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戦乱の絆 第二部 第一回

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戦乱の絆 第二部 第一回
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 4.女王器の捜索〜ルドルフ隊〜
 
 さて、「ルドルフを中心とした隊」の結果はどうだったであろう?
 
 ■

 分かれ道の手前で、ルドルフを中心とする女王器探索隊は、一番危険そうな細い通路を選んだ。
「ともあれ、これは僕の意志だ。
 女王器を捜すのも大事だが、仲間を守ることも大切なことだと思う」
 そうして、探索中に隊員以外の学生から助けを求める連絡が入れば、すぐに駆けつける旨も通達した。
 もちろん、このことに反対する隊員達は、1人もいなかった。
「さすがだね! ルドルフさん!」
 薔薇の学舎のヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)は、感極まったふりをして、ルドルフに抱きつく。
 その際、ぼそっと。
「ウゲンに気をつけて下さいね?
 俺達も注意しますから」
 耳元で囁いて、サッと離れた。
 ルドルフは面食らった様子だったが、片手で答える。
「では、出発しよう!」
 
 そして一行は数ある選択の中で、「最も危険な通路」に足を踏み入れたのであった。
 
 ■
 
 他ルドルフ隊の隊員数は16名で、以下の者達であった。
 
 スレヴィ・ユシライネン。
 アレフティナ・ストルイピン(あれふてぃな・すとるいぴん)
 瑞江 響(みずえ・ひびき)
 アイザック・スコット(あいざっく・すこっと)
 清泉 北都(いずみ・ほくと)
 クナイ・アヤシ(くない・あやし)
 度会 鈴鹿(わたらい・すずか)
 織部 イル(おりべ・いる)
 茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)
 レオン・カシミール(れおん・かしみーる)
 リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)
 シーナ・アマング(しーな・あまんぐ)
 ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)
 ウィリアム・セシル(うぃりあむ・せしる)

 先を行くのは、清泉 北都。
 水中用ライトを使い、周囲を照らす。
 犬の格好となっているのは、超感覚を発動しているため。禁猟区で警戒と、自分への安全も怠らない。
 彼は薔薇の学舎の生徒だ。
 そのためルドルフをサポートするつもりで来たのだが、照明役となるものがいなかったため、実に重宝がられたのだった。
 遺跡は深海にあるため、どこも暗闇の中なのだ。
「これで遺跡探索は、万全だねぇ!」
「けれど、急に敵が襲撃してきたら、どうするのでございますか?」
 クナイ・アヤシは『オートガード』と『オートバリア』で防御力を上げる。
 ついでに禁猟区で危険を測りつつ、ゴーレムを先に進ませようとした。
「……と、その前に。
 御意見番にどちらに行くのか? お伺い致しませんと」
 ゴーレムを操作しつつ、瑞江 響をのぞき込む。
「響様、今度はどちちが怪しそうでございましょう?」
「……右だ」
 響は悩んだ末に、二股の通路の内、右側を指さした。
「トレジャーセンスの反応だがな」
「何とも曖昧な根拠ですね?
 そうは思いません? ルドルフさん」
 度会 鈴鹿は、同じロイヤルガード仲間のルドルフに意見を求める。
「女王器ではないかもしれませんし……」
「ご懸念は、ごもっともなこと。
 けれど、無いよりはましかと」
 ルドルフにしてもあまり気は進まないが、仕方がないということらしい。
「ものはためしと言うことで、行くぞ!」
 号令がかかる。
 全員右側の細い通路を目指そうとして、北都に止められた。
「待って下さい!
 まずは、クナイのゴーレムを先導させますから」
 
 ……そして間もなく、ゴーレムは「落とし穴」トラップの底にある針の山の犠牲となるのであった。
 
「うん、トラップは回避できたしねぇ
 落とし穴を迂回して、右側の通路に入りましょう! ルドルフさん」
 
 だが無防備に入った右側の通路に入ったところで、一行は戦闘を行う羽目となった。
 
 ■
 
「挟み撃ちかっ!」
 しまった! ルドルフは剣を抜き去る。
 
 背後からは、機関砲の掃射が。
 正面からは、機晶姫の兵士達が向かってくる。
 
 アーデルハイトらを襲った者達と同形式だが、手にしている武器は大きなブレードだ。
 
 だが、退くわけにはいかない。
 この先に、彼等に助けを求める探索者達がいるのだ。
 彼等は携帯電話を通じて、ルドルフ達に救助を求めていた。
 クナイの銃型HCでのマッピングデータで確認したが、自分達が一番近いように思われる。
「せめて、彼らと合流するまで。
 ここは押し通らなければならない、か……」
 ルドルフが片手を上げる。
 それを合図に、隊員達は戦闘配置についた。
「遺跡に着くまでの間、光源をはじめとする探索要員達は内側へ!
 残りのものは、打って出るぞ!」
「いいえ!
 僕らにも加勢させて下さい! ルドルフさん!!」
 北都達はルドルフに哀願した。
「ここは俺とアイザックに任せて先に行ってください!」
 響は自分達が犠牲になることを願い出る。
 元々そのつもりだったのだ。
 だがルドルフは頑固に頭を振る。
「駄目だ! 君達に万一の事があれば!
 僕らは女王器まで辿り着くことができないのだ。
 救助を待つ学生達の事も大事だが、任務の為にこらえてくれ!」
 無意識のうちに、仮面に手をかけた。その内側には傷がある。
 そうだ、この傷に誓って! 自分は誰も失ってはならないのだと
 リュース・ティアーレとシーナ・アマングを呼ぶ。
 2人とも、ルドルフの信頼にたる人物だ。
 彼らはルドルフや、仲間の言葉しか聞かない。
 ほかに茅野瀬 衿栖と、響を守るためにアイザック・スコットが加わった。
「守ってくれ! 頼んだぞ!」
 
