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戦乱の絆 第二部 第一回

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戦乱の絆 第二部 第一回
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リアクション

 1.海底遺跡・入口

 海溝の底に沈んだ巨大な遺跡だった。
 一条の光も差しこまぬ水底に、5000年間忘れられたはずの神殿風の建物が姿を現す。
 時折淡く光って見えるのは、アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)が張った結界の為だろう。
 
 今、遺跡の石段を登り、入口を目指す一団の姿があった。
 半壊したアーチ状の大きな門を抜けると、アーデルハイトは肩で大きく息をした。
「いかがされたのですか? アーデルハイト様」
 手を差し伸べるのは、ロイヤルガードのルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)
 パートナーのエリオ・アルファイ(えりお・あるふぁい)が小さな体を支えた。
 イルミンスール生のホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)リンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)モップス・ベアー(もっぷす・べあー)も慌てて駆け寄る。
 ホイップは手に、星杖・シナモンスティックの明り。
 アーデルハイトが転ばぬよう照らす。
 周囲の者達も、外野から心配そうに彼女の様子を見守る。
 それもそのはず――いま、この遺跡の結界を維持しているのは、かの小さな魔女の力だけなのだ!
「大丈夫じゃ」
 アーデルハイトはいつもの笑みを見せると、大儀そうに片手を振った。
「ちぃっとばかり、疲れただけじゃ。
 これだけ大きな遺跡じゃからのう……」
 ふうっと、大きく息を吐き切った。
「海溝の底ともなれば、圧力を安定させるだけでも、並々ならぬ力が必要でな。
 そうした次第で、私はついて行くだけで精いっぱいじゃ。後は、頼んだぞ!」
 
 一行は、ルドルフ、リンネ、ホイップ、セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)らのロイヤルガードを先頭に、アーデルハイトを中心にして進む。
 彼女を囲むのは、彼女に縁の深いイルミンスールの生徒達。
 それは、彼女への敬愛やら、親しみやら、信頼やらの表れでもある。
 だがそれは、イルミンスール生に限ったことではない。
「アーデルハイトは……」
 そうした日頃の気安さから、薔薇の学舎のスレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)は気軽に尋ねたのだった。
「最後の女王器を見つけて、本当にアイシャに渡ちまうつもりなのか?」
「そうじゃが……何か、不都合でもあるのか?」
 スレヴィは眉をひそめて、存念を伝える。
「俺は、アイシャは『アムリアナ様』ばかりで、自分の考えがなくて……何考えてんだかわからない!
 女王様なんだからさ! もう少し自分の意見があってもいい、と思うんだけど。
 だから、さ。
 女王器が見つかったら、しばらく預かって貰いたいんだが……無理か?」
「ふむ、なるほどな」
 アーデルハイドは頷いたが。
「じゃが、女王様を疑うというのは、不敬というもの。
 申し訳ないこと……じゃが」
 アーデルハイトは少し考え込み始めた。
 しかし、そのまま一行は遺跡の入り口を目指したのだった。
 
 目の前に、巨大な神殿と見紛う半壊した建物がそびえたつ。
 その、ぽっかりと空いた、太古は扉がついていただろう大きな四角い入口の前で。
「さて、固まっていてもはかどらないな……分かれることにするか」
 ルドルフの提案で、一行は以下の隊に分かれて、捜索を開始することとなった。
 
 ・アーデルハイトを中心にした本隊。
 (ホイップとリンネは、ここ)
 ・ルドルフを中心とした隊。
 ・セイニィとパッフェルを中心にした隊。
 ・ロイヤルガード「皇甫 伽羅」の隊【理子’Sラフネックス】。
 ・単独の「女王器探索」。
 
 そして、入口付近で追手の足止めを図らんとする「帝国軍迎撃隊」。
 
 不意に、ロイヤルガード達の携帯電話がけたたましく鳴った。
 着信表示は海上の部隊から。
「何!? こちらへ帝国軍が向かっただと?」
 チッと舌打ちしたのは、セイニィ。
 体内から星双剣グレートキャッツを取り出す。
「こんなに早く、動かれちゃね!」
 だが戻ろうとしたセイニィの腕を、パッフェルがつかんだ。
「駄目、セイニィ。
 女王器を捜す方が先決。ロイヤルガードでしょ?」
「うっ」
 セイニィの動きが止まる。
 それに、とパッフェルは言葉を続ける。
「彼らを信じましょうよ!」
 開いた方の手で、門の前を指さす。
 そこでは――水神 樹(みなかみ・いつき)らの迎撃隊のメンバーが、帝国軍の兵士達、及びクローン・シャムシエル達を打つべく準備をはじめていた。
 パッフェルらの視線に気づいて、武器を軽く掲げて見せる。アーデルハイトが陽気に笑った。
「そういう訳じゃ、パッフェル、セイニィ。
 心配無用! では先を急ぐとするかのう?」
 
 捜索隊のメンバーは、本体から順に、遺跡の中へ侵入して行く――。
 シャムシエルをはじめとする帝国軍の追手が遺跡に到着したのは、直後のことだった。