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ンカポカ計画 第3話

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ンカポカ計画 第3話

リアクション


第7章 

「んぱぱ。とんだ目にあったな……」
 砂浜に埋まってた陣はなんとか這い出てきて、よろよろとログハウスに向かった。
「いつの間にか、こんなものが出来てるな……」
 と、そこでトツゼン。
「みみ毛えええ――」
 と、あかり隊員の落とし穴にはまって、
「え、えええ。みみ……げ、げげええええ……」
 またまたナオラーナボールをバリーン! 割ってしまった。
「あら。目が痛いですわ。しみますわ。でも目をつむるのもめんどうですわ」
 ジュリエットがナオランナを食らって、焚き火をしているウィルネストを見た。
「はっ。わたくしとしたことが、なぜこのような汚いところで座っていたのかしら。あら、目の前に小汚い家がありますわね。お腹も空いたことですし、何か料理でもさせましょう」
 めんどくさい病が治ったようだ。
 と、そのときウィルネストがトツゼン、初めての発症だ。
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ!」
 素晴らしい発声で舞台俳優になっている。
 と、ジュリエットもトツゼン。
「おお、ロミオ! あなたはどうしてロミオなの!?」
 こちらも熱演だ。
 観客の薫は喜んで、陣は苦笑して2人のシェイクスピア俳優に拍手を送った。
 そして、ジュリエットはもう面倒臭がらずにログハウスの中に入っていった。
「百合園に咲く一輪の可憐なラフレシア、ジュリエット・デスリンクですわ。あなたが料理を? では、わたくしが食べて差し上げましょう」
「子分が偉そうだなぁ」
「子分? わたくしが、あなたの……? あなたがわたくしの子分では?」
「どういうことだぁ?」
 弥十郎とジュリエット、どちらが子分になるかの勝負がはじまった。
 弥十郎には料理と既にできてる子分が大勢いるが、ジュリエットには無駄に高いプライドがある。勝負が長くなるのは構わないが、その間睨み合って弥十郎の料理の手が止まっているのがみんなは気になっていた。
 陣は落とし穴から這い出てリカインを捜したが、見当たらなかった。
 と、そこに朝霧垂が戻ってきた。
「リカインさんは?」
「ということは、ここにも来てないのか……」
「ど、どういうことや!」
「奇行が発症して大鎌を振り回されてひとまず逃げたんだけど、その後見失っちまったよ……わりいな」
「それなら、仕方ないよ。中で休んだらいいよ」
「そうさせてもらうぜ」
 垂はログハウスに入っていった。
「少しだけど、ジャングルで食材を見つけたから、これも使ってくれ」
 弥十郎に差し出したのは、むらさき地に蛍光の黄色ドットが入ったカラフルなキノコだった。マジッパラマッシュルームという名のキノコだ。
 殺人料理を食べさせる奇行症が、正常時の脳みそを冒しつつあるのかもしれない。かわいそうに……。
 薫が機転を利かせて提案した。
「朝になったら、きっとみんな戻ってくるでござる。今は我慢して、夜が明けてから鍋にしたらどうでしょうか」
 弥十郎も、他のみんなも賛成した。
 ヤバそうなキノコより、魅世瑠とファタの用意する食材の方が期待できそうだったからだ。
 その頃、暴走島村研究所ではプルプルガーの改造手術が急ピッチで進められていた。
 プルプルガーは時々タイマーで再起動する仕様になっていて、歌菜は必死に手術台という名のただの石におさえつけていた。
「幸姐さん。あとはここにさっきの部品を戻すだけですよね」
 スク水はぺろりと腰のあたりまで脱がされていて、胃の部分がパカッとあいていた。
 幸は、浜辺で拾った『はじめての改造 〜君にもできる魔改造編〜』というマニュアル本をぺらぺらめくりながら答えた。
「えーっとえーっと、そうですよ。でもおかしいですねー。部品がどこかに……カガチに預けませんでしたか」
 幸のポケットの中で、ミニガチくんはドキッとした。
