校長室
戦乱の絆 第二部 第一回
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3.女王器の捜索〜アーデルハイトの本隊〜 それでは「アーデルハイトを中心にした本隊」の結果について、ここでは語ることとしよう。 ■。 「ふむ、こっちらしいかも? そういうのじゃな? 美羽」 石壁トラップから分かれ道に入る前――アーデルハイトは、道の選定に当たって小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の助言を聞き入れた。 アーデルハイトの魔力をもってすれば、当然女王器の位置はたやすく分かろう。 だが、彼女の力はいま、使えない。 そういった次第で、学生達の力を使うしかなかった。 そう、例えば、美羽のような――。 「う……ん、でも、トレジャーセンスの反応なのよね? だ、大丈夫かな?」 「そ、んなこと聞かれてものう……」 アーデルハイトは困り果てて。 「皆の者! ほかに何か良い知恵はないだろうか?」 ザッと本隊の面々を見渡す。 しかし彼等の中で、現状よりよい案を提示できるものはいない。 仕方がないので、「こっち!」という美羽の言葉に従うことに決めた。 「まあ、マッピング要員もいることだし。 注意深く進めば、何とかなるじゃろう。 明るい材料は、宝探しがイルミンの十八番ということだけだが……くわばら、くわばら〜」 ■ そうして進んだ道は、比較的広い通路だった。 漆黒の闇の先を、ホイップ・ノーンの星杖が照らす。 通路の石壁には細かな彫刻が施され、何やら荘厳な雰囲気を醸し出す。 石畳の路面を含めて崩落が少ないのは、遺跡の比較的内部にあるためと思われる。 深海の生物も、内部までは侵入できなかったのか? 時折ウミユリらしき死骸が現れるほかは、深層水の水たまりしか見られなかった。 「女王器へとつながる、『正しき道』。 もしくは、数ある正しい道の中で『最もメインな通路』。 そう取ってもいいのかしら?」 パートナー・霊装 シンベルミネ(れいそう・しんべるみね)の銃型HCで行程を確認しつつ、四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)は首を捻る。 彼女達はいわゆる「マッピング要員」だ。 そのうえ道は一本ではなく、時折二股にも三股にも分かれる。 ダウジングを使う。ダウジングロッドは、お答えできません、とばかりに激しく回転して空に飛んで行ってしまった。この方法は使えそうにない。 「美羽のトレジャーセンスを頼るしか、なさそうじゃのう」 後方で、アーデルハイトがひっそりと溜め息をつくのだった。 「あまり効率的な方法とは言えないが、のう……」 だが、道の難解さは複数に分かれることばかりではない。 落とし穴や砲台等の、遺跡を守る数々のトラップにも注意せねばならないのだ。 試行錯誤した末に、唯乃達は超感覚とイナンナの加護に頼ることにした。 それとは別にガーディアンのトラップ対策は、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)とミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)の2名に任せてある。 彼女達は禁猟区を通じて、危険を察っする手筈であった。 「苦しい時の神頼み、てこのことよね?」 命がかかるプレッシャーの大きさに、唯乃ははぁと肩を落とした。 が、それでも探索をやめないのには訳がある。 (女王器と、ついでにお宝さがしよ! 発掘して、発掘しまくっちゃうわよ! だって、面白そうじゃない?) もっとも、危険を冒して進む「先導役」は彼女たちばかりではなかった。 有事に備えて2名のロイヤルガード達――美羽とホイップが。 