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戦乱の絆 第二部 第一回

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戦乱の絆 第二部 第一回
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リアクション

 6.女王器の捜索〜【理子’Sラフネックス】隊〜

 ロイヤルガード「皇甫 伽羅の隊(【理子’Sラフネックス】)」の結果はどうだったであろう?

 ■
 
 皇甫 伽羅の隊は、一番遅れて出発した。
 最大の誤算は、「ダウジング」が役に立たなかったことである。
 彼女達はダウジングで、最も希少な物質のある場所を探そうとしたのだが。
 ロッドはいつまでも回り続け、正確な方角を示さない。
 アーデルハイトの隊同様、仕舞いにはどこぞへ飛んで行ってしまいかねない勢いである。
「女王器の反応が強烈過ぎて、測りきれません」
「つまり、それほど重要なものを探しているということなのね? 私達」
 投げやりな感想を人事のように述べて、さてどうしたものか? と首を捻る。
 仕方なく地道に他の参加者と情報収集をしてから、相沢洋介主導の下、銃型HCでマップ情報を作成しはじめる。
 だが他の参加者達もトラップ等で思うように先へは進めないことから、予想以上に時間がかかってしまった。
「これ以上は、石扉が持ちません。早く!」
 シャムシエル達、帝国軍が石扉を破壊する音が聞こえてくる。
「では行くぞ!」
 最後に伽羅は隊員達の適性に応じて編成を決めてから、マッピングデータから割り出した「想定される女王器の場所」と、そこへ至る「最も安全な道」から通路を選び、探索を開始した。
 ちなみに、主要メンバーの編成は以下の通りである。

・統制
 皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)
 うんちょう タン(うんちょう・たん)

・探索兼偵察任務
 相沢 洋(あいざわ・ひろし)
 乃木坂 みと(のぎさか・みと)
 アクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)
 アカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)

・対敵警戒・排除任務
 ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)
 神矢 美悠(かみや・みゆう)

 暗い通路に、明りは必須だ。
 乃木坂 みと(のぎさか・みと)は光精の指輪で通路内部の光源を生み出す。
 仲間に注意を促しつつ。
「洋さま、映画などでは大事な宝を収めた場所にはトラップ、ガーディアンの可能性があります。ご注意を」
「ああ、わかっている」
 相沢 洋(あいざわ・ひろし)は彼女の光源で照らされた辺りをいちいち確かめながら、作成された銃型HCのマップ情報と照らし合わせ、隊を導いていた。
 それでも分からない場所は、やむなくトジャーセンスに頼る。
「とはいえ、この、『なんとなく、こっちだ!』みたいな感覚。
 こう、もやもやするな」
 深い息を吐く。
 ダウジングさえ使えたなら、と考える。かの要員達の支援をしながらマップ情報を取り扱うだけで済んだ。
 彼はこのほかに索敵も行わなくてはならないのだ。軽口をたたく余裕もない。

「まったく! けど、仕方がないよ!
 それにあながち外れてもいないみたいだし、それ」
 洋を慰めたのは、同じマッピング要員のアクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)
 とはいえ、アクィラは帰り道と現在位置の把握の為に作成している。
 分岐地点の進行方向判断等も、彼の仕事だ。
 責任重大で、苦労の連続だが。
「でも迷ったり、帰れなくなったら、元も子もないもんな!」
 財産管理による測量計算が続いたせいだろう。
 根をつめ過ぎた為に、つい、ふわぁと欠伸が出る。
 だが、そのようすを見ていたパートナーのアカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)は、ふてくされて首根っこを掴んだ。
 自分の銃型HCを眺めつつ。
「ぶつぶつ言う暇があったら、きちんと地図を作りなさいよ。
 ……ええっと、さっきの坂の勾配がこうで、曲率がこうだから……(ぶつぶつ)」




 一行は海底堆積物(つまり、泥)の多くたまった通路を行く。
 場所によっては腰までつかりながら、それでも女王器目指して突き進むのであった。
「つまり、建物の外側に近い通路、ということか」
 泥は当然外から海水に混ざって入る。
 屋根ごと崩壊でもしてない限りは、内側にたまるということは考えにくい。
 洋は上を見た。天井は落してはいたが、海の様子が見えるというほどでもない。
 アクティラが不思議そうに。
「けど情報では、ここが一番トラップが見つかってない場所だって。
 女王器への隠し通路かもって話だけど、違うのか?」
「さぁ……ただ行程が長い分、罠を減らしたのか?
 それとも、元々あったトラップが利かないだけか?」
 前者は分からないが、後者は有りうるだろうな、と洋は思った。
 5000年という歳月である。
 しかも海の底だ。
 あるいは沈没の際に壊れてしまったトラップだって、あったに違いない。



 三叉路に出た所で、伽羅の携帯電話が鳴った。
 リンネからだ。
「そうですか、本隊は既におつきになられたのですね?
 え? レリーフのある行き止まり……」
 眉をひそめる。
 わかりました、と言って電話を切った。
 隊員達に向かっては、号令をかける。
「急ぎ、アーデルハイト様達と合流しますよぉ〜。
 女王器の場所を探しあてたらしいですぅ〜」
 だがその命令を受けた洋達マッピング要員は、顔を真っ青にするのだった。
「さすがにこの道のデータはない、か。
 誰も通ってないようだし……さて、どうしたものか?」