 実は、大切な部品を落っことしてしまったのだ。しかも、あっという間に歌菜が踏んづけて砂にまみれて消えてしまったのだ。
「やばいやばい。なんかいいのないかぁ……お。これだ!」
 ミニガチくんはポケットから四角い形の何かを取りだした。
「さっちゃんあったよー!」
「あらあら。なんだ、やっぱりカガチでしたか。では、これを……と。ちょっときついですね。こんなにきつかったかなあ。歌菜、やってみてくれますか」
「はい。お任せください」
 ぎゅーーーっ。バキバキバキ。
「入りましたよ」
 入ったのではなく、ムリヤリ押し込んだ。
「では、これで完成です。歌菜さん。スク水を着せてあげてください」
「はい。よいしょよいしょ……」
 そして、プルプルガーが起動した。
「ボク、プルプルガー。コンニチハ……ポン。チー。ロン! ……? ハハハ……ポン。ポン。ポン」
 ミニガチくんが渡したのは、麻雀牌だった。
 そして、プルプルガーは近くでめそめそしていたソアに声をかけた。
「スクミズセンサー、トウサイシマシタポン。スクミズ、ドコニアルカ、ワカルポン」
「ほ、ほんとですかー! 島村研究所のみなさん。ほんとにありがとうございますー。幸さんって、ほんとすごいんですねっ!」
 幸はマニュアル本を背中に隠して、余裕いっぱいに答えた。
「このくらいは基本ですよ、基本。ふふふ……」
 慌てて本を隠して、ポケットのミニガチくんが落ちてしまったことには気がつかなかった。
(おーい! さっちゃん! あ! わ! カカカカ、カニ!!! でかい! ……たすけてぇ!!)
 ミニガチくんは砂場を走って、一番近くにいたソアの足にしがみついた。
 プルプルガーは、ピーガチャピーガチャ言い出して……
「ガッピーーーーン!」
 ビシッと指を差して、
「スクミズガ、アソコノキノエダニ、ヒッカカッテルヨ!」
「ええーっ! 近いっ!!!」
 ソアは駆けた。
 ポロリポロリと壊れて落ちる貝殻水着を気にせず、走った。
(た、たすけてぇええええ!)
 ミニガチくんは、それはもう必死でしがみついていた。
 そして、スクミズセンサーは正しく機能していた。本当に木の枝に引っかかっていたのだ。
「やったああああ! あ。ミニガチさん。いたんですか。意外とやらしいんですね」
「それは断固違うぜぇ!」
「ちょっと、着てみるからあっち向いててくださいね」
 ひょいとつまみ上げると、その辺の草にミニガチくんを乗せた。
 背中を向けてスク水を着ると、
「どう? ミニガチさん。似合って……!!!」
 ついに、ついに現れた。
 神楽坂が日記に書いていたあの、体長1メートルの巨大蜘蛛、パラグモだ。
 ミニガチくんの後ろで、パラグモがうねうねと足を動かしながらこちらを見ていた。
 ソアはそっとミニガチくんを手に取ると……勇気を振り絞って、逃げた。
 が、
 ビッシャーーーーッ!
 パラグモの糸に掴まってしまった。
「きゃ……」
 糸はソアの口を塞ぎ、叫ぶこともできなかった。
 ミニガチくんは必死に叫んだが、幸と歌菜はプルプルガーの足にパラ実スパイクを履かせるのに必死で気がつかなかった。
 パラグモはソアをゲットして、ジャングルのどこかに消えた。
 見ていたのは、やはり神楽坂翡翠だった。
 ソアが連れて行かれたことを書こうと思った彼は、鞄から日記を出した。
 そのとき、同時に何かがハラリと落ちた。
 沙幸のおパンツだ。
 慌てて拾って鞄に戻すと、日記を書いた。
『ソアさんとミニガチさん、パラグモに捕まる』
 日記を鞄にしまおうとしたそのとき、その手を何者かに掴まれた。
「お客さん。ちょっと鞄の中身見せてもらえます〜?」
 砂浜風紀委員長改め、万引きGメンのランツェレットだ。
「え? 中身? それはちょっと……」
「あなた、さっきから見てたんだけど、様子がおかしいんですよね。それに、見たんですよ。慌てて鞄に入れましたね」
「な、何のことですかね……」
「女性用のパンツですよ!」
 グイッと鞄を引っ張ると、おパンツが出てきた。
「こ、これは誤解で――」
 この後、鞄も日記も没収され脳みそトコロテンにされるところを記録する者は誰もいなかった。


