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リアクション
「今回は、お招きいただいて、ありがとうございます」
「気にしないで。せっかくだもの、くつろいで頂戴」
テレサや、聖カテリーナアカデミーの生徒達を呼んで小さなお茶会を開いた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)。
「はい。どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
それぞれの好みに答えるべく、テーブルには緑茶に紅茶。和菓子やクッキーなど様々なものが用意されていた。
「皆さん、お集まりいただいてありがとう。そんな皆さんに質問があるのですが、皆さんがこのプログラムに参加した理由を教えていただけるかしら?」
祥子の言葉に、アカデミーの生徒が各々に考え始める。
「見聞を広める……でしょうか?」
「自分の実力がどの程度通じるのか。試したかった……かな」
「様々な人と交流できる良い機会だからだな」
それぞれ思い思いの感想が返ってくる。
「なるほど。答えてくれてありがとう。それと、もう一つ。シャンバラへ留学するならどの学校にするかしら?」
「留学……かぁ」
「考えたこともありませんでした……」
祥子の質問に真剣に悩みだす生徒達。
「まぁ、無理に考えなくても良いわ。でも、さっきの質問の回答にもあったけれど、より多くの契約者と交流をするなら留学するのが一番よ。それに、ニルヴァーナで活動する前にシャンバラで慣れるというのも良いと思うわ」
「確かに……それは言えてるかもなぁ」
「そうですわね……」
「契約者といっても人間だもの。人同士の繋がりもなくちゃね。さて、私からの質問はおしまい。大したものではないけれど、お茶会を楽しんで頂戴」
その祥子の合図と共に、各自で会話が生まれ始める。大半は先ほどの質問の留学はどこが良いだろうか等が会話の中心となっていた。
「テレサ、少し良いかしら?」
祥子はしばらく、アカデミーの生徒と会話した後、一人でゆっくり紅茶を飲んでほっこりしていたテレサに声をかけた。
「あ、はい。なんでしょうか?」
「あなたにも質問があるの。異端審問みたいなものは今でもあるのかしら?」
祥子の質問にテレサは紅茶を飲む手を止め、少し考えてから話し始めた。
「……実際に異端審問を行うこともありますが、今の時代、ほとんど行われることはありませんね。教会に、『異端審問官』という役職はありません」
テレサが一呼吸置き、続ける。
「その役割を担っているのは、『執行官』です。『神の意に背く者』、『人々の平穏を脅かす化物』を滅する、神罰の代行者。この『神の意に背く者』に該当する者が異端者だった場合、問答無用で裁く……。という程度になりますね」
「基本的には執行官がその該当者を見つけた場合、問答無用で裁くから行われないと?」
「そういうことになりますね」
「そう……、ありがとう。急に悪かったわね。こんな質問をしてしまって」
「い、いえ。急にでびっくりはしちゃいましたけど……」
「後は、特にないわ。ありがとう。くつろいでいってね」
「はい」
「おっと、みんなでお茶会をしているのかしら?」
ちょうど、その会場前を通りかかった。パトリシア、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)、鳴海 翔一(風祭 隼人(かざまつり・はやと))、四居 レミカ(御神楽 陽太(みかぐら・ようた))の面々。
「えぇ、アカデミーの生徒とお話したかったから、私が提案させてもらったの」
「なるほど、そうだ。せっかくだから私達も混ぜてもらいましょうよ。こちらもちょうどお茶をしようとしてたんだしさ」
「ふむ、わらわは構わないぞ」
「ワタシも大丈夫だよ!」
「僕も問題ありませんよ」
パトリシアの提案に、一緒にいた面々が頷く。
「むしろ都合が良いじゃないですか。これを機にパトリシアさんの魅力をアカデミーの生徒に伝えちゃいましょう!」
翔一の言葉にパトリシアが睨む。
「……あまりしつこくせまるのはやめなさいよ?」
