空京

校長室

【選択の絆】夏休みの絆!

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【選択の絆】夏休みの絆!

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『お好きな地獄へおいでませ? 1』

 順調に行軍が進められていく最中、別の場所では各教官による特別な訓練も行われていた。
 そのうちの一つ、野戦調理訓練を担当するオットー・ツェーンリック(おっとー・つぇーんりっく)ヘンリッタ・ツェーンリック(へんりった・つぇーんりっく)
 二人は各訓練兵の調理スピードをチェックしていた。
「あちらの班は手早く進められていますね。手捌きもお見事でございます」
「そちらは……どうやら調理道具の調達に苦労しているようですね」
 今回の訓練で作るのはカレー。しかし、事前に用意したのは米、カレー粉、大鍋、ナイフの四点。
 残りの食材や水、必要な調理道具は全て自分たちで用意しなければならない。
 そんな過酷な訓練を不器用ながらもこなしていく訓練兵たち。続々とオリジナルカレーが出来上がっていく。
 数々のカレーが試食されるたび、教官の二人から厳しい採点がくだる。
 もちろん、合格点に足りなかった者には容赦なくインド人もビックリの激辛カレー(メガ盛り)を完食させられるハメになるのだった。
「さあ、上手に調理するのですよ」
「じゃないとから〜いカレーが待ってますからね?」
 どうやら、ここにも鬼教官はいるようだ。
 ちなみに辛い辛いと言われたものの、不思議とまた食べたくなる美味しさはあったと後に噂されたとかなんとか。

「えーみなさん。今回は数ある訓練の中から、この救護訓練に志願して頂きありがとうございます」
「暑い中でも誰かを助ける。素晴らしい志だと思います」
 それまでの教官たちとは違い、礼儀正しく参加してくれたことへの礼を述べるのは六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)ディング・セストスラビク(でぃんぐ・せすとすらびく)
 彼らは誰かを助けるため、前線を駆けて回る救護・衛生兵の訓練を担当していた。
「さて、最初に聞いておきますが『衛生兵なら通常の訓練より楽だしここにするか〜』……そんな考えのマヌケはいませんね?」
「えっ、だって衛生兵ってそういうもんじゃ」
 鼎の問いにすっとんきょな声をだした志願兵の一人。
 それを聞いた鼎の態度は豹変する。
「戯けが! 衛生兵が生半な志で務まるものか! 戦場で隣り合わせる死から味方を遠ざけることが任務、だからこそ危険な地へ赴くことも多い!」
「あースイッチ入っちゃいましたか」
「さあ、まずは弾幕の回避訓練からだ! 鈍った体を、たたき起こせ!」
 救護訓練、かと思いきやいきなり始まる回避訓練。これには訓練兵たちも困惑せざるをえない。
 が、じっとしてても弾雨に晒される。否応なしに避けに徹する。
「あらら……これが終わったら対イコン模擬戦と救護ですが、言える雰囲気ではないですね。……生き残れたらとっておきの甘味をあげますか」
 飛び交う弾と悲鳴を見聞きしながら、ディングは静かにそう思うのだった。

「いいぞ! 君は実にパワードスーツが似合うね!」
「はーい、配った資料も参考にしてくださいね」
 パワードスーツを着込んだ三船 敬一(みふね・けいいち)、資料を配布する白河 淋(しらかわ・りん)
 ここではパワードスーツの紹介・体験が行われている。
「このパワードスーツ、暑苦しいやら着辛いやらで敬遠されがち。特に夏場は見たくもないという意見もある。が! それ以上のよさを秘めている!」
 拳を握り熱く語る敬一。
「確かに動いたりすれば暑いですが、最近では通気性なども考慮されています。見た目ほど蒸したりはしないんですよ」
 淋のフォローにより、熱さだけでは伝わらない説得力が増す。
「それじゃ塹壕堀をやってみよう! 負荷はかかるがそこは気合で乗り切るんだ!」
「こちらのほうでもフォローします。少しきついけど、頑張ってください」
 二人の指導の下、砂浜には次々と塹壕が掘られていく。
 最初こそヘバっていた者もいたが、慣れていくうちにパワードスーツを使いこなし、その魅力にとりつかれていく。
「いい目だ! その調子で是非! パワードスーツをよろしく!」
 敬一の男気溢れる叫びにオオー!と叫びながら、塹壕を掘り続ける訓練兵。
 この夏、パワードスーツ大ブレイクの予感?