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リアクション
クィクモでは、会議がもたれた後、ミカヅキジマへの移動や、クィクモやその周辺においての各々の任務がすでに開始されていた。
内海へ出る港では、出港準備が始められている。
突貫工事によって、今回、旗艦とする中型艦の修理は終わった。旗艦はじめ、小型艦、それにクィクモからの船も出る。
「ローザマリア・クライツァール提督を中心にまとまった方が、ここは得策だな」
黒豹小隊を率い、先にクレセントベースに入っている黒乃隊長のもとに率い向かうのはロイ・ギュダン(ろい・ぎゅだん)。
内海を渡ることになる。その任務においては、海軍の代表者ローザマリアの指示に従うのがいいだろうと判断した。黒豹小隊の隊員らも、そのロイの判断にもとづいて、艦の突貫修理に手を貸し、時間的ロスを短縮化してきたのである。
「小型艦だけで先行することもできるのだが、逆に後発となる旗艦との連絡が取れなくなるのは全く無駄な話になりそうだ」
しかし、彼らには小型艦一隻ごとが与えられることになる。
「何と。オレに?」
ロイは、第四師団の空挺部隊を目指すべく、あえて小型艦に乗り込み、空路の先鋒を務めていた。見事に敵艦を沈め、実績と経験とを積んでいる。
あまり高度を上げることはできないしロイの言うとおり、先行しすぎることはできないが、内海を行く艦にやや先行する形で、ロイたちは空を行くこととなった。「オレたちには、このまま空挺としての経験を積ませるということか。いいだろう」空を行く艦は、この一隻だけである。他は、今回は船の形態になり内海を行く。(数人乗りの小型飛空艇(アイテム)は中型艦に積まれています。)
積荷が、続々、各艦に積み込まれていく。
ロイの部下アデライード・ド・サックス(あでらいーど・どさっくす)は医薬品関係の調達と運び込みを担当していた。
「交易商人と接触することで、周辺地域の経済情勢を聞き取れるということもありますからね。
交易品の性質なども多少かじることができましたわ。きっと何かの役に立つかもしれません。クラウゼヴィッツ、そなたは……」
同じく魔道書としてロイのパートナーになっている【戦争論】 クラウゼヴィッツ(せんそうろん・くらうぜびぃっつ)。彼女(?)は、この地域の戦史や伝記の類を買い集めてきた。「これも役に立つかもであります! ミー自身も、本なんですけどね〜」
「しかし、やはりこういうときの統制は、あの部隊は段違いですわね……」
積荷しつつアデライードとクラウゼヴィッツが眺める、その先では、
「それは船倉の前方へ積むでござる。ああ、そこそこ、それは後方へ積むでござるよ」
青龍偃月刀(っぽい何か?)を手に、荷役作業を行っているのは教導団公認ゆるキャラであるうんちょう タン(うんちょう・たん)。「そこ! 重量物の運搬には気をつけるでござる。到着前に怪我をしては何もならぬでござるよ」
兵員を分割編成しているのは、皇甫 嵩(こうほ・すう)。
「ふむ、この隊はおぬしが長、おぬしが副長となれ。各員はよく指示に従って、教導団の名を辱めぬ統制をとり、乗組員の言うことをよく聞いてミカヅキジマへ向かうのだ。頼んだぞ」
関聖帝君と見まがう(こともある)うんちょうと、かつての名将・皇甫嵩の厳格な指示で、兵はきびきびと動く。アデライードとクラウゼヴィッツもきびきびと動いていった。
「あ、手が空いていればこちらも手伝ってくださいね」劉 協(りゅう・きょう)は、とくに物資を輸送する新星の艦に迷彩塗装のメンテナンスが施しているところ。「はい、その辺りはもっと暗い色で塗ってください、そうそう」
ミカヅキジマへ移動が決定されると、兵員、物資の運送計画を一夜のうちに策定したのは、師団の知恵袋とも言えるこの女性である。頭のきれと計算の速さで彼女に勝る者はない。
「ふっふっふ、すべては私の計画に基づいているのですぅ」
皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)。
伽羅は、乗組員との打ち合わせにより、艦の輸送能力・速度・喫水・復元力などを考慮し、一回の行程で安全に積める容積・重量を把握。それを、
「戦時装備の教導団兵員一人当たりの基本的な{兵員+携行品+当座必要な糧秣・弾薬}の容積・重量データで割り、一回の行程で積載可能な最大員数(以下“χ”とする)を算出。
輸送する兵員500名を(0.7×χ)名ごとに分割し、それぞれ「1次輸送隊(昴コウジを含む)」〜「N次輸送隊」と呼称する。
各隊の番号が若い順に精兵を割り当てる。(不測の輸送中断の場合にも精兵だけでも送り込む為)
これとは別にクレセントベースへ輸送する物資を兵員(0.3×χ)名相当分だけ各隊に割り振る」
「す、すごいね。何か、なにがなんだが……」
同じく、兵員の乗り入れを監督している【鋼鉄の獅子】指揮官のルカルカ・ルー(るかるか・るー)少尉。
「ふっふ。ここまで細かく書く必要はないのでありますがぁ、実際にはこのように細かく計算の上、兵や物資は動かされているのですぅ」
「うん。軍師の方々には敬服。その辺のことはお任せだけど、戦闘になれば、ルカたちに任せて!」
ミカヅキジマへの第一陣は、ローザマリアら教導団海軍の船を旗艦に、獅子の艦とクィクモの艦が肩を並べ周囲の警護に就く。数隻の小型艦も出る。さきに述べたように、黒豹小隊の小型艦一隻は空を、他に龍雷連隊の筏が海を、共に先行する。ノイエ・シュテルンは後方を担当し兵員・物資を輸送第二回以降も含め分割して運んでいくことになる。
船が出る。
静かな、「暗い内海」へと……