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わたげうさぎの島にて

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わたげうさぎの島にて

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【15・もふもふ】

「もう日も暮れかけてきて、ことも終わりにさしかかってるのに、これは一体どういうことなのだよ……」
 ゲオルゲの別荘からかなり離れた兎島のはずれ。
 そこで毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)は憤っていた。
 なぜならパートナーのプリムローズ・アレックス(ぷりむろーず・あれっくす)ライラック・ヴォルテール(らいらっく・う゛ぉるてーる)アルテミシア・ワームウッド(あるてみしあ・わーむうっど)が、わたげうさぎたちと戯れているからである。
 それだけなら問題はないように思えるが。
 実は大佐たちはブライド・オブ・ダーツを手に入れるため、この島を訪れたのだった。
 けれど。
 到着してすぐ、四人はわたげうさぎの巣であるらしい大木を発見し。
 そこに住まう何十匹ものわたげうさぎを目撃するなり、プリムローズとライラックの目の色が変わった。
「もふもふぅー!」
 プリムローズは、いきなりわたげうさぎたちの群れへとダイブし。
 うさぎたちも人懐っこくて離れないのをいいことに、とにかくもふもふしはじめ。
「ここはきっと楽園よ。そうに違いないわ」
 ライラックもわたげうさぎをなでなでし、愛ではじめていた。
「ふたりとも。遊んでないでいくのだよ」
 大佐の注意は右から左に受け流され、
(まあ、わたげうさぎを味方にしておけばなんか役に立つかもな)
 という思惑を持ったのもいけなかった。
「しょうがない、我はこの周囲を少し探索してくるかな……アルトはどうする?」
 アルトもわたげうさぎの一羽の毛をかるく撫でていたが、すぐに我に返り、
「あ、ええ。じゃあ私はこっちを探索してくるわ」

 ……というカンジで一旦散開した四人だったが。

 十分後、アルトが戻ってくると。
「特に何もなかったわねー……って、あんた等まだやってたの!?」
 ふたりは相変わらずわたげうさぎと戯れており。心なしか集まっている数も増えて見える。
「もふもふいいじゃないですかもふもふ。偶にはもふもふこうしてもふもふのんびりするのももふもふ。あー、もふもふ最近もふもふ戦いもふもふばっかりなのでもふもふ。この子達といるともふもふ癒されますねもふもふ」
 プリムローズは相変わらずとにかくもふもふで。
 ライラックは無言のまま丁寧かつ超高速でブラッシングをしており、よくみればその速度はなんと一匹10秒であった。恐るべきスピードに、アルトは頭を抱えたくなった。
 大佐も戻ってくるなり、現状に頭痛がしはじめた。
「処でもふもふブライド・オブ・ダーツもふもふなんて手に入れてもふもふどうするつもりなんですかもふもふ」
「……それは、プリムローズに使わせようと考えててだな」
「もふもふえっ、もふもふ私のもふもふ為にもふもふ探してるんですかもふもふ。それはもふもふ結構もふもふ嬉しいですねもふもふ」
 通常会話なら頬を染めるなりするところかもしれないが、今はなんかそういう気になれない大佐である。
「とりあえずプリムローズ、そのもふもふ言うのをやめろ。ゲシュタルト崩壊してきたから! ライラも何時までやってるのだ……。やれやれ、アルト、頼むからお前だけは正常で居てくれ、頼むから。って言ったそばからかよ!」
 アルトはふらふらとわたげうさぎに近づきはじめ、
「……。なんかもうどうでもよくなってきたわ。私にももふもふさせなさいよ」
 こうして。ミイラとりもミイラ化して。
 大佐自身ももうどうでもよくなってきて、わたげうさぎともふもふしはじめ。
 いつしか居眠りをしてしまった。
 それから先、もふもふもふもふ数時間ほど時間が経過し。
 大佐は目を覚まし。
 この章の最初のセリフに戻るというわけだった。
「もふもふ処でもふもふ吸血貴族のもふもふ館にもふもふ行かないんですかもふもふ。日がもふもふ暮れちゃいますよもふもふ」
「いや、プリムローズ……今更!? 今更それ言うのか!? きっともう色々終わってるから! 確かめなくてもわかるから!」
「……そういえば今夜の宿とかどうするのかしらもふもふ」
「アルト。このままだと一生ここで過ごすことになりかねないから一刻もはやく起き上がってくれ。そしてどうするか一緒に考えてくれ」
「ん? なにやら群れと離れた個体が居るようだが……?」
 ライラックの言葉で、たしかに一羽、また一羽とこの場を離れていくうさぎがいた。
 四人は知るよしもないが、あのうさぎたちはゲオルゲを心配して会いに向かっているのである。
「なにかあったのであろうか。よし、みんな。追いかけよう!」
「いってらっしゃいもふもふ」「もふもふふもっふもふもふ」「もふもふ」
「ああわかっていた! すこし緊張感を高めて言ってみればどうにかなるかと思ったけど、無駄だったみたいだ! そして途中気になる単語があったような気がするけどそれはスルーするのだよ!」
 こうして。
 大佐たち四人は、このあとももふもふしつづけ。
 今晩はわたげうさぎを飼っている民家に泊めてもらい、たっぷりもふもふしつづけるのであったもふ。

 このもふもふは他にも、藤井つばめや、豹村海豹仮面にも影響し。
 つばめは一羽、海豹仮面は三羽ほどつかまえて帰っていくことになったのであった。

 そしてわたげうさぎのもふもふは、このさきも人々を魅了し、堕落させ。
 世界はもふもふ一色に染まっていった……りは、しなかった。さすがに。