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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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第五章 正しいアリの倒し方 1

 さて。
 地下二階の風景は、実は地下一階とほとんど変わりなかった。
 ただ、曲がりなりにも「商業施設」と呼ばれるだけに、先ほどのフロアと比べると、あの繭状の施設が若干多く、また平均するとやや大振りになったようにも見受けられる。
 当然、それは「何かが残っている可能性」を高めるものであったが、同時に探索する手間と、敵から奇襲を受ける可能性をも高める諸刃の剣であると言えた。

 ……が、少なくとも、奇襲に関する心配はあまり必要なかったかもしれない。
 なぜなら、地下一階の軟体狼どころではなく、軟体アリはそれこそフロア中にいたのだから。
「さすがに、これを全部殲滅する、というのは難しそうじゃな。となると適応対処しつつ、プリントシール機と下へのシャフト跡を探さねばならんか」
 ルファンの正確だが非情な現状分析に、一同は改めてそのハードルの高さを実感したが……ことここに至っては、やるより他にないのだ。

 そして実際、これだけの人数が固まって動くとなると、当然敵の注意を引くことになる。
 当然のように集まってきた軟体アリたちの前に立ちふさがったのは、ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)であった。
「ここは私が食い止めますから、皆さんは先に進んでください!」
 そう叫んで凛々しく槍を構えるロザリンドと、その隣で二本の剣を構えるテレサ、どちらも相応の腕の持ち主である。
「で、では、お言葉に甘えさせていただくっス!」
「すまない。無事でな!」
 良雄と司の言葉に、ロザリンドは軽く微笑んだ。
「もちろんです。地球で待っている人がいますから、こんなところで倒れるわけにはいきません」
 ……あの、妙なフラグを立てようとしないでいただけますか?

 ところで、蟻の攻撃と言えば、何を真っ先に思いつくだろうか?
 その強靭な顎による噛みつき、まあ普通はそうだろう。
 しかし、蟻の中には飛び道具を持つものもおり。
 悪いことに、軟体蟻たちがマネしたのは主にそちらの方であった。
「はっ!」
 気合い一閃、ロザリンドの槍がまた一匹の軟体アリを串刺しにする。
 四方八方からかかろうにも、背中はテレサが守っているため隙がない。
 向かって行けば行くだけ屍の山を増やす結果が続き、やがて、軟体アリたちの攻撃が止み始めた。
 ……と思った、その矢先。
 少し距離を置いたところに待機していたアリたちが、まるでサソリが尾を振り上げるかのように、一斉に尻を上げたのである。
「!?」
 もちろんロザリンドも敵の狙いに気づきはしたものの、囲まれているとあっては回避するのも容易ではない。
 やむなく、「一気に間合いを詰めて発射される前に薙ぎ払う」という手に出たものの、間一髪及ばず。
 アリたちを薙ぎ払った時には、その尾から放たれた毒液を浴びてしまっていた。
 不幸中の幸いだったのは、当たったのが全て鎧のある場所、ということだろうか。
「……っ!」
 少し考えた後、ロザリンドはアリを牽制しながら鎧の留め具を外し始めた。
 毒液がついたままの鎧を着たまま戦い続けるより、鎧を外して戦った方がいい、という判断である。
 どんな判断や、とツッコミを入れてくれる誰かがいればよかったのだが、あいにくこの場には彼女の他にはテレサしかいないし、テレサはこういう面白そうなことは止めてくれないし、ロザリンドが鎧を脱ぐ間の時間稼ぎで手一杯である。
 かくしてロザリンドは鎧を脱ぎ終わり、身軽になったおかげでこれまで以上の速さでアリたちを撃退していったのだが。
 当然、敵の増援は新しいタマを持ってきているわけである。確実に。
「二度も同じ手は!」
 もちろん彼女も手の内は知っているし、今度はスピードも上がっている。
 それでもやはり毒液を完全に回避することは難しく、直撃ではないにせよ、それなりの量を「服に」浴びてしまった。
 鎧ならともかく、服と言えば布であり、布は液体がしみ込む性質があるので、単純な危険度で言えば今回の方が当然危険である。
 しかし鎧の下には服があったが、服の下には、という問題になる。
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
 当然ロザリンドも悩んだが、やはり「こんなところで倒れるわけにはいかない」わけで。
 結局のところ、下着姿で戦闘続行となったのであった。
 とはいえ今度こそ本当にいろいろな意味で後がないが、まだ敵はそこそこ残っている。
 まさに絶体絶命(?)のピンチであるが――ピンチだからこそ、そこにはヒーローの駆けつける余地があるのである。