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リアクション
第11章
波音とデゼルと巽の凸凹トリオは、洞窟で謎の生物と対峙していた。
そいつは毛むくじゃらな体で、体長は1メートルくらいだろうか。人間のような姿形をしていて、こちらを向いて座っている。
「出たな! 魔怪獣!!」
ソークー1が一歩前に出た。
「お前を倒さないと前に進めないと言うのなら、倒すのみ! いくぞっ!!」
そのとき、一匹のコウモリがバサバサッと飛んできた。
「うおおお! コウモリを使うとは卑怯な!」
慌てて転んで頭をゴッチン。
ソークー1のマスクがパカッと割れた。
「やるな、魔怪獣。だがな、こんなこともあろうかともう1つ夜なべして作っておいたのだ……けど、だめだ……パワーが……」
「大丈夫? ソークー1お兄ちゃん!!」
駆け寄った波音に、ソークー1は新しいマスクを被せた。
「明日のツァンダーは……君だ……」
「お兄ちゃーーーーん!!!」
しかし、悲しみに暮れている暇はない。仮面ツァンダー、ハーノン1は立ち上がった。
ソークー1は最期の言葉を残して、トコロテンになった。
「後は頼むぜ、ニューヒーロー……んぱーんぱー」
「てへへっ。恥ずかしいなー。ていうか、ニューヒロインなんだけどなー。んっふっふ〜」
前向きな性格だからか、結構……その気だ。
「よーし! 仮面ツァンダー、ハーノン1!! スーパーミラクル全開でいっちゃうよ〜!」
とサンダーブラストを構える。
一気に勝負をつけるつもりだ。
そこで、今までバカらしくて黙っていたデゼルがようやく声をかけた。
「やっぱり俺がツッコミいれるしかねえんだよな。……ったく、メンドクセエ」
とハーノン1の肩をちょんちょん。
「な、なにっ?」
「そいつは魔怪獣なんかじゃねえぞ」
「ええ? ということは……ンカポカ?」
「ンカポカがどんな奴か知らねえけど……それも違うぜ。よく見ろ」
そこには、女性の写真がたくさん落ちていた。
「これは! 遠野歌菜お姉ちゃんのブロマイド!!」
「そうだ。それに、大人用のメガネもある。つまり、こいつは……」
魔怪獣ではなく、ちぎのたくらみで5歳になった譲葉大和だ。体が毛むくじゃらなのは、落ちていた毛皮を羽織っていたからだった。
「むにゃむにゃ……コウモリごちそうさま……むにゃ……! みなさん、おそろおいですね」
コウモリをいっぱい食べてお腹いっぱいになった大和は、寝ていたのだ。
「あっと、これは失礼」
散らばったブロマイドを慌ててかき集めていた。
デゼルは呆れて見ていた。
「どうもこの島は変な奴ばっかりだな……」
大和は頭をぽりぽりかきながら、大事なことを言った。
「みなさん。ここは行き止まりですよ」
がーん。
凹んだ彼らは、ソークー1が蘇るまでしばらくここで休憩を取ることにした。
一方、りゃくりゃく団も洞窟を進んでいた。
途中何度かある二股で、デゼルたちと別の道を選んだようだ。
「油がきれちゃったね……」
ここまで、ルカルカが作った松明で照らしながら進んできたが、それももう1本になってしまった。
そのとき、背後から声が聞こえてきた。
「そーれ! そーれ!」
カレンだ。
「この声は……!」
田中が振り向くと……ガツッドガッ!!
すぐ後ろのルカルカにぶん殴られた。
「しっかり前を見るっ!」
田中は未だに先頭をやらされていた。
「し、しかし……」
「そーれ!」
ぴゅーーーー。
何かが飛んできて……田中の肩に乗った。
「ひいいい」
蛍光オレンジであったかい、何か得体の知れないモノだった。
「ごめーん。なんか飛んでこなかった?」
カレンがやってきた。
と、シャンバランがトツゼン――
「カレンッ!! 好きだあああ! 愛してる! 君のためならなんでもできる。行き止まりだって、突破してみせる!!」
愛の告白を始めたが、すっかり奇行を見慣れたみんなは無視していた。
シャンバランは、告白の狼少年としてすっかり有名だ。きっと奇行が治って誰かに告白してもスルーされることだろう。
「これね、ボクが料理してみたんだけど、どう思う?」
蛍光オレンジの何かは、カレンが捕まえて料理した謎生物らしい。
ルカルカは腕を組んで考え込んだ。
「ぽにぽに。どう思う?」
ぽに夫は迷わず田中の背中を押した。
「田中さん。せっかくだから、いただいたらどうですか?」
ルカルカは大きく頷いた。それしかない、と。
田中は松明にぼわんと照らされたりゃくりゃく団とカレンの顔を見た。全員、悪魔に見えた。
「……食えばいいんだろ。食えば」
蛍光オレンジを……食べた。
むしゃむしゃむしゃ……。
「んぱーんぱー」
当然のように、脳みそがトコロテンになってしまった。
「やっぱりダメかー。あはは」
カレンの好奇心は満たされた。
「それじゃあ、みんな。先に進もう!」
が、
目の前は行き止まりだ。
そして、大きくて真っ暗な穴が広がっていた。
ぽに夫は相変わらず……
「田中さん。せっかくだから行ってみたらどうですか?」
「んぱーんぱー」
「しっ。静かに!」
カレンは耳をすました。
「向こうから、人の声が聞こえたような……?」
「本当?」
ルカルカが松明で照らしてみるが……何も見えない。
「さて、どうしよっか」
カレンは迷わず答えた。
「決まってるよ! ボクは先が見たい。行けるところまで行きたい。じゃないと、絶対後悔するもん!」
カレンの言葉にみんなも突き動かされた。
「よし。行こう! みんなでジャンプだ!!」
手をつないで目をつむって……ジャンプ!!!
