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リアクション
【13・なにごとにも全力で取り組む姿勢で】
「一体どこにあるんだろうな」
「ああ……飽きてきた」
ブライド・オブ・ダーツを探すトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は、パートナーの王城 綾瀬(おうじょう・あやせ)のトレジャーセンスを頼りに別荘のなかを探していたが。
どの部屋も大した手がかりも宝もなく。一度鍵のついた箱を見つけたものの、入っていたのは骨董品としてしか使えそうにない小型の拳銃くらいだった。
そのとき、必死にピッキングで鍵を外した成果としてハズレを引いて以降。綾瀬のイライラは頂点を超えようとしていた。
「ああもう! つまらない、飽きた……ああ、イライラしてきたッ! そもそもこんな宝探しなんてあたしの趣味じゃないッッ!!」
「そう苛立つなって。よし、次はこっちに行ってみようぜ! なんか使用人が使ってる部屋みたいだな…………いかにも、その……ダーツがありそうじゃないか?」
「自分で言ってて、無理があるように聞こえない?」
「聞こえるな、うん」
しかし綾瀬は限界を超えた。
「そうよ……面倒だから、別荘を根こそぎひっくり返せば探しやすいでしょ!」
一大決心するや、サイコキネシスをフル活用で近く部屋の扉をひしゃげさせ。壁をべこぼこと穴だらけにし、柱にヒビをいれ、窓ガラスを木っ端微塵にさせていく。
「ちょ、ちょっ、落ち着けって!」
「ええいっ、五月蠅い! あたしはぁ、戦い以外のことで身体を動かすのはぁぁぁ、大嫌いなのよぉぉぉ!!!」
トライブの静止も耳を通さず、暴れまくり、破壊しまくりの綾瀬。
歯止めがきかなくなり、このままじゃこの別荘が崩壊しかねないとトライブは、本気で心配し。そして――
「!? おい綾瀬、ふせろ!!」
「はぁ? いきなり、なに……」
突如、閃光と共に起こった横殴りの暴風がふたりをなぎ倒した。
トライブは念のため殺気看破を使っていたので、壁に隠れてかわすことができたが。綾瀬はそのまま吹き飛ばされて床を軽くバウンドして気絶した。
「い、一体。なにが……?」
粉塵のなかから現れた、その人物は。
割烹着を着た老婆だった。
この人が誰なのかトライブにはわからなかったが、手に持っている黄金のダーツの輝きだけは確かに目に入ってきて。あれこそがブライド・オブ・ダーツであり。さきほどの破壊もその力によるものだとわかった。
「お前さんたち。別荘をむちゃくちゃにして、一体どういうつもりかの?」
「いや……あんたも今、かなり壊したように思うんだが」
「ああん? なんか言ったかい?」
トライブは押し黙らされた。
捜し求めた目的のものは目の前にあるが、ここで、
『そのダーツを探すために破壊していました』
なんて正直に話せば間違いなくやられる。
しかし他に適当な言い訳をしても、どうにもならなそうなのは確実。
どうすれば……? と考えを巡らせるトライブの鼻が、ぴくりと焦げ臭いにおいをとらえた。
「あれ。どこか燃えてないか? まさか、火事?」
「あん? 確かにそうだの。お前たち、そこを動くんじゃないよ!」
老婆は言い置いて、陸上選手かというほどの脚力で走っていった。
「な、なんだったんだ、あの婆さん……」
あんなの相手ではどうあってもダーツの奪取は無理そうだと察したトライブは、綾瀬を抱えて早々に退散することにした。
さきほどの客間から逃げ出した花音たち三人は、いまだに別荘の通路をさまよっていた。
逃げる際に、あの場にいた敵味方どちらともはぐれてしまい。そのせいで入口がどっちだったかわからなくなってしまったのだった。
煙が流れてこなくなったので、火の手はおさまったようだが。
花音もリフルも、エメネアの体調が心配でならず。
「私はへいきですぅ。悪人さんがいないうちに、ダーツを見つけちゃいましょぉ」
エメネア本人は口ではそう言っているものの、まだ足元がふらついていた。
朔夜や司たちの治療と調合した薬のおかげで、なんとか動くことだけはできているようだが。完全に治ったわけではないらしい。
「あれ。そこにいるのは、花音たちじゃないですか」
そうこうしていると。紫月 唯斗(しづき・ゆいと)、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)、紫月 睡蓮(しづき・すいれん)、プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)たちと鉢合わせた。
「ん、おぬし。なにやら具合が悪そうであるな。どうかされたのか?」
「ああ、いえ。べつになんでもないんですぅ」
「そうですか。ならよかったです」
「……睡蓮、あなたは言葉をストレートに受け止めすぎです」
エメネアの不調は、ダウジングに集中している睡蓮以外は全員すぐに察したが。
それでもなお、エメネア自身は大丈夫といってきかない様子で。
「事情はよくわからないですけど、はやくダーツを見つけてあげたほうがよさそうですね。睡蓮、反応はありましたか?」
唯斗自身もトレジャーセンスを使っているが、ここには貴重な品が多いのか反応がたくさんあり。あまり成果はあがっていなかった。
一方の睡蓮のダウジング針はといえば、
「それが、さっきから動きがせわしないんです。なんだか、ダーツのほうが私たちに近づいてきてるのを知らせてるみたいで」
たしかに左右に細かく震動し、なにかを訴えているように見えなくもない。
「それはさすがにないであろう。ダーツに足がついてるわけでなし」
エクスはそう言うが。頑として訴えを変えない睡蓮に、一同はとりあえずその場ですこしの間だけ待ってみると。
誰かがものすごい勢いで走ってきた。
「こら、あんた達! そんな道の真ん中でくっちゃべっていたら邪魔だよ!」
花音たちも唯斗たちも色々驚かされた。
割烹着の老婆が、腕をふり足を高くあげながらやってきて。しかもその手に持っているものが黄金色のダーツであったのだから。
「お、お婆さん。それ!」
「あん? ああ、お前さんたちもコレを狙ってきたクチかの。すまんがいま忙しいのでの。火は止めたんじゃが、すっかり客間が汚れてしもうての。一刻もはやく掃除をせねばならんのじゃ」
「でも、あたしはそれを――ぇ!?」
そのまま行ってしまおうとする老婆に、花音は食い下がろうと肩をつかもうとして。
次の瞬間にはあおむけになって床に倒されていた。
リフルも、唯斗たちもなにが起きたのか咄嗟にわからなかった。老婆が振り返りざまに、投げ技のようなものを行なったような、そんな気はしたが。速くてとらえきれなかった。
「どうしてもというのなら、先にあるじ様を説得してくるんだの。今は別荘の入口あたりにおるから会ってくるとええ。あるじ様がいいと言えば、こいつはくれてやるでの」
老婆はそう言い捨てて、風のように走り去っていった。
「なんなんですか、あのとんでもないお婆さんは」
「わらわの見立てでは、かなりの使い手とみたのだよ」
「すごかったですねー。私、びっくりしちゃったです」
「それで? あなた達、どうするつもりなんです? 肝心のダーツは見つかりましたけど」
プラチナムに問いかけられ、しばし呆然としていた花音は立ち上がり。
「ひとまず、あるじ様とやらを先になんとかしましょう。どのみちエメネアの治療をしてもらわないといけないですしね」
ぐっと拳を握り締め。いざ足を踏み出そうとして、一言。
「……それはそうと、入口はどっちなのかわかりますか?」
唯斗は肝心なところで残念な花音に溜め息が出た。
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