空京

校長室

重層世界のフェアリーテイル

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重層世界のフェアリーテイル
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リアクション


第四世界・10

「準備万端! 後は金脈を探し出すだけだ!」
 ピッケルやショベルを背中に背負い、ジョン・カポネ(じょん・かぽね)は意気揚々たる様子で拳を振り上げた。
「……思うに、それが一番難しいのではないでしょうか?」
 パック・アップル(ぱっく・あっぷる)がぽそりと呟いた。ジョンの動きがぴたりと止まる。
「……いや、しかしだな。地質学的に見れば、このあたりに金やそれに類する者があったって、おかしくはないと思うんだ」
「その話、本当!?」
 キラキラ、というよりはギラギラと眼を輝かせた氷見 雅(ひみ・みやび)がずんずんと近づいてきて問いかける。
「お……おう。まあ、確率があるってぐらいだけど……」
 その勢いに気圧されながら、ジョンも頷く。
「ゴールドが手に入るなら、ちまちましたお金稼ぎなんてぶっ飛ぶわよ! そうだわ、今からあたし、トレジャーハンターになるわ!」
 ぐっと拳を握って、同じように叫ぶ雅。
「でも、そういうのって、採掘権とかあるんじゃないのですか? よそ者が勝手に掘り返したら、いろいろ問題になりそうなのですよ」
 タンタン・カスタネット(たんたん・かすたねっと)が、雅の背中に水をぶっかけるような調子で言う。ぴくりと雅は動きを止めた。
「……そ、それじゃあ、この町の市長に言って、採掘した金の何パーセントかを受け取るってことでどうかしら?」
「そうだな、土地の人間の協力を得た方がいいだろう。そうと決まれば、さっそく行くぞ!」
「おーっ!」
 4人がすたすたと歩くのを、遠巻きに眺めていた時雨塚 亜鷺(しぐづか・あさぎ)もアゴの舌を撫でてふむとうなった。
「採掘か……確かに面白そうだけど、そんな暇があるかな?」
「……?」
 静かにたたずむジェイムズ・ブラックマン(じぇいむず・ぶらっくまん)が、どういうことだと訪ねるようにごくわずかに首をかしげる。
「どうもこの町は、きな臭いにおいがするよ。いや……この世界、って言った方がいいのかな?」
 日が沈みはじめている。どうやら、ここは夜になると急に冷え込むらしい。亜鷺も震えかける肩を抱いて、視線を町の方に戻した。
「とにかく、こっちはこっちで儲けばなしを見つけよう。行くよ、ジェイ」
 ジェイムズはごくわずかにだけ頷き、主について歩き出した。