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【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

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【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

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 そんな未来に想いを馳せながら駆けてきた二人が来た場所。
 大きく「吼えろ! 猛ろ! 雄叫び大会!!」と書かれた看板が立てかけられたステージ。
 このステージではニルヴァーナ大陸の様々なところで活躍する開拓者たちが自分たちの思いの丈を叫ぶ場所。
「レディースアーンジェントルメーン! よくぞ集まってくださいましたネ! 開拓者ならではの叫び、この『中継基地』に響かせてほしいヨー!」
「それだけでなくそちらの開拓者相談コーナーでいろいろな情報のやりとりをしていってくださいね」
 ステージの上で飛び跳ねる司会、ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)、冷静に司会補佐を勤める、アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)
「それでは一番目のアナタ! レッツ・シャーウトォ!」
「叫ぶ内容はこれといって指定しません。ありったけを叫んじゃってください!」
 呼ばれた一番手は屈強そうな男性。体は傷だらけ。修羅場をくぐっていそうな
「じ、自分はこの大陸に来たばかりの新米ですが、開拓者としてみなさんと協力できればと思っています。
 な、なので、よよよよろしくおねがいしまふっ!」
 ……人を見た目で判断するのはよくないぞ!
「オー! そのウイウイしさ、最高ヨー! だけど声の大きさや訴えたいことがイマイチまとまってなかったカモネー!」
「ただ、開拓者として頑張るという意気込みは伝わってきましたね。これから大変だと思いますが頑張ってください」
「は、はひっ」
「いいぞー! あんちゃん、こっちきて俺たちと呑みながらこれからについて話そうぜー! がっはっはっは!」
 呼ばれた屈強紳士は笑顔でその輪に加わっていった。
「さードンドンいくヨ!」
「次の方どうぞー」
 ここからさきはダイジェストでお送りいたします。

「なんとかスポーンなんかにゃ負けねーぞ! 開拓者、なめんなよー!!」(7点)
「みんなでこの大陸をさいっこうの大陸にしましょう!」(8点)
「ミルキーさーん! 僕の、お嫁さんになってくださーい!」(6点)
「おいこら貸したままのお金返さんかい! 誰だか忘れたが!」(5点)
「来年のバレンタインには俺にもチョコをお恵みください、神様」(1点)

「ビューティフォー! エキサイティン! コングラッチレーション!」
「……開拓者として意気込みをって話だったけれど、もはや言いたいこと言うだけの大会ね。まあ、悪くないけど」
 興奮冷めやらぬロレンツォに若干苦笑いのアリアンナ、それを見ていたリネンがステージの上へ。
「飛び入り参加はいいかしら?」
「モッチロン! あなたも飛んで火にいる夏の虫、ネ!」
「それ意味違うから。えーとお名前は?」
「リネン・エルフトって言うの」
「わかりました。……次は飛び入り参加した美しき人、リネン・エルフトさんのお叫びです!」
 名前を言われたリネンががっしりとステージの上に立ち、思い切り息を吸い込む。
 その姿を見つめるフリューネ。
「私は! もっともっと! フリューネとどこまでも! 地平線も、大瀑布も超えてずっと、もっと先へ飛びたいッ!!」
「!! ……私もだ! この羽が折れるまで、いや折れたって! どこまでも飛びたいぞー!」
 リネンの叫びに呼応するかのようにフリューネが叫び、羽を広げる。
「オーマイガー! ステージと観客席の両方から攻めるなんてなんというマジシャン! あなたには9点と『技能賞』をプレゼントネ!」
「あら、ありがとう」
「まだまだ『敢闘賞』『声が一番でっかいで賞』『帰って涙を拭きま賞』もありますのでガンガンいきましょー。
 ……参加人数を多く見積もっといて良かったわ」
 内心5人くらいかなと思っていたものの、軽くその三倍の人数がきたのだからそう思うのも無理はない。
 大会はまだまだ終わりそうにはなかった。

 大会にでて叫びそれに呼応したリネンとフリューネの声を聞いて、その場に現れた者が一人。
「やはり、先ほどの声はお前たちだったか」
 【サングラス?】をかけたレン・オズワルド(れん・おずわるど)
「レンも来てたんだ? どう、祭りは楽しんでる?」
「ああ、賑やかすぎる気はしないでもないがな」
「おーそこのスタイリッシュなお人! 雄たけび大会にご参加いかが!」
「いや、俺にそういうのは向いていない」
「まあまあ、私もやってきたし、たまにはやってみなって!」
「そうだそうだ!」
「お、おい」
 リネンとフリューネに背中を押されて強制的に参加することになったレン。
「大丈夫ですか?」
「……ああ。なら一つだけ、叫びではないが言わせてもらおう」
 腹を決めたレンがフリューネを見て、ゆっくり、きっぱりと(心で)叫ぶ。
「フリューネ、俺と一緒に祭りを見て回らないか?」
「ええ、いいわよ」
「……まさかのデートのお誘いネー! アッツアッツネ!」
「お二人とも、ごゆっくり行ってきてくださいねー」
「なるほどね。……それじゃ私はちょっと行くところあるから、後で合流しようか」
 祝福ムードの会場と司会者・司会補佐を尻目に、リネンがそう言う。
「そう? 三人で回れるかと思ってワクワクしたのに」
「後で会えるって。それじゃご両人、また後でね」
「……気を使わせたな」
「なんのことやら」
 そう言ってリネンは笑顔で二人を見送った。
「……『相棒』ね。内心、ドキドキしっぱなしだよ。まったく、人気者だわ」
 そう、リネンは優しいのだ。優しいゆえ、なのだ。