その後ろには、ホイップの恋人であるエル・ウィンド(える・うぃんど)とホワイト・カラー(ほわいと・からー)が控える。 アーデルハイト様に何かあっては大変だ! お守りしよう! そう提案したのは、確かにエルの方だった。 だがそのことを一行に伝えたとたん、アーデルハイトは別の事を要求したのだった。 「私を守る学生達は多いが、明り役がおらんでな。 道の暗さは、道の危険性と比例するじゃろう。 ホイップを照明役に貸してくださらんかな?」 「わかりました、アーデルハイト様」 ただし、とエルは食い下がった。 「ボクもホイップも、イルミンスールの生徒です。 喜んで皆さんを先導しますが、アーデルハイト様の事も守らせて下さい」 と。 そうして背格好の似たホワイトを変装させて「偽アーデルハイト」として守りつつ、本物はなぜかバニースーツを着せて別人のようになり済ませ、他の者達に任せたのだった。 海溝の底は寒い。アーデルハイトは露出した肌をさすりつつ、「魔女っ子がいいのう」と時折ぼやきつつ、くしゃみを連発させたとか。 エルの前では、美羽とホイップが会話をしている。 「リコのためにも! 一緒にロイヤルガードのお仕事頑張ろうね? ホイムゥ」 「はい、美羽さん!」 彼女達はロイヤルガードの上に仲がいい。 何が楽しいのか、絶えずくすくす笑っては、子猫のようにじゃれあっている。 ボクとホイップじゃ、ここまでは出来ないよな……。 もはや公然の恋仲とはいえ、エルは仲間達の前でイチャツクことは難しい……と言うよりは、まだ気恥ずかしいのだ。 女友達って、得だぜ。 月並みな結論を捻りだす。エルはコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)の傍らで、1人寂しい思いをするのであった。 「ううっ、キミもちゃんと美羽と、その、いろいろと頑張れよな!」 「はぁ、はい?」 そして当面は2人して女どもを見守りつつ、帝国軍や特にシャムシエルに対する警戒を行うのであった。 イナンナの加護が動いたのは、直後の事だ。 「主殿っ!」 「うん、分かっている、ミネ」 唯乃が片手を上げる。 一行は足を止める。 「チョット、待っててね?」 シンベルミネの銃型HCを確認しつつ、怪しそうな個所に片足を置いてみた。超感覚を使う。 「音?」 トントン、と爪先で叩いた。 やはり、音が違う。 少し先に大きな空洞があって、そこに響いているような感じだ。 「見かけ、全く変わりないみたいだけど?」 「トラップかもね」 銃型HCを確かめる。落とし穴トラップは規則的になって、そろそろ出てきてもおかしくはない頃ではある。 「少しの間、道の端に寄って! 私達の後についてきてね?」 ■ こうしてトラップを回避した一行は、巨大なホールへとたどり着いた。 入口に低い石柱がある。 他のものに比べて明らかに細く、柱頭には宝冠を思わせる装飾が施されていた。 ウミユリが絡みついているとはいえ、石柱に目立った外傷はない。 「ふむ、何とも不思議な石柱じゃな」 石柱にもたれかかるように、兵士の遺骸がある。 「機晶姫……遺跡と共に沈んだか……」 アーデルハイトは暫し考え込んでいたが、ひょいと首を出してホールをのぞいた。 「ここも怪しげで、『罠ですよ〜』と言わんばかりじゃ。 よし、私が行くとしよう!」 「じょーだんじゃないぜ!!」 マイト・オーバーウェルム(まいと・おーばーうぇるむ)とマナ・オーバーウェルム(まな・おーばーうぇるむ)が慌てて行く手をふさぐ。 「それじゃ、何のためにイルミンをはじめとする学生達が、あんたを守ろうとしたのか? わかんなくなるだろうが!」 特に、とつなげる。マイトをはじめとする【イルミンスール護衛隊】の面々は他の者達と連携を取り、彼女の前後左右を固め、万一の襲撃に備えていた。 