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リアクション
第四章 枯れ往く桜3
扶桑の都の長屋では、越してきたばかりの魔鎧蝕装帯 バイアセート(しょくそうたい・ばいあせーと)と吸血鬼ヴァレリー・ウェイン(う゛ぁれりー・うぇいん)が侍集団から赤子を守ろうと抵抗していた。
「……貞嗣(さだつぐ)様と緋莉(あかり)姫様ですね。我々がマホロバ城へお連れします」
「ちょっとまて、この子は大奥御花実様秋葉 つかさ(あきば・つかさ)の子だ! どこへ連れて行こうとしやがる!?」
ヴァレリーたちは、扶桑の都を拠点に活動しようとしてたつかさが連れて来ていた。
まさか、幕府の人間に跡を付けられていたとは思いもよらなかった。
侍たちは冷淡に継げる。
「将軍家のお子を勝手に城外へ連れだされては困ります。連れ戻すようにとのご命令です」
「ほえ? 命令って誰の?」
扶桑の都まで皆を飛空挺で運んできた火軻具土 命(ひのかぐつちの・みこと)が、問い返す。
「鬼城御三家、将軍後見職様のご命令です」
「そんなこと、わしは聞いてないがな」
天津 麻羅(あまつ・まら)が両手を広げて、行く手を阻んでいた。
しかし、いずれも剣客ぞろいの侍たちは有無を言わさない。
「幕府の命なのです。御公儀の意向に逆らうするならば、たとえ前将軍様のご寵愛を得た御花実様といえども、謀反といわれてもいたし方あるまい」
こう言われては、手も足も出ない。
貞嗣(さだつぐ)と緋莉(あかり)姫は、マホロバ城へ戻されることになる。
卍卍卍
「なんぼ旗本の奥方といえ、お通ししはるわけにはおまへん」
扶桑の都の御所では、
リース・アルフィン(りーす・あるふぃん)が神官と押し問答をしていた。
「扶桑の樹から発見された少女について調べれば、噴花や扶桑について何かわかるかもしれないんです。どうか会わせてください!」
「神聖な御神体どす。厳重に安置させてもろうてますえ」
「安置って……まるで死んでるみたいな言い方じゃないの……」
「なんぼなんでも、生きてはらっしゃおりません。息もなく、心の臓も止まってま。せやけど、肉が腐ることがおまへん。まさに御神体なんどす」
リースはねばりにねばり、夫や友人の協力を得て、ようやく遠くからその姿を見ることができた。
扶桑の少女は、ガラスの棺の中で眠るように横たわっている。
「天子様は『もうひとりの私』とおっしゃってたそうですけど……これだけじゃ、扶桑の成り立ちや噴花のシステムに付いてわからないですよね……」
リースは美少女の顔をしばらく拝見していたが、彼女はふと、あることに気がついた。
「そういえば、どうやって桜の木の下に……誰か埋めた人がいたんじゃないかな?」