空京

校長室

重層世界のフェアリーテイル

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重層世界のフェアリーテイル
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リアクション

 それは花妖精村の北東にあった。
 巨大なイコンの残骸。それは遺跡と言うよりも遺物と言ったほうがいいかもしれない。
 ドロシーという機械仕掛けの少女によれば、この先に、異空間へと繋がる場所、ゲートがあるらしい。
 とはいえ、近場には『門』と思える建造物は見当たらない。
 イコンの残骸の当たりを歩くと、不意に視界が歪んだ。眼前にあった景色が全く別の物に変わる。
 この境目こそがゲートだった。
 そして、新たに広がった景色は異世界のもの。
 ハイ・ブラゼルにて第三番目に見つかった、彼の者の封印の地。
 

 【第三の世界】
 


第一調査部隊

 見つかった【第三世界】を調べるべく、調査団が結成された。
 調査団がゲートを超えた先は荒地だった。どこまでも続く瓦礫の山と建物の残骸が無数に広がっていた。
 それらの先に春永 樹(はるなが・いつき)は軍事基地を見つける。
「あの基地は何だ?」
「なんらかの前線基地みたいね。向こうには都市が見える」
 四十万 巴(しじま・ともえ)は荒地の先に高層建築物の群れを見つける。
「近代的……、いや未来的だな」
 樹はそう捉えた。
「……どうやら、ゲートは空にまで伸びているらしい。まるでバミューダ・トライアングルだ」
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)はゲートをそう揶揄した。ザンダーレーヴェでゲートを通過し、多少の目眩を感じた。
 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)、機体の安定を確認。システム良好。
「ユメミ、ゲートの位置を記憶しておいて」
 端守 秋穂(はなもり・あいお)セレナイトに同乗するユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)に命ずる。
「わかったー。ついでに周辺情報も記録しとくねー」
 ゲートの座標を0000地点としてセレナイトに入力する。GPSによる現在地の割り出しは効かないため、移動距離で算出することにする。
「各自調査を開始してくれ。私は麗子と共に基地へと向かう」
 クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)は告げる。異世界の軍隊と争わないために接触しようとのことだ。三田 麗子(みた・れいこ)を連れて交渉へと向かおうとする。
「基地の外は我が観察しよう。内部で何かあれば《テレパシー》で連絡を。麻衣」
「はい」
 ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)天津 麻衣(あまつ・まい)を呼び、基地へと赴くクレーメックの【銃型HC】を式神化させる。
「基地内部で得た情報を定期的にこっちの【銃型HC】に送信してよ」
「分かった敵軍の可能性も考慮しないとな」とクレーメックは【銃型HC】を受け取り直す。
「収集は私のフラワシにおまかせですわ」
 麗子はそう言って、クレーメックともに基地へと《テレポート》した。
「基地の偵察は彼らに任せて、僕らは周辺の地形データを収集しましょう、フェル」
「取り敢えず測るのは東の一角からでいいよね?」
十七夜 リオ(かなき・りお)がパートナーのフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)に呼びかけた。
 {ICN0002953#ピングイーン}からエコーを放ち、地形の詳細な起伏を測量していく。フェルクレールトはイコンを東へとゆっくり飛行させる。
「航空写真は私たちに任せて下さいリオさん」
 烈風に乗った高嶋 梓(たかしま・あずさ)からの直接無線にリオは「了解」。衛星通信ができないので、音質が荒い。
 烈風を飛行形態で湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)は操り、機体下部に付けたカメラポッドで下界を撮影する。
 ニ機のイコンが収取した地形データは武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)飛空巡洋戦艦グナイゼナウに回収され、詳細な地図の作成に使われる。
「地形検索システム作動開始。索敵システム、オールグリーン」
 二機から送られるデータを元に、ここが何処なのかを特定しようとする。しかし、該当する地形は幸祐の地図データにはなかった。つまりここは、未踏の土地ということ。
「さらに敵性反応も、人の気配もない。か……」
「ご苦労様です。目視による周辺状況の報告をします。人子一人見当たりません」
 ヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)がそう報告する。ついでに、燃料補給の必要な機体の数を知らせる。
「近場に基地があることから、ここはホットスポットかもな」
 幸祐は尚も警戒を怠らないようにと、各機に通達する。
「了解ですわ。念のために村に待機している部隊に報告しますわ」
 元世界との通信を試みる梓。しかし、衛星通信も無線通信も繋がらない。自動のオープンチャンネルでも。
「真面目だなあいつら」
 オープン無線の会話を無視して、水嶋 一樹(みずしま・かずき)クェイルから飛び降りる。足で、瓦礫の散策へと行く。
「おにーちゃんどこいくの!?」
 調査をほっぽって、何処かへ行く一樹の後を西野 百合子(にしの・ゆりこ)が追う。一樹に「危ないから来るな」と言われるが無視する。
「偵察なんてヤッてられねーよ」
 と、瓦礫の山を観察する。何らかの機会の残骸が多いことを確認する。機工士の彼の目にも見たことのないものばかりが、ゴロゴロと転がっている。こっちの方に一樹の興味がそそられる。
「おっ……これは!?」
「おにーちゃん何見つけたの?」
 瓦礫の山に登る一樹に百合子は問いかける。
「ずっと前からほしかったけど、高くて手が出せなかった電子部品だよ!」
 やや興奮気味に一樹は答えた。
 と、不意に空の様子が変わる。空間を裂くような黒い渦が現れる。
「レーダーに未確認機の反応。敵性反応Unknown」
 ブリュンヒルデが警告すると、それらは突如として空に姿を見せる。
 黒い靄を纏ったそれらは人型をして浮遊していた。
「ねぇねぇなにあれ、格好いい――!」
 突然出現したそれらに、高峯 秋(たかみね・しゅう)は目を輝かせる。排他的でミステリアスなその機体に惹かれる。
「アキ君は気に入ったみたいだけど。大丈夫かな……」
 対してパートナーのエルノ・リンドホルム(えるの・りんどほるむ)は不明機に不安を抱く。攻撃を警戒して、ジャックの火器管制セフティーを解除しておく。
「何者かわからないが、通信を試みてみる」
 トマスは現れた飛行物体に対して、通信を試みる。が応答なし。回線が合わないのだろうか。
 できれば友好的にコンタクトを取りたい。ミカエラはキャンピーを開け、野菊で編んだ花冠を不明機上空から投げ落とす。平和意思を伝えようとする。
 しかし、ここではその好意を「平和」として読み取ってもらえなかったのか、警告なしの機銃攻撃がなされる。花冠が散る。
 レーダーのUnknownマーカーがEnemyへと変貌する。
「我々に攻撃の意思はありません! 攻撃停止を!」
 シフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)がオープン回線で呼びかける。不明機の回線がオフになってないなら繋がるはず。なのに、応答がない。代わりに銃弾が飛んでくる。
「向こうさんは、落とすマンマンだよ!」
 ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)はシフに「こちらから攻撃を仕掛けてはいけませんよ」と言われた手前、反撃はせずに回避に専念する。
「回避マニューバ06! リオ! 舌噛まないように!」
 《高速起動》、ビングイーンへの攻撃をバレルロールでかわす。
「相手の行動パターンの解析の為にも、当たらないでよ、フェル!」
 リオが後方席から激を飛ばした。
 烈風、ニーベリング、ジャック共に回避行動に専念。不用意な攻撃は危険と判断しての行動。
 もとより、この未確認機が敵味方がはっきりしないために、攻撃できないこともある。もしこの不明機が近くの基地からの偵察機である可能性も少なからずある。反撃すれば、未だ残っている交渉の余地を投げ捨てることになりかねない。すでに無いとも言えるが。
 機銃は地上に居る部隊にも注がれる。
 一樹が拾おうとした電子部品は瓦礫の頂上にて銃弾を受けて破砕。垂涎の逸品が散る様に、一樹は怒りが湧き上がるのを感じた。
「お、おのれえええぇ! こうなったら代わりの部品をアイツからもぎ取ってやる!」
「ダメだよおにーちゃん! 勝手なことしたら怒られるよ!」
 クェイルに飛び乗る一樹に続く百合子。彼を宥めようとする。
 しかし空中戦を想定されていないクェイルでは、上空に浮遊する敵に近づくことはできなかった。
 そればかりか、不明機は数を増やす。形が異なる機体が次々と現れる。それらは単一種ではなく、複数の機種があるらしい。
 さらに攻撃は激化する。調査団の呼びかけにも応じす。一方的な攻撃展開される。
 部隊数が調査団を上回る。
「一旦ゲートに引きましょう! このままじゃ応援も呼べない!」
 村の部隊にも通信が届かない。秋穂はユメミに記録させたゲートの位置をレーダーに表示させた。セレナイトで先行する。
 調査団は基地偵察へ向かったギュンター・ビュッヘル(ぎゅんたー・びゅっへる)サミュエル・ユンク(さみゅえる・ゆんく)を残して一時撤退を余儀なくされた。