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マレーナさんと僕(2回目/全3回)

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マレーナさんと僕(2回目/全3回)

リアクション

18.エピローグ

 一夜明けて、下宿は「噂」で持ちきりになった。
 
 ――マレーナさんは、ナガンと一夜を明かしたってよぉ!

 管理人に心惹かれる者共は、こっそり涙したとか。
 キヨシももちろん、そんな学生達の一人であった。
「マレーナさん……」
 メガネに手をかけて、そっと呟く。
 
 ■
 
 その夜。
 
 窓の桟に肘をつき、キヨシはぼんやりと夜空を眺めていた。
 満天の星である。
(あの時も、確かこんなだったか……)
 溜め息をつきつつ、振り返ると、マレーナが立っていた。
 手に、邦彦がつくった、差し入れの夜食がある。
 
「輝かんばかりの星空ですね? キヨシさん」
 机に盆を置き、マレーナはキヨシの傍に腰かける。
「まるで、あの時のような」
 ああ、やっぱり覚えていたんだな。
 キヨシは嬉しいような、恥ずかしいような、奇妙な感覚を覚える。
 そう、キヨシがマレーナに助けられたのは、こんな夜のことだったのだ。
「パラミタに来たばかりで、カツアゲにあっていた僕を。
 マレーナさんが助けてくれました」
 ペコっとお辞儀。
「それ以来、僕はあなたのことが忘れられません。
 僕が王子様になるべき女の子に、助けられたことが……」
 本当は、自分が格好良くマレーナさんを助けたい。
 男なら、誰もが望んで思い描く幻。
 だが現実は残酷だ。契約者でもないキヨシにそんな能力はなかった。
「だから、せめて頭だけでもあなたのお役に立てたら、と。
 そんな風に考えて、空大行きを頑張っていたように思います」
 それは皐月に指摘されて、初めて気づいたこと。
 そう、空大受験に「兄」は関係なかったのだ。

「空大に入れるくらいの頭脳があれば……あなたの中から、ドージェさんの影を消し去ることが出来ますか?」
「私が、これから先の人生を共に歩む……パートナーになれるかどうか?
 そういうお話かしら?」
 キヨシは真っ赤になってうつむく。
 マレーナはそれを好ましいように思ったようだが、
「私、もう心に決めた方がおりましてよ」
 それは晴れやかな笑顔をキヨシに向けるのであった。
 だが、キヨシは諦めきれない。
「それは、『パートナーとして』という意味でしょうか?」
 彼はマレーナの顔も見ずに、きっぱりと告げた。
「ここは空大進学専門の下宿です!
 空大に受かったら! 僕も候補に入れますか?」
「キヨシさん……」

 だがマレーナはキヨシを眺めたまま、首を縦にも横にも振ることはなかった。
 
 ■
 
 その時。
 
 シャンバラ荒野の一角では、天地を揺るがすような異変が起きていた。
 空を埋め尽くさんばかりの、未曾有のドラゴン達。
 その一群が、いま。
 夜露死苦荘を襲わんと、飛び発って行ったのであった。
 
 完了

担当マスターより

▼担当マスター

大里 佳呆

▼マスターコメント

 公開が遅くなり、大変申し訳ございません。
 マレ僕・2回目をお届致します。
 
 美しき未亡人の下宿での1日はいかがでしたでしょうか?

 それでは、またのお越しをお待ち申し上げております。
 今回もご協力頂きました栗田様と運営様に、深く感謝を致しつつ。
 
 ※次回で最終回になります。
 ※3月31日:修正させて頂きました。