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リアクション
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、飛翔術を用いて上空から根の中心を臨んだ。
「スポット到達を防ぐ為には、根の勢いより早く先端を狩って行かなきゃならないけれど、大元を断たなきゃキリがないわけよね」
その大元には、カラスもいる。
だが、中心部分は絡み合う根の強固な塊になっていて、その中にいるカラスの姿は見えない。
塊の上に仁王立ちして名乗りを上げていたドクター・ハデスも、聖とキャンティの格好の的となって狙撃されまくった後は姿が見えなかった。
「攻撃する端から再生してるわ。
流石に大元の部分は、一番活動も活発なのね」
パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が、枝分かれした根の一部が上部に伸び、セレンフィリティを絡め取ろうとするのに向けて、バーニングレッドで強化したリターニングダガーを投擲する。
さほど太い枝ではなかったからか、ダガーが突き立った根は、燃え上がりながら地表に落ちて行った。
そこへ、二人のHCに通信が入る。
ウィスタリアを操縦する、アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)からのものだった。
「根の中心部分の座標を確認しました。援護します。
荷電粒子砲のチャージ完了まであと十秒、巻き込まれないようご注意ください」
「機動戦艦の主砲で援護!?」
二人は慌ててその場から距離を取る。
「エネルギーチャージ、発射可能レベルに到達。座標確認」
セルマは、目視できない場所にある根の大元をじっと見据えた。
「荷電粒子砲、発射します!」
上空に待機するセレンフィリティとセレアナの耳に、闇の向こうから、砲撃音が響く。
少し遅れて、闇を貫いて来た粒子砲が、根の塊に直撃した。
爆撃音と共に、粉砕された大量の木っ端が空間に舞う。
セレンフィリティとセレアナは、すぐさまそこに飛び込んだ。
「対象の残存を確認。二発目のチャージを開始します」
レーダーを確認したセルマは、続けて粒子砲の砲撃準備に入る。
もうもうと砂塵が立ち上る中、潜んでいた十六凪が、真っ先に根の中心に飛び込んだ。
塊の内部で、カラスが衝撃に飛ばされ、倒れている。
根の塊は、粒子砲からカラスを護ったが、それでも、カラスの受けたダメージは大きかった。
「大丈夫ですか!?」
起き上がろうとするカラスを見ながら、ここまでか、と、十六凪は察した。
撤退どころを間違えれば、カラスが殺されてしまう。
カラスとアールキングの根があれば、オリュンポスの世界征服に大いに役立つはずだ。
「カラスさん、残念ですが、今回はここまでのようです。
ですが、アールキングの根の一部さえ残っていれば、アールキングを苗木から復活させて、再び世界樹にすることができるはずです。
ここは戦略的撤退をしましょう」
「……駄目よっ……!」
カラスは声を絞り出した。
「コーラルネットワークの他の何が、アールキングを復活させられるって言うの!?
アールキングを死なせない。死なせないわ……!」
カラスは、執念で起き上がろうとする。
アールキングの本体は既に滅んでいて、今はまだ、根に生命力が残っているが、このまま放置すればすぐに枯れる。
その前に、世界樹の復活に足る力を注がなくてはならない。
撤退など出来ない。カラスには後が無いのだ。
仕方ありません、と、十六凪は決断した。
「……ペルセポネ、デメテール、撤退します」
カラスを置いて行くしかない。
最早、カラスとアールキングは、滅びる他の結末が無かった。
十六凪がその場を離れると殆ど同時に、セレンフィリティとセレアナが飛び込んだ。
起き上がろうとしていたカラスを、すかさずセレアナが押さえ込む。
セレンフィリティは、根の中心と思われる場所に、フリージングブルーで強化した大剣「希望の旋律」を突き立てた。
「アールキング!」
カラスが悲鳴を上げる。
「……思ったような効果が無い。中心は此処じゃなかったの?」
セレンフィリティは、呟いてカラスを見た。
この少女に聞けばいい。だが、カラスは我を失ったように、セレアナの腕を払い退かした。
セレアナは、すぐにカラスを再び叩き倒して乗り上げる。
「観念なさい」
「……アールキング……」
ぐったりと目を閉じて、カラスは呟いた。
「全部の……力を返すわ……ここから先は、自分で……」
するっ、と、蛇の尾のように、根の末端が、塊から抜けた。
根は、これ以上長くなることなく、カラスの居る塊を残して這い進んで行く。
ぼんやりと定まらない目で、カラスはそれを見送った。
「待ちなさぁい! 逃がさないのですぅ!」
キャンティが、根の尻尾に反応し、叫びながら後を追いかける。
「お嬢様!?」
アレの何処に、獣性を呼び覚ますものがあるのだろうと思いつつ、聖も後を追った。
無論キャンティは獣ではなく、ゆる族なのだが。
セレンフィリティは、根の塊から剣を引き抜くと、その刀身を根の塊に叩き付けた。
凍っていたそこは、衝撃に砕ける。
「これで、これ以上の増殖は無しね」
ウィスタリアでは、セルマが使用武器を粒子砲から要塞砲とグラビディキャノンに切り替えた。
根の上昇による激突の攻撃を避けてやや距離を置きつつ、砲撃を続ける。
(根の増殖が無くなりました。現在存在する根は、スポット地点に集まろうとしています)
レーダーを確認したヴェルリアの報告に、ここからは掃討戦か、と真司は呟いた。
「行かせるものか。少しでも多く片付けるぞ」
既に切り捨てた根を蹴り退かして、ゴスホークは、アールキングの根を殲滅する為に追う。
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