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まほろば遊郭譚 第一回/全四回

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まほろば遊郭譚 第一回/全四回

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第三章 幕臣4

「ハイナちゃん、龍騎士とどうやって戦うの? 私としては、戦う場所ができるんなら、龍騎士が攻めてくるのは歓迎なんだけど?」
 ティファニー・ジーン(てぃふぁにー・じーん)のいなくなった葦原明倫館分校で、葦原明倫館総奉行ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)は残務整理を行っていた。
 霧雨 透乃(きりさめ・とうの)が机によじのぼり、足をぶらぶらさせている。
「……分校、どうするの?」
「ティファニー殿の代わりがみつからないので、とりあえずわっちが肩代わりしてるだけでありんす。で、龍騎士については幕府軍主導で、葦原は援護・協力するでありんすよ」
「うーん、あんなまとまりのない幕府なんて、アテにはならないよ」
「アメリカ軍は、マホロバに深入りしすぎたでありんす」
 ハイナは表向きには、以前に将軍だった鬼城 貞継(きじょう・さだつぐ)に釘を刺されたのだと言った。
「今、マホロバ幕府との良好な関係を崩すとことは許されないでありんす。アメリカ軍はシャンバラでの強固な戦力を堅持する必要がありんす」
 シャンバラやコンロンでの教導団――中国の動きを水面下で牽制しているアメリカの事情があったが、そのような事はもちろん口に出すべきことではない。
「私はそんなの関係ないけどね、都合が良さそうな手に乗るだけだよ」
 透乃が机からぽんと飛び降りて言った。

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「鬼鎧が配備されるのを待っていたら、マホロバはとっくに亡国の仲間入りじゃないんですか?」
 百合園学院牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)はそう言って自分を売り込み、対エリュシオンに派兵された幕府軍遊撃隊に従事していた。
「推定ですが、戦力は第四龍騎士団が約四千、瑞穂藩が一万といったところのようですわ。幕府に関しては、旗本・御家人を合わせて約四万をいったところかしら、マイロード」
 魔道書ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)は、ふふっと笑った。
「七龍騎士の命をご所望ですか」
「そうねぇ、愉しそうな血の匂いがするわねぇ。どんな方なの?」
「帝国では、蒼の審問官と言われ、恐れられてたようですわ。自分達と考えを同じくしないものを異端審問にかけて、これまで二千人ほど死刑宣告をしたそうですね」
「あら、素敵!」
 アルコリアは嬉しそうに手を叩いた。
「ますます私の手で殺してあげたいわぁ」
「きゃははっ、龍騎士だよ! 龍騎士がいたー!」
 魔鎧ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)が歓声を上げる。
 ラズンたちの前に龍の姿がある。
 数からして一個小隊だろうか。
「『神』に死をー! 『恐怖』に死をー!」
 ラズンの合図ともにアルコリアはくすりと笑い、がくりうな垂れた。
 次に頭をもたげたとき、彼女の瞳が青く輝いていた。
 先ほどと違う声音で言う。
「さぁて、ナラカに居た時と同じように傭兵稼業と参りましょうか!」
 奈落人アコナイト・アノニマス(あこないと・あのにます)の憑依が完了し、彼女たちは戦場に繰り出す。
 ワイバーンが龍を追い、追われながら、『死』への衝動をかきたてる。

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 『幕府の兵は数は多くても烏合の衆。
 そもそも腰抜けで使い物にならないのだから、いくら多くても意味無し』

 幕府軍を揶揄した立て札が立てられていた。
 たとえ一個人の能力が高くても、戦闘を教育もろくにされていない兵では、帝国で訓練された龍騎士の相手にもならない。
 マホロバ各地では龍騎士団による被害を受け、それは徐々に侵食していった。