「だからじゃよ」 アーデルハイトはマイトの腕をとった。 そこには、武術と魔術の修行で鍛え上げられた筋肉質の腕がある。 「これほどの技量ならば、どんな危険に追うても、私1人くらいわけのうて」 「うっ、ま、まあそうそれはそうだけど……」 「それに、そろそろ先導役の者達も疲れ始めている頃じゃ。 こう神経を使う場所では、モチベーションの低下にも気をつけなければならん。 それにお前さん達が活躍すれば、『イルミンスール武術』も脚光を浴びる。悪い話ではなかろう?」 だがそのトラップは、アーデルハイトの想像をはるかに上回るものであった。 ■ 巨大なホールだった。 一行は辺りに注意を払いつつ、中央へと進んで行く。 「ババ殿っ!」 「何か、あります! 下がってください!」 唯乃達が叫んだ。彼女達は横っとびに飛ぶ。居た場所の床が粉々に砕け散った。 「ストーンゴーレム!?」 誰かが言った。 唯乃達を襲ったのは、確かにストーンゴーレムだった。 だがその拳は、桁外れに大きい。 「ホイップ、星杖を!」 「うん、エル」 ホイップは星杖をホールの上方目掛けて掲げる。 あちこち彷徨った末に、反対側に壁に、巨大なストーンゴーレムの像を発見した。 「でも、彫刻ですよね? これって」 アーデルハイドの傍で、神代 明日香(かみしろ・あすか)は小首を傾げてみせた。 先程まで、彼女と軽口をたたき合っていた気安さはない。 厳しい表情で、壁に注目する。 明日香は奇襲や不意打ちを警戒していた。 いま、アーデルハイト様に何かあれば、自分達もタダでは済まない。 だが像は壁と一体化していて、他の柱と同様、ドームを支えているようにも見える。 「殺気看破に反応はなかったぜ?」 エルは戸惑ったように仲間達に目を向ける。 高月 芳樹(たかつき・よしき)も片手を振った。 「僕のもだよ、異常なしだ!」 そしてアーデルハイドの傍近くに構える。 彼はいざとなったら、彼女の盾となるつもりでいた。 「スペアボディーにも限りは有りますからね!」 いつもそう助言しているのだ。 何と言っても、彼女は前線の指揮官。 万一倒されでもしたら、その影響は計り知れない だが、見ろ! とマイトは像に槍を向ける。 「あいつ、動いているぞ!!」 「な、何だってっ!」 芳樹は像に注目する。 ストーンゴーレムは蠢動しつつ、壁から分離し始めていた。 そのとたん。 「わっ、な、何です!?」 ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)が焦って声を上げる。 「ディテクトエビルに反応ありです!」 「ディテクトエビルだけですぅ? 殺気はなくて、害意だけがあるのですか? ノルンちゃん?」 『運命の書』は殺気看破も使用していたはずだが、働かなかった。 芳樹も同意する。 「僕の方も相変わらずだ」 「とりあえず、目の前のものを排除する――そんなところかしら?」 アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)が補足する。 「けれどあちらに殺すつもりはなくとも、 腕の一振りで、私達、完全にアウトだわ!」 「そういうことじゃな。 アメリア、すまないが皆に離れて警戒の旨、伝達してくれないか?」 「承知致しました、アーデルハイト様。 私は一時離れますが、お気を付け下さい」 そうこうしているうちにもゴーレムは壁から離れ、太い腕を伸ばして、アーデルハイト達にゆっくりと向かってくるのだった。 「マズイ! こいつに襲われたら、全滅してしまう!!」 マイト達は槍を巧みに使い、薙ぎ払い突き演舞するかの如くゴーレムに立ち向かう。 だが、槍の刃が利く相手ではない。 「エリュシオン兵じゃなくて、化け物相手とはね!」 マナが蒼白な顔で、それでもカバーに入る。 