「大丈夫ですって! そんな睨まないでくださいよ〜。ただでさえ、目つきが悪いんですから〜」
「目つきが悪くて悪かったわね……。とりあえず、みんな賛成ね。そちらはどうかしら? せっかくだからご一緒させてくれるとうれしいのだけれど……」
「えぇ、構わないわよ。せっかくだからアカデミーの生徒と交流するもの良いと思うわ」
「ありがと、それじゃご一緒させてもらいましょ」
パトリシア達は、途中で買ったスコーンなどを持ち寄って、席に着く。
「そういえば、グロリアーナ。あなたのパートナーはどうしたの?」
祥子が姿の見えないグロリアーナのパートナーであるローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)の所在を聞く。
「あぁ、ローザマリアは、ちょっと事情があってこちらには来れなくてな。今は隣国カナダの都市、トロントで待機中だ」
「あら、そうだったの。そういうことなら仕方ないわね。じゃあ、みんな自由にくつろいで頂戴」
「はーい。それじゃ、パトリシアさん、行ってきます!」
ビシッと敬礼して、翔一はアカデミー生徒のいるほうへと突撃していった。
「まったくもう……」
「まぁ、良いではないか。こちらはこちらで楽しもうではないか」
「……そうね。翔一の事はいつものことだから今更気にしたってしょうがないわ……」
「こんにちは! 僕は鳴海翔一。よろしく!」
「は、はぁ……。よろしく」
「ところでパトリシアさんのことだけど――」
嬉しそうにパトリシアの事を語る翔一を見てため息をつくパトリシア。
「さて、パトリシア。質問しても良いか?」
「えぇ。私と話がしたいって話だったわね」
「うむ、王立ヴィクトリアカレッジについてどんな場所なのか聞きたくてな」
「ウチの学校について?」
「イギリスにあるって話よね? どの辺りにあるのかしら?」
「エディンバラという場所ね。古い建物が多いけれど、素敵な土地よ」
「学校の雰囲気はどうだ?」
「そうね……。西洋のお城みたいな、かしらね。古い感じだけれど、装飾とかは綺麗だし、結構居心地は良いわ。生徒は真面目で静かな人ばかりだけど、話してみると結構気さくで、親しみやすいわ」
「へぇ、ちょっと見てみたいわね」
「うむ、そういえば、パトリシアは『ロード・オブ・グリモワール』と異名を持っているそうだが、それで次席と聞く」
「そうよね、沢山の魔導書を扱えるんでしょ? それでも次席って事は首席の人はどんな人なのかしら?」
「首席か……。私は、沢山の魔導書を扱えるけど、雷電と光輝、二つ属性に特化しているの。でも、首席は更に複数の属性を扱える、優秀な人よ」
「すごい人もいるものねぇ……」
「かつて、わらわの収めた国は、今もこうして逸材を生み出し続けているのだな。嬉しい事だ」
嬉しそうに頷くグロリアーナ。
「パトリシアさーん! あなたに興味がある人を連れてきました!」
そんなところに、翔一が数名のアカデミー生徒を連れて戻ってきた。
「全く……さてと、ちょっと相手してくるわね」
「うむ、また後ほど話を聞かせてほしい」
「また後でねー」
「えぇ」
二人に手を振って、生徒の元へ行くパトリシア。
「ふむふむ……」
パトリシアと別れた、レミカは今までの会話中のパトリシアの様子を自分なりにまとめメモしていた。
「何をしておるのだ?」
「話を聞いたからメモをね」
「そうか」
「良ければ、さっきの会話をまとめたメモを写してあげましょうか?」
「おぉ、それは助かる」
「任せておいて」
「(さてと、後はこれをナナシに伝えるだけね)」
ナナシと会話して、ある程度事情を聞いていたレミカ。パトリシアと会話したのは、純粋な好奇心とナナシの手伝いをするためだった。
「(後は、興味で聞いたことをまとめるだけね。中々面白そうな場所だったわね。ヴィクトリアカレッジ)」
せっせと、ペンを走らせるレミカだった。
「グロリアーナは大丈夫かしら……?」
共にはいないパートナーを遠い場所でお留守番しつつ心配する、ローザマリア。
「まぁ、行く前も楽しそうにしていたから大丈夫かな。せっかくなんだもの、楽しんできなさいよ……」
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