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『C』 ~Crisis of the Contractors~(前編)

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『C』 ~Crisis of the Contractors~(前編)

リアクション

「せつないるー?」
「あ、はい。どうぞ、入ってください」
「それじゃ、失礼しまーす」
「失礼する」
 自由行動となった、夕方。せつなの部屋にルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)
「こんにちは。何か御用ですか?」
「お話しにきたよ。あれ、ナナシは? 来てると思ったんだけど」
「それなら、そろそろ来ると思いますけど……」
「入るぞ」
 ノックもせずにナナシが入ってきた。
「失礼します」
「…………」
 その後ろに水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)の二人。
「こんにちは。中東の契約者養成学校『オマーン国際女子学園』から来ました。アヤ(志方 綾乃(しかた・あやの))と言います。よろしくです」
「そこで、会って話が聞きたいというから連れてきた。構わないな」
「うん。こちらの二人もそれで、尋ねてきたからちょうど良かった。皆さん、自由な場所に座っててください。お茶出しますので」
「あ、手伝うよ」
 ルカルカと二人でお茶を入れるせつな。全員に配っていく。
「それで、話というのは……ナナシのことですよね?」
「まぁ、純粋にお話したいというのもあるんだけど、ナナシの事情について詳しく聞きたいかな」
「こちらも似たようなものですね」
「私もです。なにやら人探しをしているようで。こちらも人探しをしていますのでよければお互いに協力出来ればと思いまして」
「そういうことか。まずは何が聞きたい?」
「まずは、お二人の出会いからでも……」
「あ、それはルカも聞きたいかも!」
 アヤの言葉に目をキラキラさせるルカ。
「何かを期待しているという目だな」
「こういう運命的な出会いにはトキメキを感じるものだよ」
「……すまんな。これでも真面目なんだ」
「あ、ひどい」
「まぁまぁ。とは言っても、特に大それた話ではないですよ」
「俺は、俺の時代で圧倒的な力を持ち、ニルヴァーナ大陸を支配している『C』と呼ばれる新人類の台頭を阻止するために、その祖を始末するためにやってきた。せつなの元に現れたのはその未来でせつなが関係しているからということだ」
「そうですか……。せつなさんも、今の話は嘘ではないですよね?」
「あ、はい。嘘ではないですよ」
 アヤは『嘘感知』で真実かどうかを確認していた。自分の探す、反パラミタ勢力の襲撃者かも知れないから。
「……本当のようですね。失礼しました」
 疑っていたことに頭を下げるアヤ。
「いえいえ」
「それで、他には何かあるか?」
「じゃあ、ルカから。『C』って何?」
「『C』とは、未来において、ひと括りにされている新人類。地球のある科学者が行った遺伝子操作によって、誕生した。その力は契約者を凌駕するほどだ。そして、純正の地球人であるため、契約者になることも可能」
「ということは、強化人間となった『C』とパートナーを組むことも可能と言う事ですね?」
 睡蓮の言葉に頷くナナシ。
「だから、手がつけられないほどの力を持っているというわけですか……」
「そういうことだ」
「じゃあ、『C』って何の略なのかな?」
「Crisis、Contractor、Criminalなど、人々が恐れるものに「C」で始まる単語が多かったから『C』と呼ばれるようになったと聞いている」
「ニルヴァーナ大陸を支配ということは、独立国家のようなものを作っているのですか?」
「やつらは『ニルヴァーナ新人類帝国』と呼ばれる国を作り、パワーバランスを整えるための調整と称し、地球、パラミタの二つの世界の人口を十分の一まで減らすことを始めた。二つの世界が手を組むが、追い詰められた」
「圧倒的な力の前にはなすすべもなかったということだな」
「その通り。だからこそ、俺は祖を始末するためにやってきた」
「なるほど。俺からも一つ。君は人間なのか?」
「うわぁ! なんて失礼な! ごめんねナナシ! 今の質問は無しで!」
 ダリルの質問に慌てて謝るルカルカ。
「もう、急に失礼なこと言わないの」
「……それは、すまないことをしたな」
「さてと、聞きたいことも聞けましたし、私達は失礼します」
「そうだね。良い時間だし、今日はこの辺でお開きにしようか」
「はい。ナナシさんも何かあれば言ってください。出来る範囲で協力します」
「助かる」
「それじゃ、せつなもまたね!」
「はい。また会いましょう」
「…………(一礼して睡蓮の後を追う)」
 全員でせつなの部屋を後にする。

「……こんなものか」
 全員と別れた後、ダリルは『銃型HC弐式』の録画ボタンを押し、録画を停止する。
「何を録っていたの?」
「ナナシだ。後はこれも回収してきた」
 ナナシのものらしき髪の毛を一本ルカルカに見せる。
「彼に関して情報を得るならこういうものが一番だろう。解析は帰還後になるが」
「……抜かりないねダリル」
「当然だ」

「研究により生まれた新人類……。なかなかに興味深い情報を得られましたね。九頭切丸」
「……(こくり)」
 睡蓮の言葉に頷く九頭切丸。
「まだまだ、面白そうな情報が得られるかもしれません。一応、今は協力の姿勢を見せておきましょう」