問の声が上がるなかクレーメックが解説をする。
「三田麗子からは硬質な強さを見た。だが、その実瞳には若干の迷いがあった。それでもなお前に出た勇気は、主演をするのに相応しいと判断した」
「す、すごい高評価ですわね」
「他4人からもそれぞれ独自に設定したであろうコンセプトがダイレクトに伝わってきた。素晴らしい演技だった。
 ……さて、残念ながら島本優子、イングリット・ネルソン、アルテミス・カリストはメインキャストには推せない。
 が、他の役を考えていた。そちらの役を行ってもらいたい」
「残念だわ」
「……わたくしは半強制的に連れてこられただけなのですが」
「あう、ひどい目に逢いました……」
「以上でオーディションを終了する。ハインリヒ、後を頼むぞ」
「心得た。それではしばし休憩した後に撮影に移らせてもらう。各キャストは打ち合わせがあるので集まってくれ」
 こうしてオーディションは終了し、撮影の準備が開始される。