ひゅーーーーーーー。
りゃくりゃく団は姿を消した。
坂下鹿次郎は、りゃくりゃく団が進んできた道をかなり離れて歩いていた。
「これは一体どういうことでござるかな……」
シャンバランのお面を拾って首を傾げた。
そして、すっかり味をしめて自分の技にしつつあるにゃん丸の光るちんちんで洞窟内を照らした。
分かれ道のたびにシャンバランのお面が落ちていた。ぽに夫が帰りの目印に落としていたのだ。108枚あるからいいでしょう、という勝手な判断で。
「シャンバラン殿より、巫女さんに会いたいでござる……」
鹿次郎は別の道を選んだ。
「巫女さんいませんかー!」
「いるわけねえだろうがっ!」
「うわああっ! 人の声が!!」
慌てて奥へ行くと、デゼルたちがいた。
彼らはデゼルの光精の指輪を照明にしていたが、鹿次郎の光るちんちんも加わって、あたりは一段と明るくなった。
そして、ハーノン1がとんでもないものを発見して、叫んだ。
「ななななにこれえええっ!!!」
洞窟の壁に扉が埋め込まれていた。
そして『山の向こう』と書かれた表札がついていた。
「なんだあっ? 山の向こうって!」
デゼルはついに物にまでツッコミを入れることになってしまった。
そのとき――
ガンガンガンガンガンッ!!!
反対の壁から凄まじい衝撃とともに穴が空いて……
「みなさん……こんにちは。お久しぶりです」
コトノハが顔をのぞかせた。
みんなは、コトノハがこちらに来られるように壁を破壊した。
『山の向こう』に行けることはわかったから、慌てることはなかった。
ぎいいいい。
扉があいた。
これは、ぼっとん塔の出入り口の扉である。
そして、中から出てきたのは……青野武だ。
「何が殺地球人ウイルスだ! 失敗作ばかりではないかッ!!」
建物の中に向かって叫んでいる。
「おぬしごときの技術力でよく言うわ! 我輩の協力に価値がないだと? バカも休み休み言え! それこそ実験してみないとわからぬこと。科学者たる者、何事も実験。日々の実験あるのみ。まったく科学者の風上にも置けぬ大馬鹿者だわ!!!」
中では、ンカポカが誰かに指示を出していた。
「おい。警備員が1人もいねえぞ。どこ行った」
「こらああ! 人の話を聞かぬか!」
すると、ンカポカが中から顔を出した。
「おい。地球人」
「お。な、なんだ……」
「おまえ……科学が好きなんだって?」
「何度も言うておるだろうが! 我輩はこのパラミタにおいて……ん?」
ひゅーーー。
ンカポカが、何かを投げた。
パシッ。
野武はそれを受け取った。中に緑色の液体が入った筒状の試験管のようなものだ。
「これは……?」
「じぶんちの前に犬のうんこ放置されると、がっかりだよな。どこの馬の骨かもわかんねえ犬のうんこをよお、片付けるのは誰なんだよ。……俺だよ。俺。俺がやらなきゃずーーーっと置いてあんだよ。汚物は処理しない限り、ずっとあるんだよ。わかるか?」
「何の話をしておるのだ。それがこの液体とどんな関係があるのだ」
「それを犬のうんこにかけると、芋けんぴになる。地球人という汚物にかけるとどうなるか……くくっ。実験してみろよ」
「むむっ」
野武は、科学者として試してみたいとも思ったが、これ以上誰かを傷つけることになってはいけないと躊躇い、試験管を握りしめた。
「迷ったな。科学者失格だ」
「ぬわにいいい!」
そのとき、警備員が1人中からひょこひょこ出てきた。手には果物をたくさん入れた籠を持っている。
「おい。おまえか、担当の警備員は。そんなもん持ってどこへ行く」
「……女の子にプレゼントです」
目がとろーんとしている警備員は外に向かって声をかけた。
「ケイちゃーん。地球人だったら無事だよー」
「あちゃあ。バレたー!」
森の影から、緋桜ケイの声が漏れた。
警備員はケイの吸精幻夜によって、野武の状況報告と食べ物の調達を指示されていたのだ。
こうなったらもうオシマイだ。ンカポカは野武もケイも警備員も、3人とも殺すように他の者に指示を出し、あっという間に警備員が大勢出てきた。
「野武っ!! 乗れっ!!!」
「ぬおお? すまないっ」
ケイは置いてあった飛空艇を運転して野武を乗せると、森の中を抜けて追ってくる警備員をまきにかかった。
「くっそう。腹減ったー。あのバカ警備員め。あと少しでなんか食えたのになー」
「ぬぉわははははははは! おぬしも面白い奴よ!」
ンカポカは自分の部屋の窓から、山頂を見ていた。
「ふん。汚物が……」
山頂の火口付近には、ザカコと大地が立っていた。
「大地さん。あれはもしかして……」
「ぶぶっ。……あのふざけたカタチ。きっと、ンカポカのアジトでしょう」
彼らもまた、ぼっとん塔を見ていた。
そして、目の前では溶岩がぐつぐつと湧いていた。
溶岩の中にも小さな陸地がとびとびで存在し、パラワシが巣を作っていた。
ギヤースギヤース!!
「あんなところに……」
思わずザカコはカタールを構えた。
そのとき、大地が気づいた。
「ザ、ザカコさん……あれは!!」
2人はこの後とんでもない光景を目にすることになる……。
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