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リアクション
一方、上流へ向かった生徒たちは、高さ3メートルほどの滝を見つけた。
「やっぱり、滝を登ってもドラゴンにはならないのね……」
上流へ向かって、まるで垂直に「水切り」をするように登っていくノボリゴイを見つけて、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は残念そうにため息をつく。
「ドラゴンになってそのまま天まで昇ったら困りますって!」
ルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)は苦笑すると、
「逢、滝の上まで登りますよ」
「了解でござる」
音羽 逢(おとわ・あい)を連れて滝の横の崖を上り始めた。
「ふーん、崖の上へ行くんだ。じゃあ私は、その手前で狙わせてもらおうかしら」
祥子は空飛ぶ箒で滝に近付き、滝を登るノボリゴイを槍で突いた。ノボリゴイは槍が刺さった状態で激しく暴れる。
「きゃっ!」
槍が振り回される勢いで、祥子はバランスを崩した。どうにか箒にしがみつく間に、ノボリゴイは槍から抜けて滝壷に落ち、激流に飲まれてしまった。
「危ない危ない。あそこに落ちたら、無事じゃ済まないわね」
体勢を立て直した祥子は、箒で滝の上に上がった。そこでは、
「とぉうッ!!」
学校指定の海パン姿で、滝を登り切ったノボリゴイに向かって激流に突っ込んで行くルースの姿があった。一般人であれば、膝まで水があると、かなり行動が制限されると言われている。流水の中であれば足を取られて転倒する可能性も低くはない。日頃訓練(と、最近は実戦)で鍛えている教導団の生徒にとっても、この激流の中で動くのは容易なことではないらしく、腰にはしっかりと命綱が結ばれて、その反対の端は川岸の木に縛り付けた上で、途中を逢が握っている。
滝を登り切ったノボリゴイは、やはり多少は疲れているようで、動きが鈍くなっていた。そこを狙って、ナイフを持ったルースが襲い掛かる。
「ナナがご所望なんですよ、大人しく食われてもらいましょう!」
腕の中でびちびちと暴れるノボリゴイを押さえ込み、鰓の隙間にナイフを差し込む。
「フィーーッシュ!!」
叫んだ逢が命綱を引っ張る。まだびくびく動いているノボリゴイを落とさないようにしっかりと掴み、ルースは岸へ戻って来た。
「少し小振りだが、なかなか良い型でござるな」
氷を詰めたトロ箱にノボリゴイを入れ、逢は満足そうにうなずく。
「こっちは一人……やっぱり、音子にも協力してもらった方が良かったかしら……いいえ、一人でも負けないわ!」
ルースの釣果に闘志を掻き立てられたのか、祥子は真剣な表情で川岸に立ち、槍を構えた。
その頃、下流では、その黒乃 音子(くろの・ねこ)とイリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)が流れの緩い場所を探していた。だが、かなり下っても、なかなか流れはゆるやかにならない。
「うーん、しょうがないから岸から突こうかな」
とうとう、音子は諦めて、川岸に浮き輪を置いた。
「本校に戻る時間もあるしな……」
イリーナも、音子と同じような場所で足を止めた。
「同じ『白騎士』派でも、今回は手加減はしないからな」
イリーナは不敵な笑みを音子に向けると、まず氷術で水面を凍らせて足場を作ろうとした。ところが、流れが急なため、凍った部分は端から流されて行ってしまう。
「仕方がないな、こちらも岸からか」
イリーナは氷で足場を作るのを止め、水面を見た。白波が立っており、水が澄んでいても水中はなかなか見通すことが出来ないが、水深が浅いせいか魚が良く跳ねるので、そこを狙って氷術で行く手を塞ぎ、行き場を失った魚を槍で突く。
「おっ……とと」
暴れて槍から抜けそうになる魚をどうにか陸まで持ってきて、イリーナはほっと息をつく。
「えいっ!」
一方、音子は水の中にいる魚を狙う。こちらは銛なので当たれば槍より抜けにくいが、当てるまでが大変だ。
二人はそのまま、時間ぎりぎりまで魚を獲り続けた。
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