空京

校長室

戦乱の絆 第二部 第一回

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戦乱の絆 第二部 第一回
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リアクション

 7.女王器の捜索〜その他〜

「単独の女王器探索者」の結果はどうだったであろう?

 ■
 
 前原 拓海(まえばら・たくみ)はロイヤルガードとしての職務を全うするため、女王器の確保に全力を傾けていた。
 知人や、ロイヤルガード情報網を通じて、内外の戦況は拓海の携帯電話を通じて、絶え間なく報じられる。
「何と言う、野蛮な国家なのだ!
 エリュシオンという国は!」
 一方的な侵略の情報を聞かされ続けるにつれ、彼は改めて帝国を憎々しく思った。
「奴等にシャンバラ人の生殺与奪権利はない!
 シャンバラの事はシャンバラで決める。
 これ以上の内政干渉は許せん!」
 そのためにも、彼は帝国軍よりも早く、女王器を発見する必要があるのだ。

 一方で、パートナーのフィオナ・ストークス(ふぃおな・すとーくす)は、洋上と海底の様を思い浮かべて、1人そっと息を吐く。
「哀しいけどこれが戦争なのですね……」
 視線を地に落とす。
 ゆったりとした動作で、自分の銃型HCを拓海の篭手型HCにデータリンクさせて、オートマップを送信した。
「それを頼りに進んで下さいましー。
 これまでのデータ、
 遭遇した学生達から預かったデータ、
 携帯で得た拓海さんからの情報から割り出したデータが入ってますわよ〜」
「す、すまない」
 拓海はようやく憤りを押さえると、今度は仲間のアシュレイ・ビジョルド(あしゅれい・びじょるど)ゆるやか 戦車(ゆるやか・せんしゃ)を気遣った。
「ビジョルドさん達は、取りあえず俺の後ろにいて下さい。
 僕が先導しますからね?」
 そう言って取りだしたのは、光条兵器。
 暗い通路の先を静かに照らし出す。
「はい、前原さん」
 アシュレイは素直に頷く。
 そして微笑ましそうに振り向くと、フィオナにそっと耳打ちするのだった。
「前原さんは、今回もお役目に一生懸命なのですね。
 でもフィオナさんがいないと、危なっかしいみたい。
 頼みますね?」

 4人きりで行動する彼等には、他の学生達との連携が不可欠だ。
 その点、拓海はロイヤルガードの為、他の学生に比べてより速く、より多くの情報を得ることが出来る。
 拓海は携帯電話を切って、仲間達に報告する。
「アーデルハイト達はもう到着したそうだ。
 女王像のレリーフの有る場所で待機しているということだ。
 だが、そこが女王器のある場所への最後の難関かどうかはまだ分かってない。
 ルドルフ達はまだ途中で、罠にかかって救助を求める学生達の捜索に手間取っているようだ」
「ではルドルフさん達の到着が一番遅くなりそうですね?
 探索隊の助けをされながらの活動のようですし。
 それにしても、大きな女王像の前ですか……」
 ふと思うことがあって、アシュレイは拓海に尋ねてみた。
「最後の女王器……私はイコンかな? って思っています」
「イコン? 私はまた、女王器は『強化型光条兵器』の一種かと……」
 フィオナは口元に手を当てる。
「うん、光条兵器……か……」
 試しに拓海は様々な方角に自分の光条兵器を傾けたが、何の反応も見せなかった。
「イコンだったら、反応しないかも?」
 アシュレイは提言してみた。
「あのシャムシエルに奪わせようというのだから、十二星華が関係した凄いものなのだと思います。
 イコン――私の予想が当たっているのなら、大きなものが置かれていそうな場所を目指す方がいいのかも?」
「イコンねぇ……」

