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リアクション
「次はどこに行くのかしら?」
広い、校舎を歩く、せつなとナナシ
「イコンの模擬戦も行っていると聞く。そっちにだ……っと」
「きゃっ!」
ナナシが女の子とぶつかる。
「もう、ちゃんと前を見て歩きなさいよ……。大丈夫?」
しりもちをついていた、女の子に手を貸し、立ち上がらせるせつな。
「あ、ありがとうございます。それと、前を見て歩いていなかったこちらがいけないんです。ごめんなさい……」
女の子がぺこりと頭を下げる。
「いや、こちらもごめんなさいね。えっと……」
「あ、わたしは聖カテリアーナアカデミーの生徒でテレサと言います。よ、よろしくお願いします」
「テレサさんね。あたしは天御柱学院の生徒で雪比良せつな。こっちはナナシ。よろしくお願いします。ところで、テレサさんはここで何を?」
「え、えっと、学校内を少し見学していました」
「そうだったんですか」
「……せつな。行くぞ」
すでに結構前を歩いていたナナシ。それを見て、ため息をつくせつな。
「だから、あなたは……。もういいわ。それじゃ、テレサさん。また会えたら会いましょう」
「は、はい。それでは、失礼します」
テレサと別れ、ナナシの後を追うせつなだった。
生身の模擬戦会場とは別の会場。様々なイコンが自由自在に動き回っている。
「すごいわね、ワシントンコントラクタースクール。こんな広い場所がいくつもあるんだもの」
「……そうだな」
先ほどと同じように、ジッとその光景を見つめるナナシ。
「……今度は失礼のないようにしてね」
先に釘をさしておくせつな。
「別に失礼など起こしていないが?」
だが、本人にはその自覚などなかった。
「すでに数回起こしているわよ!? って、あ、ちょっと!」
怒るせつなを放置して、何かを見つけたのかさっさと行ってしまうナナシ。
ナナシの視線の先には、機敏に動き、置かれた的を精確に撃ち抜いていく、一つの機体。全ての的を撃ち抜くと、停止し、コクピットから一人の男子が降りてくる。そして、そこに歩み寄る一人の男子。
「どうだ?」
「十五秒二十三。うん、上出来だね」
「よっしゃ、次は十五秒切るぜ! っと、あんたは誰だ?」
ナナシの存在に気づいた二人。
「だから、勝手に行かないでと……」
せつながナナシに追いつく。
「…………」
ナナシはジーッと、二人を見つめる。
「な、なんだよ?」
「……いや、なんでも……いたっ、何をするせつな」
ナナシの頭をはたくせつな
「ごめんなさい。私は雪比良せつな。こっちはナナシよ。ナナシはちょっと変なところがあるの。多めに見てあげてくれませんか」
「いやまぁ、別に良いけど……」
「えっと、あなたたちは?」
「俺はトーマス・ハミルトンだ。イコンのパイロットをやってる。こっちは相棒のケビン!」
「初めまして。ケビン・サザーランドです。専属のメカニックをやらせてもらっているよ。よろしくね」
「相棒ってことは、二人はパートナー契約を?」
「いや、俺たちは、ただの友人だ。でも、俺にとってケビンはパートナーとも呼べる存在だぜ」
「そういってもらえると嬉しいよ」
「そうなんだ。トーマス君はイコンのパイロットって事らしいけど、その後ろにあるのがそのイコン?」
「そうだぜ、これは『フリーダム』って言うんだ! 俺の愛機だ」
「へぇ、すごいですね……」
「……ふむ、なるほど」
三人が会話する中、一人頷くナナシ。
「……どうしたのよ?」
「把握した。では行こう」
また一人スタスタと歩いていってしまうナナシ。
「またなの!? あ、えっと。二人とも、また会えたら会いましょう! それでは!」
「あ、あぁ。またな」
「またね」
「……なんだったんだろうな?」
「さぁ……」
せつなの後ろ姿を見送りつつ、首を傾げる二人だった。
「もう! さっきからどうしたのよ?」
しばらく行ったところでナナシを捕まえたせつな。
「俺はどうもしていないが……?」
「人に話しかけたと思ったら、すぐどこか行っちゃうし……」
「俺はただ、確認をしただけだ」
「確認……?」
「言っただろう? この人材発掘プログラムの間に必ず『C』が現れると」
「……じゃあ、今まで話しかけてすぐ去ってた理由って……」
「『C』かどうかの確認だ」
「……それで、見つけたの?」
「それだが――」
「こらこら、こんなところで何してるのー?」
二人が話しているところに現れたのはレイ。
「あ、レイさん……」
「サボりはよくないよ? まぁ、サボったところで困るのは自分達だけどね」
「すみません……」
「えっと、キミ達は……?」
「雪比良せつなと言います。こっちはナナシです」
「せつなにナナシ……。おかっぱに能面で良いや」
「なんですか、おかっぱって……」
「見たまんまの事を言っただけだよ? キミはおかっぱだからおかっぱ。そっちのは無表情だから能面」
「そ、そうですか……」
「まぁ、なんにしてもサボってないでしっかり勉強しなよ? 一応、応援してるからね」
「ありがとうございます」
「それじゃあねー」
「…………」
去っていくレイの後姿を睨むナナシ。
「どうしたの?」
「いや、候補が一人増えたようだ」
「候補って?」
「『C』のだ。今のところ、どれが本物の『C』かは分からないが、絞ることは出来た」
「それはもしかして、今まで話した人達?」
「そうだ。トーマス・ハミルトン、ケビン・サザーランド、パトリシア・ブルームフィールド、サーシャ、ミーシャ。そして、西枝レイ。この六人のうち誰かが『C』だろう」
「テレサさんは違うの?」
「どうやら彼女は違うようだ」
「……でも、みんな普通の人みたいだったけど」
「だから判断がつかない。今は情報が足りないから、少し様子を見よう」
「……そうね。とりあえず、また怒られないうちに戻りましょう。少しは真面目にしててもらうわよ?」
「……俺は常に真面目だが?」
首を傾げるナナシにため息をつくせつな
「確かに、『C』を探すことに関しては真面目だったわね。そうじゃなくて、何か情報を得るまでは普通に人材発掘プログラムを受けてもらうってことよ。一般生徒に怪しまれないためにもね」
「……そういうことなら了解した」
「それじゃ、行きましょう」
こうして、初日は慌しく過ぎていった。
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