リアクション
『地獄の始まり?』
「これで全ての軍事訓練の案が揃ったわけですね」
「そうね。あとはコース順の決定と救急体制の配置」
軍事訓練に向けて、コース順と救急体制を考える沙 鈴(しゃ・りん)と綺羅 瑠璃(きら・るー)。
「……順番はこんなものでいいですわね」
「基本的には水辺を警戒して、ダイバーと潜水装備を」
いくら地獄のツアーと言えど、命を落としては元も子もない。
そう考えた二人は生命の危機に瀕することのないように、と軍事訓練のプログラムを組むことを提案した。
「後は何かあった時に救護・衛生班が動けるように」
「補給班もつつがなく動かさないと」
鈴の提案に瑠璃が付け加える形で計画は進んでいく。
全ての訓練兵が地獄を体験しつつ、本当の地獄に落ちないように。
「落石や落雷なんかは考えられない?」
瑠璃の言葉に鈴は口に手を当て、答える。
「なきにしもあらず、ではないでしょうか。一応それに対処する人たちもいたほうがいいですわね」
「なら、パワードスーツ部隊やAEDも用意してほしいと進言、か」
こうして二人が意見を交わしあうことにより、計画はより綿密に、より磐石な軍人訓練計画が完成した。
夏。熱く暑い夏。あつが、なつい、夏。
ヴァイシャリー湖も例外でなく、浜辺の砂は足の裏を焦がし、太陽の日差しは体全体を責めてくる。
湖にいるなら、何をするか。それは決まって水着に着替えてあそ
「お前たちにはこの地獄の軍事訓練を行ってもらう。教官も訓練兵も心してかかるのだ」
……どうやら、あちらの浜辺で遊んでいるのとは違い、こちらは軍事訓練をやるようだ。夏が、遠い……。
「各訓練兵・ポムクルさんは自己の判断で訓練を受けよ。特にない場合は、行軍に参加することを勧める」
この暑さの中でも、その冷凍視線の温度は冷え冷え。
軍事訓練『泣いたり笑ったりできなくなるツアー』を取り仕切る金 鋭峰(じん・るいふぉん)。水着でもないのに、汗一つかいていない。
「最後に。……生きて戻れ。これは命令である。以上だ」
鋭峰の短い激励の言葉を皮切りに、真夏の軍事訓練が開始される。
……あっちの浜辺で遊ぶ契約者たちを尻目にしながら。