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世界を再起する方法(第2回/全3回)

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世界を再起する方法(第2回/全3回)

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「今度は真昼間から堂々とお出ましか。
 出直すとか言ってた割にゃ、特に改めたところは無さそうじゃねえか」
 二手に分かれ、コハクが離れて行くのを見て、目で追おうとする黒ずくめの男に、ラルクが軽口を叩いてみせる。
 ラルクの言葉に、男はぴくりと眉を顰め、目を細めた。
 その背後上空から、ヴァルキリーであるレイナが、両手にライトセイバーを構え持ち、先手必勝とばかりに攻め込んだ。
 しかし男は気付き、片手で素早く大剣を持ち上げると、レイナに向けて横降りする。
「くっ!」
 十字に構えた剣で受け止めようとしたが、レイナは踏ん張れずに弾き飛ばされた。
「レイナ!」
 空中で体勢を整えるレイナを見て、静麻はほっとする。
 男はレイナに構わず、巨石の上から飛び降り、ちらりとコハクの方を見た。
「てめえの相手はこっちだぜ!」
 強化光条兵器の手甲を装備したラルクが素早く男の懐に飛び込み、拳を殴り入れる。
「うらぁ!」
 男は素早く剣を引き、自分の前に大剣を構えて盾とした。
 岩をも砕く一撃に、しかし剣はミシリと撓るのみで耐える。
 衝撃が届いたか、男が顔をしかめ、続く攻撃を恐れたか、盾にした剣をラルクの目の前に囮に残し、距離を置いて飛び退いた。
「逃がさねぇ!」
 ラルクの拳は、遠距離からの攻撃も可能だ。
 踵を返したラルクは、動きを止めた。
 いるはずの場所に、男が居ない。
 背中に強烈な痛みを感じた。
「……しまった……!」
 例の、瞬間移動か。
 ラルクは血を吐いて膝を付く。
 しかし男はラルクにとどめを刺さずに距離を置いた。
 そこへ静麻が銃を撃ち、躱されたことに舌打ちを打つ。
 すぐさま銃口が男を追いかけて連続して撃ったが、最初の1発目はともかく、連射される弾丸を躱すことなど不可能と思ったか、男はその大剣を構えて盾とした。
「……あんた、『魔剣』か?」
 銃撃の合間、剣の向こうの男に、静麻は訊ねる。
 ぴく、と男の手元が動いたが、返答は返らなかった。

「くそっ、油断した……!」
 静麻が作った隙に、ラルクは立ち上がる。
「おい、先に治療を」
 背中がばっくりと割れている。
 レイナにヒールを任せようと思った静麻だったが、
「先に奴だ!」
とラルクは吼えた。
「――わかりました」
 そうとなれば、早く終わらさなくてはならない。
 レイナはバーストダッシュで一気に間合いを詰めた。
 自分では敵わなくとも、静麻と共に自分が隙を作り、ラルクがとどめを刺してくれれば。
「マジで行かせてもらうぜ……剛鬼!!」
 渾身の力を込めて、ラルクが飛び込む。
 男とラルクが激突した。
「……っ!」
 ちっ、と顔を顰めて、男は剣を引いた。
「……成程」
 大きく飛び退くと、小声でそう呟く。
「――出直す。次が最後だ」
 そう言い残して、男は素早く姿を消した。
「てめッ……待ちやがれ、逃げんな!」
 ラルクはそう叫ぶと、前のめりに倒れた。
「無茶しすぎだ……レイナ!」
 走り寄ったレイナは、すぐさまヒールを施す。
 やれやれ、と溜め息を吐いて、静麻は男が去った先に目をやった。
「逃げたということは……地味にダメージを受けてたってことだよな」
 次が最後、と言った。
 今度こそ、何か策を労してくるということか。


 合流したコハクは、ラルクが黒ずくめの男から受けた攻撃で負傷した、と聞いて蒼白とした。
 剣で直接受けた傷。
 勿論、鈴木周のことを思い出したのだ。あれと、同様に。
「一応、傷は治療したのですが」
 レイナが言う。
 服は破けて真っ赤に染まっているが、傷自体は回復している。
 少なくとも、外見上は、回復していた。
「何真っ青な顔してやがんだ。大丈夫だ、気にすんな!」
 ラルクは笑って、ぽんとコハクの頭に手を乗せる。
「心配いらねえよ。すぐ治る」
 勿論、すぐに治ったりしないことは解っていた。

◇ ◇ ◇


 一連の戦闘に全く加わらずに、巨石の影に隠れてイレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)と、パートナーのカッティ・スタードロップ(かってぃ・すたーどろっぷ)は様子を探っていた。
(ううう、戦いたい、戦いたい、戦いたいよ――!)
 カッティの戦闘本能がうずうずと疼くが、そこはじっと我慢の子である。
 襲撃者を追って、彼等の本拠地を探ろう、というのが、イレブンの作戦だった。
「本拠地って、鏖殺寺院?
 あの人達、そこから出張してきてるんでしょ?
 目的を果たすまで、帰らないんじゃない?」
 カッティが、その作戦について訊ねる。
「だが、何処か拠点にしている場所があると思う。
 そこが解れば、敵が襲って来るのを待つのではなく、此方から攻め込むことができる。
 もしあのサルファ2号の上に更に誰かがいるなら、報告の為に戻ったりするだろうしな」
「そっか……。じゃあ、暴れるのはその時だね!」
と、カッティも、今回は戦うのは我慢、と納得したのである。

 そして、黒ずくめの男が身を引いた瞬間、その時に狙いを定めていたカッティが巨石の影から飛び出した。
「食らえ! 大リーグボール13号!!」
 追跡用にと作成した、悪臭付き液体を仕込んだ水風船を投げ付ける。
 直前で、男はそれに気付いた。
 避けようとし――しかし、肩に当たって破裂する。
 何だ? とイレブンはそれを見て眉をひそめた。
 咄嗟に、黒い大剣を構えて身を護ろうとした、ように見えた。
 しかしそれを下ろして、敢えて身体で受け止めたように見えたのだ。
(剣を庇って体で受けた? ……まさかな)
「見たか、教導団衛生兵として鍛えた投擲技術!」
 カッティがガッツポーズを取る。
「……衛生兵で投擲技術を鍛えるって何でだ?」
と閃崎静麻は思ったが、突っ込みは入れなかった。
「とにかく、行くぞ、ハッチ! しっかり追跡を頼む!」
 イレブンは、ペットの秋田犬に指示を出し、追跡を開始する。

 しかし、イレブンは途中で男を見失った。
「何で!?」
 カッティが叫ぶ。
 イレブンは、痛恨の面持ちで答えた。
「……途中のオアシスで、念入りに身体を洗われてしまった……」
 オアシスの中にも剣を持ち込み、傍らに突き立てて、服のままオアシスに入って行き、服のままオアシスを出て、何事もなかったかのように服も乾かさずに去って行く姿は何とも言えない微妙な感じだった。
 勿論、その後も追跡は続けたのだが、結局逃げられてしまったのだ。
「キマク……! 恐るべしオアシス地方……!」
 くっ、とカッティも拳を握って悔しがる。
「いや、ポイントはそこか?」
とラルク・クローディスは思ったが、突っ込みは入れなかった。