リアクション
空は雲一つなく、穏やかな風が頬を撫でていた。 一回戦 ○第一試合 クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)(薔薇の学舎) 対 轟 平八郎(一般参加) 「師匠……このような大舞台で師匠と競えるのは、名誉です」 轟平八郎は、城下で「天下一刀流」の看板を掲げている剣客だ。丁寧な教え方が評判で弟子もそれなりにいたのだが、ある時期現れた「髪斬り」――なお、その正体は宮本 武蔵(みやもと・むさし)に憑依された北門 平太(ほくもん・へいた)だったのだが、機密事項である――に髷を切られたことが原因で、危うく道場が潰れるところだった。 クリスティーは、その道場に入門、剣の腕をこれまで磨いてきたのである。 「わはははは! わしに勝てれば免許皆伝をくれてやろう!」 「ほ、本当ですか!?」 「武士に二言はない!」 平八郎は、クリスティーに木刀の切っ先を向けた。 クリスティーはぶるりと震えた。恐怖ではない。興奮――武者震いと言っていいだろう。免許皆伝が欲しいわけではない。だが師匠に認められる――そのことが何より励みになる。 「始め!」 プラチナムの合図で、二人は一礼し、木刀を構えた。 「天下一刀流、轟平八郎参る!」 「天下一刀流クリスティー、参る!」 クリスティーは地面を蹴り、平八郎の喉元を狙った。だが平八郎は必要最低限の動きでそれを躱し、クリスティーの頭に木刀を振り下ろした。 「浅い!」 プラチナムは試合の続行を告げたが、有効を取られてしまった。平八郎に一撃必殺の技がないことは、これまでの付き合いで分かっている。確実に勝つために、奥の手を出さねばなるまい。 「師匠! 御覚悟を!」 クリスティーは【真空切り】を放った。だが、平八郎もさすが流派を構えるだけのことはあった。クリスティーが大上段に構えるや、素早く懐に潜り込み、鋭い突きを繰り出したのである。 「ぐうっ……!!」 クリスティーの息が、一瞬止まった。そして気付いたとき、平八郎が心配そうに覗き込んでいた。 「大丈夫か?」 「し、しょ……」 言葉は途切れ、声にならない。思わず咳き込んだ。 「すまん、つい強くやりすぎた」 どうやら平八郎の突きが、クリスティーの喉に入ったらしい。クリスティーは笑おうとしたが、痛みに顔が歪む。 「……でん……」 「ああ。まだまだ、皆伝はやれんな」 だろうな、とクリスティーは思った。だが、と平八郎が続ける。 「お主に頼みたいことがある。ワシは『天下一刀流』を世に広めたいと考えている。お主には、葦原島以外での道場を任せたい」 「えっ?」 「頼めるか? 一番弟子よ」 「は、はい!!」 まだ痛む喉を押さえながら、クリスティーは精いっぱいの返事をした。 勝者:轟 平八郎 ○第二試合 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)(シャンバラ教導団) 対 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)(シャンバラ教導団) 中央に進み出た吹雪は、人差し指を突きつけ、こう言った。 「あんたは女はいるでありますか?」 「……は?」 「答えは!?」 「……いないが」 「そうでありますか、そちらも『こちら側』でありますね」 意味が分からん、とダリルは腕を組んだ。 「しかし我が目的の為消えてもらうであります!」 開始の合図と同時に、吹雪の周囲に黒い炎が漂い始める。 「【エンヴィファイア】か! させるか!」 ダリルは組んだ手を解くと同時に、銃を抜いた。特性ゴム弾が吹雪の額に当たり、炎が消えていく。ダリルは続けて引き金を引いた。 「させないであります!」 吹雪も狙撃銃を構える。二人のちょうど真ん中で、ゴム弾がぶつかり、弾け飛んだ。ダリルは更に激突を起こし、吹雪の額を狙う。 「これならどうでありますか!?」 吹雪は狙撃銃を捨て、一瞬にして、着ていたものを脱いだ。滅多なことでは動じぬダリルも、これには驚いた。戦闘中に得物を捨て、服まで――。 その一瞬を突き、吹雪は捨てた狙撃銃を蹴り上げた。 「しまっ――!」 ダリルが我に返るも間に合わず、吹雪のゴム弾が彼の胸に当たった。 「一本!!」 ここで時間切れとなり、共に二回戦進出となった。 引き分け |
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