「こんなところでくたばって、どうすんだよ! 女王器が手にしても、あんたが死んだら意味がないんだから!」 ゴーレムの腕がアーデルハイトを襲う。 「危ない! アーデルハイト様!」 芳樹は庇護者、女王の楯を用いて小さな魔女を守る。 アーデルハイトは寸前で事なきを得た。 「芳樹! アーデルハイト様!」 アメリアが慌てて駆けつける。 護国の聖域やパワーブレスで芳樹を、周囲の者達を支援する。 「さ、皆さん、頑張って! 力を合わせて、アーデルハイト様をお守りしましょう!」 だがアメリアには、まだ別の務めがある。 「アーデルハイト様! 私の後ろへ!」 明日香は行動予測を使いつつ、あいた方の手でアーデルハイトを促した。 「ほう、良い心がけじゃのう、明日香。 ようやく私の偉大さが、骨身にしみたようじゃな?」 しかし明日香はこっそりと溜め息をついた。 「愛しのエリザベートちゃんのパートナーだし。 しかたなしなのですよぉ〜。 と言う訳で、色気を出して余計な隙を作らないで下さいね?」 「なんじゃ、そりゃあ!」 だが予測をしたところで、攻撃は相手のパワーに押し切られてしまう。 『運命の書』がファイアストームで牽制を図った。 ゴーレムにはたじろぐ様子すらない。 「何てことですぅ! 魔法も物理攻撃も、まるで通じないなんて!」 「こんな時のリンネなんだなー!」 モップスはリンネの背を押す。 「うん、モップスくん。 こんな奴、ファイア・イクスプロージョンでイチコロだよ!」 「ま、待ってください! リンネさん」 ゴーレムの前にかけ出そうとしたリンネの前に、音井 博季(おとい・ひろき)が立ちふさがった。 「相手は誰もが叶わない、化け物ですよ? そんな危ない真似……僕は反対です!」 「危ない真似? だからだよ」 モップスは博季に向き直った。 リンネを見つめて。 「ここでリンネが大活躍すれば。 誰もがリンネの事、認めるんだなー! さすがはイルミンスールが誇る、ロイヤルガードの一員だって!」 あ、とリンネは口元に手を当てる。 「モップスくん、リンネちゃんの愚痴、聞いてたんだ!」 ごめんなさい、と頭を下げた。 そして、頷いた。 「うん、リンネちゃん、頑張るよ! だから、博季くんは見ていてね?」 「見ている?」 博季は大きく溜め息を吐いた。 こうなってしまっては、誰も彼女を止めることは出来ないだろうから。 「守ってみせますよ。 僕はいつだって……そんな一生懸命なリンネさんの、お役に立ちたいのですから。 あんな化け物にだって、指一本触れさせやしません!」 「博季くん、ありがとう! 頼りにしているね?」 アツアツな2人の傍で、やれやれと西宮 幽綺子(にしみや・ゆきこ)は銃を用意するのだった。 「ほらね、この子はやっぱりリンネさんのことしか考えてないのよね? だからしっかりサポートしてあげないと!」 「リンネさん、行きますよ!」 博季は禁じられた言葉を詠唱し、輪廻の魔力を上げる。 自身は雷術の態勢に入った。 「我編み上げるは、紫電の楔ッ!」 ドド――ン……ッ……。 雷術は至近距離のゴーレム目掛けて放たれる。 幽綺子はその身を蝕む妄執を同時に発動させる。 だがこのゴーレムには、やはり他のもの同様効果がない。 「やっぱり駄目だ。 でも、リンネさんのスキルでなら!!」 「うん、じゃあ、いっちゃうよっ! ファイア・イクスプロージョンッ!」 リンネが詠唱と共に、必殺技を発動させる。 ごおっ、と爆発的な量の炎が周囲に広がる。 「ぜ、全然きかないの!」 そんな、絶句してリンネはへたり込む。 だが、ゴーレムの歩みは一時確かに止まった。 そのことを幽綺子は見逃さなかった。 「大丈夫よ! リンネさん。 きっと『ファイア・イクスプロージョン』の炎が壁となって、ゴーレムの目くらましになっているの」 「そ、そうか! リンネさん! その手がありました!」 