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マレーナさんと僕(2回目/全3回)

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マレーナさんと僕(2回目/全3回)

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17.何はともあれ、飲み会!
 
 夜露死苦そうでは、一日が終わった後の飲み会が定番なようだ。
 勉強の後の一杯は、どのようなものなのであろう?
 
 ■
 
 その発起人・ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)クラウン ファストナハト(くらうん・ふぁすとなはと)は、下宿生達を招いて真面目に勉強会を開いていたが、夜と共に飲み会へ移行した。
 もちろんオーナーの許可済みである。

「節度ある酒であれば、いいってよ!」
「でも、未成年は飲酒禁止じゃん?」

 それとなく注意事項を告げられて、飲み会は始まった。
 キヨシ、九十九、氷雨と言った、何となく参加したい連中から、菫のような新入りや顔見知りを作りたい者まで。
 様々なものが集まって、大宴会となった。
 オーナーの許可済みということもあり、マレーナも安心して参加する。
「まぁ、お招きくださって嬉しいわ。
 でも、私、診療室での看護が……」
「まぁ、まぁ、まぁ、マレーナ姐さん!」
 ナガンは調子よく、飲みやすい日本酒を勧める。
 ちなみに、マレーナはナガンから先日渡された「ロンTワンピ」を着ていた。
 感謝の印らしい。
「姐さんにも、ぜひ受験生達を祝って欲しいぜ」
「前祝いと行こうじゃん!」
 2人に勧められて、マレーナは困惑しながらも酒が進む。
 
 飲んだわけでもないのに、誰よりも騒いだのは、例によってゲブーだ。
「む、おっぱいを狙ってるだと、
 ふざけんな、地球の5000万おっぱいは、俺様のもんだっ!」
 おっぱい談議になったらしい。
 がははは――っ、と笑ってマレーナの手首を掴む。
「それと、お嬢様を呼んでこいや!
 おーっぱーいっ!
 ん? ちゃんとあるのが、こいつしかいねぇだと?
 ……まいっか、おっぱい管理人は俺様のもんじゃぁ!」
 言って、抱き寄せた瞬間に、どこからか唯斗ら用務員が4人召喚されて、ゲブーを風のように攫って行った。
「では、反省室行きですので、ごめん」
 そのまま消え去る。
 あっけにとられる一行の中で、マレーナだけがなぜかとても満足げに用務員達を見送るのであった。
 
 その傍ら、百々目鬼 迅(どどめき・じん)はひたすら台所で作ったおでんをふるまう。
「あれ、受験に失敗したのか?
 え? 模試。
 本番じゃねぇじゃねぇか?
 これでも食ったらどうだ?」
 キヨシ達に、おでんを持たせる。
「うん、まあまあだな!」
 だが、食は進む。
「しかしここは、よくよく考えると。
 食にだけは困らない下宿なのではなかろうか?」
 ふとキヨシは呟いた。
 とても食べられないような、とか前置きはつくだろうが。
 食べられるだけでもマシ! なこの荒野において、やはり夜露死苦荘は恵まれている。
 チョット明るくなった受験生達を眺めて、迅は陽気に言った。
「これさえ覚えときゃ大丈夫だぜ、皆さんよぉ!
 それは……『何とかの鼻はデカイ』って事ですわ」
「『何とか』って?」
「それは、ここでは秘密ですわ!」
 何だかもやもやする、と一同は思うのだが、最早落ち込むことはなかった。
 美味しい食事が、一番の気つけ薬になったらしい。
 
 ■

 ……やがて、全員が酔いつぶれた頃。
 ナガンはこっそりとヒプノシスを使って、安眠を促進させた。
 キヨシも眠っているが、彼は疲れ切って寝ているだけだ。
 ちなみにガードが案外固いようで、酒は一滴も飲まなかった。
「己を知っているってことかよ。
 意外と意思強いんじゃねぇの? キヨシ」
 やれやれと見下ろすナガンの傍で、クラウンはせっせとマレーナ以外の者共を部屋に運ぶ。
 
 マレーナは毛布に包まれ、部屋の隅に置かれた。
 用務員達の気配に、ナガンは肩をすくめてみせる。
「ナガンは何もしませんよ。
 ただし、一晩の噂はかぶるぜ
 それで姐さんが、『噂』を信じる野郎どもから護られるならな」
 
 ■
 
 そうして、結局マレーナさんと一晩は、ナガンが明かしたのであった。 マレーナがナガンの心遣いに、心から感謝したのは言うまでもない。