 そしてルドルフは、他の学生達と共に、遺跡の防衛システムに立ち向かった。
 
「ルドルフさんはああいうが、響行くぜ!」
 アイザックは響をつついて、攻撃を促す。
 響とこの国を守る為なら、オレ様は誰よりも強くなれる!
 彼はそう考えている。
 そのためにはこの隊を、何としてでも帝国よりも先に、女王器の下へ辿り着かせなければならない。
 それは響の考えも同じこと。
「よし、行くぜ、響!
 呼吸を合わせて……同時に攻撃するぞ!」
 光術で敵の視界を奪ったすきに、響が栄光の刀で斬り捨てる。
 ルドルフは気づいたようだったが、ふっと笑っただけだった。
「無茶はするんじゃないぞ」
「は、はい! メンデルスゾーンさん!」

 最も活躍したのは、やはりリュース・ティアーレとシーナ・アマングだ。
「ヴィーが遺跡の捜索を行うと言うんで来たんですが。
 相手が機晶姫とは考えませんでしたね」
 だが誰であれ、探索者達を守るのが、自分達の務めだ。
 ウルクの剣を構えて、相手を殺すつもりで攻撃に行く。
 その際、気になったのはやや離れた位置にいる少女。
「ウゲン氏のフラワシを所持する契約者、ですか」
 彼女――衿栖はまだ所有はしていないが、ウゲンに目をつけられる要素は十分にあるのだ。
「念のため、ヴィーに知らせておきますか」
 そのヴィナ・アーダベルトは隊の後方で、ウィリアム・セシルと共に戦っている。
 
 衿栖はフラワシを使っていた。
 5種類のフラワシ――粘体のフラワシ、慈悲のフラワシ、焔のフラワシ、僥倖のフラワシ、鉄のフラワシは合成されてひとつとなり、衿栖の忠実な僕となる。
「これで、ウゲンさんの眼鏡にかないますでしょうか?」
 後々、必要なのですけどね……。
 特に、シャムシェルとか、と思う。
 衿栖フラワシは結局、機晶姫どもの露払い役となった。
「まぁ、先はありますし。
 ウゲンさんもいないことですし。
 フラワシを頂くためには、目立つしかありませんよね……」
「衿栖、あぶない!」
 レオン・カシミールは、武器で機晶姫達の攻撃をしのいだ。
 衿栖のフラワシで機能停止したはずのものである。
「今わかったことなんだが」
 携帯電話をみせた。
 彼は根回しやユビキタスを使用し、主に戦闘や遺跡に関する情報を集めていた。
「この機晶姫達は、止めを刺さないと襲い掛かってくる。
 フラワシの力で薙ぎ払うだけでは、駄目だ」
 
 後方に下がってきたところで。
「そのフラワシの事だけど……」
 ヴィナは眉をひそめつつ、衿栖に近づいた。
「ウゲン卿の目に叶いたいとか。
 なぜ、彼のフラワシが必要なんだい?」
「シャムシエル対策です!」
 えっへんと衿栖は胸を張る。
 レオンが穏やかなしぐさで、補足した。
「何でも強力なフラワシだとか。
 それならば、あのシャムシエルが何人かかってこようと、一網打尽だろ?」
「そ、それはそうだけど……」
 君は、あのウゲン卿のことを、胡散臭いとは思わないのかい?
 だが話は、機関砲の射撃で打ち切りとなる。
 悪い奴ではなさそうだが、と思う。
「ウゲン卿と現状どうのこうのというわけでもなさそうだし。
 しばらくは、様子を見るとするか」
 取りあえず警戒すべき相手ではないだろう。
 そう判断して、ヴィナはウィリアムと共にリュースが存分に立ちまわれるよう、後方支援を続けるのであった。
 
 ■

「よし、正面の道が開いた!
 押し通るぞ!」
 ルドルフの言葉が、狭い通路に響く。
 力は強くとも、攻撃役の人数が少ないため、完全に制圧することは難しい。
 一行はルドルフの判断の下、機晶姫を倒して開いた空間から、走って逃げることとした。
 機晶姫達の歩行速度は遅い。
 走って追いかけるプログラムは、施されていないようだ。
「いくぞ、走れ!」

 声と共に、一行は正面突破を図る。
 落とし穴トラップに落ちかけた学生を助けたのは、機晶姫兵達の姿が見えなくなって、機関砲の鈍い音も届かなくなった頃だった。
 
 ■
 
 こうして、ルドルフ隊は他の捜索隊員達の行動を助けた為、多くの学生から感謝されることになるが、到着は一行の中で一番最後となった。
 それでも何とかレリーフ前に到着できたのは、響のトレジャーセンスに頼った結果である。