ゴーレムがリンネ目掛けて襲いかかろうとする。 幽綺子は魔道銃を発砲。 ついで魔銃カルネイジを使い、ゴーレムの注意を自分に向けさせた。 「私ね! 何となくあっちだと思うの!!」 美羽が叫んだ。 左右に穴がある。 ゴーレムが一行を追い込もうとしているのとは、別の穴の方だ。 「あっち! トレジャーセンスだけど。 何となく気になる!!」 「よし、じゃ、いってみようよ! みんな」 リンネは持てる力の総てを振り絞って、皆の為に 大好きな博季に支えられながら。 「ファイア・イクスプロージョンッ!」 自分達に襲い掛かろうとするストーンゴーレムの前に、炎の壁を出現させる。 ……かくして、アーデルハイトの本隊は、「女王器へと続く正しい道」と思しき右側の通路へと侵入した。 ■ 「殺気……正面に気をつけて!!」 エルや芳樹達、殺気看破を持つ者達が一行に警告する。 シュンッ。 足下の瓦礫がはじけ飛んだ。 星杖の光で、正面――機晶姫の兵士達が行く手を阻んでいるのが見える。 「ちっ。 また、遺跡の防衛システムかよ!」 「問答無用とは。 話の通じる相手じゃなさそうだな……」 「あちきもそう思いますねぇ」 レティシア・ブルーウォーターは、武器を片手に機晶姫に向かってく姿勢だ。後衛には、ミスティ・シューティスが控える。 トラップ解除役の彼女達は、本隊に先行し、主にガーディアン対策の為に体を張っていた。 ミスティの禁猟区が輝きを増し、機晶姫の危険性を誇示する。 「いままで十分休めさせて頂きましたし。 ここはひと働きしましょうかね?」 機晶姫は合計10名ほど。 力量は測れないが、2名では手に余るかもしれない。 「アーデルハイトさんをお守りするためにも、近づいてきたら斬りますよ!」 【イルミンスール護衛隊】の神崎 輝(かんざき・ひかる)も加勢することを約束する。 「探索する人達をお守りするのが、ボクの役目ですからね」 もちろん、帝国軍やシャムシエルどももね! 輝は一瞬追手を気にしてから、来ないことを確認すると、シエル・セアーズ(しえる・せあーず)を傍らに立たせた。 シエルは禁猟区を輝にかけて、自身はパワーブレスやヒールを中心にサポート役に回る。 「輝、幸運を祈っているからね♪」 「大丈夫ですよ! ボクは子供で弱そうですが、本当は強いんです!!」 グレードソードを抜き去る。 そこに魔鎧を装着したばかりの唯乃やロイヤルガード達、【イルミンスール護衛隊】の面々も加わる。 「あなた一人じゃ心もとないわ! 私も加勢するから、一緒に戦いましょう!!」 「助かります! ボク1人では手に余るでしょうから、是非手伝って下さい!」 「では、行きますかねぇ」 レティシア達の気の抜けた合図で、一同は無口な殺人機晶姫目掛けて、斬り込んで行くのだった。 ……勇敢な学生達の活躍で、機晶姫は苦戦しつつも撃退される。 隊はそもそもの人数が多い上、各種トラップを撃退するのにも十分な数を確保できたことが幸いしたようだ。 ■ 一行は美羽のトレジャーセンスにより、最終的に女王を象ったレリーフの前へ辿り着いた。 「行き止まり……」 ホイップの照明の力を借りて周囲を捜す。どこにも道はない。 困り果てて美羽を振り返ると、彼女はレリーフの向こうを指さした。 「でも、私絶対に、こっちだと思うんだけどな……」 「ふむ、どこかに仕掛けがあるのやもしれん」」 アーデルハイトは疲れたのか? レリーフの前で腰をおろし、行き詰まった学生達に助言した。 「いずれにせよ、私らが一番乗りのようじゃな。 こういう時は仲間を待って、善後策を練るのが肝要じゃ。 何でもかんでも1人でやろうとせんほうが良いじゃろう」 そしてホイップらロイヤルガードの面々に、他の隊と携帯電話で連絡を取るよう指示するのであった。