 ジャングルの別の場所では、記憶をを失ったかわいそうなリカインが1人で彷徨っていた。
「こ、こわい……!」
 ダダダダダダ……!
 暗闇の中、背後を駆けていく動物の足音が聞こえた。
「たすけ……て……」
 足音はリカインからすっかり離れた大きな岩の上に立った。
 リカインは耳をすます。
 するとトツゼン、謎の大声が聞こえてきた。。
「We can fly !!!」
 足音の主は、セシリアだった。
 ひゅー。とん。
 岩の高さはたったの50センチだった。
「おおー。今飛んだのか? なんじゃー。なんなのじゃー」
 意味のないジャンプじゃー。
 そして、島についてすぐに迷子になったニコ・オールドワンドは近くのどこかで疲れ果てていた。
「もぉだめだ……僕……」
 木によりかかってへたりこんでいた。
「僕……死ぬのかな……このまま死んじゃうんだろうな……」
 絶望していた。
「ユーノ……心配してくれてるかな……。そんなわけないか。こんなことなら、もっとやさしくしとくんだったな……」
 ニコの顔はげっそりと痩せ細り、目の下には真っ黒なクマができていた。
 道中で食べてみたジゴクダケの影響だろうか、彼の正常な判断能力は失われ、精神はどん底にまで堕ちていた。
 ギリギリギリギリ……。
 地面に何か刻みつけている。
 サークルに、謎の文字、これは果たして何だろうか。
 そのとき足音がして、ニコが顔をあげた。
 スク水がないと生きていけないと思いつめている皆川陽が立っていた。
「ニコさん……何やってるの? それって――」
「わかる?」
「本気じゃないんでしょ。どうせ」
「皆川はどう思う?」
 陽はまだ疑っていた。
「本気でそんなことをやれるわけないね。……今の僕ならやれるけど」
「だったら一緒にやろうよ。知ってるんだろ。この儀式は、1人じゃできない」
「……いいよ。ニコさんが本気なら、だけど」
「皆川……ビビってんだろ」
「それはニコさんでしょ」
 探り合い、あとに退けなくなった2人は見つめ合った。
 そして、サークルの中心に手を重ねた。
 風がピタッと止んだ。
 はじまる。
 悪魔召喚の儀式が。
 と、そのとき陽がトツゼン――
「プルプル?」
 スク水の精プルプルと会話をはじめた。
「……何いってんだよ。ボクを見捨てたくせに、いまさらなんだよ。……ソアさん? ……ソアさんが……関係ないよ。そんなの! ……ボクが、ボクがそんな戦ったりなんてできるわけないじゃないかっ。妖精なら、キミがなんとかしろよ! ……それじゃあ妖精なんか、妖精なんか、なんの役にも立たないじゃないかあっ!!」
 そして目が醒めた。
「皆川……大丈夫か?」
「……うん」
「それならいいんだけど……」
「……」
 ニコは、陽が躊躇っているのを感じた。
 儀式を成功させるために必要なあと2つの条件を、黙っておくことにした。サークルを覆う炎と、動物の生け贄。それを用意しなければ、成功しないはずだから……。