 拓海は話半分に聞いていたが、彼女の予想は別の者の手により正しかったことが判明するのである。

 ■

 その運命の発見者となる月詠 司(つくよみ・つかさ)は、まさか自分が大発見をするとは思いもよらずに、遺跡の中を彷徨っていた。
 考古学は彼の得意分野である。
 にもかかわらず、どこを探しても、この海底遺跡に関する資料はなかった。
 そうした次第で出たとこ勝負で、元々の知識を生かして探索をしていた。
 供はパートナーのタァウ・マオ・アバター(たぁう・まおあばたー)1人。
「マオくんと2人きり、ですか。
 女王器はさすがに無理でも、データや資料くらい何とかならないもんですかね?」
 そうしてふらふらと暗闇の中をダークビジョンの視界を頼りに、彷徨っていたのだった。
 それでも、彼等がさほどトラップにかかったりしなかったのは、彼が持つ「考古学」の知識と、タァウの「歴史」や「神話」の知識のお陰だ。
 ザッとみた建物の全体像と、遺跡の内部に彫られた装飾から、彼等は近々有り得そうなトラップと位置を予測。
 そうして解読して行くうちに、実はこの装飾こそ! 膨大な遺跡の資料やデータそのものであることを知るのだった。
「はぁ、灯台下暗し、とはよく言ったものですね!」
 
 そうして彼等は世紀の大発見をした後、機関砲のトラップに悩まされる羽目となる。
 携帯電話で、学生たち全員に知らせた後で。
「わ、わかりましたぁっ!!
 ここは……この神殿全体が、女王器の……巨大なイコンのドックなんですねええええええっ!」

 ■

「え? イコンのドック???」
 お、おい、月読?
 拓海はもしもし、と幾度も怒鳴った後、携帯電話を切る。
 振り向くと、アシュレイが目を輝かせて立っている。
「ここって、やっぱり女王器って、イコンなのですね?」
「ああ、でも発見者の月読達が危ない!
 俺達では場所が遠すぎて……そうだ! ルドルフ達に頼んでみよう!
 近くにいるとよいのだが……」

 携帯電話で連絡する。
 その拓海達も、戦闘に突入することとなるのだった。
 
 ギギギ……侵入者発見……攻撃……ギギッ……開始スル……。

 防御システムと思しき警告が、脳に響く。
 テレパシーのような声だ。
 程なくしてふらりと宙から現れた機晶姫の兵士達は、鞭を伸ばして拓海達を容赦なく攻撃する。
「ほれ、こっちであります!」
 ゆるやか 戦車(ゆるやか・せんしゃ)は碧血のカーマインで威嚇射撃を行う。
 機晶姫兵達のターゲットが、戦車とアシュレイに変わる。
 彼女はそのタイミングを逃さなかった。
「私はアシュレイ・ビジョルド」
 警告を用いて、自分の身分を明かす。
「ここへはアイシャ女王の命令で来たのですよ、下がりなさい!」
 アシュレイは機晶姫兵達を威嚇する。
 一見無情に見える機晶姫達の動きに、畏怖らしい感情が見られる。
 効果はあったようだ。
「さ、前原さん。
 今のうちに逃げましょう!」
「あ、ああ、そうだな。
 こいつらは遺跡を守る女王の兵士――いわば本来は味方になるべきはずの者どもと言う訳だ。
 無益な殺生をしていい道理はないな」
 すり抜けざまに、拓海の携帯電話にルドルフからの連絡があった。
 二言三言やり取りをした後、電話を切る。
 一行に告げる拓海の表情は晴れやかなものだった。
「月読達は無事救出されたそうだ。
 それと到着した奴らが、互いのマッピングデータや、遺跡の知識を交換し合って、ルートの全体像を把握し始めているらしい。
 中心になっているのは本隊だから、アーデルハイトに連絡しよう。
 巧く行けば、誘導してもらえるだろう」

 ■

 こうして、拓海や司達、単独の探索者達は無事に問題のレリーフの前に集合することが出来た。
 だが、装備やスキル等に不備のあった者達の多くは、遺跡のトラップにかかってしまい、女王器のある場所へはたどり着くことは出来なかった。