 それは不思議な三叉路なのだ!
 1つ入ると、迷路のようになっていて、また同じ場所へと戻ってしまう。 それを既に二回繰り返していた。
 その構造は分からず、どうしたらよいものか? 見当もつかない。
「地上にあった時は、これで侵入者たちが迷っているうちに、御用! だったんだわ!きっと」
 アカリが推測する。
 安全な道には、やはりそれなりの工夫が施されている、と言う訳だ。
「それにしてもまあ、よくもこんな遺跡を作ったもんだよ」
 あまりの複雑で難解な謎に、アクティラはいいかげん嫌気がさしていた。

 物音が聞こえてきたのは、その時だった。

 ■

 いち早く気づいたのは、ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)
 殺気看破が感知したのだ。
「帝国軍?」
 神矢 美悠(かみや・みゆう)のフラワシが危機を知らせるかの如く、彼女の下へ戻ってくる。
「気をつけるのだ! アクィラ!」
 後方警戒に当たっていたアクィラは、闇の果てを凝視する。
「え? 何? 敵襲なの?」
「後ろだ、横に飛べ!」
 アクティラは反射的に右に避けた。
 キンッと、背後から槍が飛んでくる。
「うわ、あぶねぇ! 助かったよ、ケーニッヒ」

 ケーニッヒは敵を見据えた。
 槍を構えたパラディン達がいる。
 数にして、10名程――彼等は帝国軍の兵士たちだ。
 伽羅隊は行動が遅れた為、追いつかれたらしい。
「敵襲! 火力を前面に押し出せ! 
 みと! 魔力砲撃!」
 洋が叫ぶ。
 みとの火術、雷術、氷術に合わせ、マシンピストルによる弾幕援護を発動させる。
 
「はわわわわ……」
 もうもうたる煙の中で、伽羅はうろたえる。
「大変なことになったのですよぉ〜、どうしましょう?」
「義姉者、落ち着きなされ」
 うんちょう タン(うんちょう・たん)の声。
 だが、その姿は見えない。
 光学迷彩とカモフラージュを駆使して、いざとなれば伽羅の盾となるつもりなのだ。
「ありがとうございます、タン」
 そうだ! 自分は隊の指揮官なのだ!
 伽羅は心を静めつつ、冷静に戦況を見極めようとした。
「数が少ないですぅ〜……先兵ですね?」
 彼らをどうにかすれば、追手も撒けますぅ〜。
 ケーニッヒ、大丈夫ですかぁ〜?」
「はっ、ここは我にお任せを!」
 遠くを見て、眉をひそめる。
「前からも殺気……新手か?」

 背後の帝国軍は美悠に任せて、ケーニッヒは先頭に立った。
「みと、明りを!」
 ケーニッヒは光精の指輪を移動させて、敵の正体を見定めた。
 正面に、鞭やマシンガンを抱えた機晶姫の兵士達。
 圧倒的な数だ!
 彼等は音もなく幽霊のように現れる。
「寝た子を起こしてしまったようだ。
 侵入者用のセンサーでもあって、戦闘を感知しているのであろう」
「帝国の方は引き受けてやるよ!」
 美悠は陽気に告げて、ミラージュやフォースフィールドで守りを固める。
 サイコキネシスで手榴弾を兵士達の中央へと転がし、炸裂させた。
 帝国軍が沈黙している隙に、ケーニッヒは神速で素早さを上昇させ、軽身功で壁や天井を移動。
 機晶姫兵達の背後に回り込んで急襲した。
「どぉりゃあああッッッ!!!!」
 瞬く間に、幾体もの機晶姫兵達が地に伏す。
 だが倒しても倒しても、彼等は音もなく幽霊のように現れる。
 一定数を割ると、機械的にテレポートで送り込まれて来るシステムのようだ。キリがない。
「ここは人数的に不利だな! 逃げた方がいい!」
「では、俺が煙幕を!
 隊長達はその隙に!!」
 アクィラの袖をひっぱり、アカリは2人して後方から弾幕援護を行った。
 煙の中で帝国軍の先兵たちは標的を見失い、センサーの働かない機晶姫兵達はきょろきょろと周囲を見回す。

 その間に、一行はまだ入ったことのない道に、えいっとばかりに足を踏み入れた。
 携帯電話が振動して、ルドルフ隊と伽羅の電話がつながったのは、それから間もなくの事。
「そう、皆さん無事なのですね?
 また救助活動に戻る、と……そう。考古学に詳しい方がトラップに? 月読司さん?
 万一遺跡のデータをお持ちでしたら、三叉路の謎を教えて頂きたいですぅ〜」

 ■

 伽羅達は考古学を用いて遺跡を調査している者達と連絡を取り、「迷路トラップ」を無事にクリアする。
 3つの道を、すべて違う入口から入ると出口につながるが、出口の前では「機晶姫」のトラップがあるかもしれない――という話だった。
 行程中、最大の難所を制覇した伽羅達は、その後「一番安全で、長い近道」と目されたその通路を進み、アーデルハイト達と合流できた。
 総ては細やかな仲間達との情報収集と、データ分析、そして各自が己の能力を最大限に生かしきった結果だ。

 ……だがその結果は、帝国軍の先兵たちの生き残りにより、「最安全ルート」の報告がシャムシエル達に伝達されることにもつながったのである。